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1章
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しおりを挟む陛下は、淡々とした口調でご自身の生い立ちについてお話しになった。
陛下が産まれる前から、ご両親はどちらが産まれても、男として育てる覚悟を決めていらしたそうだ。
産まれたのは、女の子の赤ん坊だった。
お産は厳重態勢の中行われ、その真実は厳重に伏せられた。
国中に王子誕生のふれを出し、王太子誕生を高らかに宣言したのだ。
その数ヶ月後、本物の男児が公妃の腹から産まれ、そしてその2年後、王妃が今度こそ本物の男児、ジェイドを産み落とした。
陛下は、幼い頃からジェイドと共に男として教育を受けた。
弟との身体の違いについては早くから疑問をもっていたけれど、それについては触れてはならないと、きつく言われていた。
「貴方は男なのだと、母上が言い聞かせる時の顔は、今思い出しても辛い。」
私にとっては、お優しくて朗らかな王太后陛下、影で随分辛い思いをされていたのだろう。
何度もご自分を責められたに違いない。
「私の性が偽られた物だと知った時、私は図らずもホッとした。今まで不思議に思っていたことが全てクリアになったからね。そして、自分の置かれている立場を理解した。私という存在は生まれた時からただ国のためにあるべきなんだと」
そんな顔をしないで、と彼女は笑う。
「そんなわたしには、アルマといる時間は本当に楽しかったんだよ。純粋で、可愛らしくて、私の理想の女の子。君を見ているとどこか満たされた。だから、穏健派から妻を娶る事を考えた時すぐに君の顔が浮かんだ。君は賢い、そして何より私達兄弟にとって愛しい存在だから」
そう言って、陛下は私の両手を掬い取ると、胸の辺りまで持ち上げて、真剣な面持ちで私を見つめた。
「無理強いはするつもりはない。でもできる事なら、君に私達の子どもを産んでほしい」
「私達のこども?」
私の頭は混乱する。
だって、陛下は女性で私も女の身だ
2人の間に子供なんて、、、
そこまで考えて私の頭は一旦停止した。
そして、急速に先ほどまでの陛下とのやり取りを頭の中で巻き戻す。
『君は賢い、そして何より私達兄弟にとって愛しい存在だから』
私達、兄弟!?
つまり、、それは
言葉にならなくて、パクパクと口を開けていると、陛下はまたも感心するように目を丸めた。
「本当にアルマは賢いね。もう分かったの?」
この時ほど、私は自分の察しの良さを呪ったことはない。
つまり、つまりは、そう言う事、、、
呼吸の仕方を忘れ、パクパクしている私を他所に、陛下は立ち上がる。
そして、バスルームの少し手前まで歩いて行き、化粧台の後ろ辺りの床の(四角い枠?あんな物あったのね)を踏み鳴らす。
パカリ、、、と
その床が、下に吸い込まれた!?
「ごめん、またせた」
「いや、大丈夫だ。むしろ随分早いな?」
ポッカリ穴が開いたようになったその場所から、黒い頭が見える
え、ちょっとまって
聞いてない!
そんなところが隠し扉で繋がっているなんて聞いてない!!
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