影とされた者

ドロイド

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第一章

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 10号車の客車に乗ると、ジェットは消えていた。というよりしれっとXXXの背後にいた。
「わっ!」
ジェットは驚かそうと、XXXの背後で両手を背中を押す。そしてリアクションを楽しもうとワクワクとした顔でXXXの顔を見た。XXXはもうジェットが入ってたことを知っていたので、さほどびっくりもしなかった。そのためか無反応に終わり、表情は微動だにせずパチパチと瞬きをする始末。そのおかげで車両の中で常に振動と音がしてるはずなのにシーンとした静けさがあった。
「なんだよ...驚かないのかよぉ。」
「まぁ先に入ってて知ってるからなぁ。」
ジェットは舌打ちをして、ふてくした顔をした。
 そんなXXXは不思議に思った。それはまだ汽車に入ったばかりだと言うのに、背後に入る空間がなかったのにどうして後ろに入れたのかと...もし入れたとしてもなぜその存在が後ろにいたことに全く気がつかなかったのかと、視野に一瞬でも入れなかったのも不思議になっていたが、そんなものはささやかなものだった。それは...
 この車両に一切誰もいないことだ。使い古された証拠は、ドアノブ、椅子の手すりなどを見れば使われたことは明確。しかし、誰もいない。たまたま乗っていないではないかと驚きはしなかった。のに、これは不思議に思うのも何か不思議だった。だが、さっきから異様な光景を目の当たりにしているあたり不思議だと思い過ぎているかと、過敏になりすぎているだと思いその疑問はXXXではそれもささやかな問題だと思った。

「とりあえず座る?」
そう提案したのはジェットだった。その提案にXXXは反対する理由はない。
「そうだね。座ろうか。」 
車両に入った2人は入った扉の一番近くの椅子に腰を下ろした。
「そう言えばさっきの質問の続きだけど、本当に一体何者?汽車を呼び出したように見えたけど、あれはなんなんだ?」
その質問に対してジェットは深く息を吐き、ガスマスク越しに口を開く。
「そうだねぇ。何を話せばいいか…全ては言えない…けど聞く気はある?」
はっきり言って得体の知れないものという認識だったXXXは今口にある唾を飲み、前のめりになる。
「うん。」
その二文字の返事と首を上下に振ったことが今後大きく関わることになるとは今は誰も知らない
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