11 / 119
1日目
報復
しおりを挟む
その時、後ろの方から声が聞こえてきた。走ってくる人の声。なんと男は猟銃を持っていた。これには桃也も驚く。
「――蓮見!!猿だ!!猿が出た!!」
「大きさは!?」
「1m位の白色!!多分『山駆け』だ!!」
「よし来た!!ちょうどいいから桃也も来い!!」
「え、ちょ、ちょっと――」
腕を引かれて走り出す。握力が見た目以上に強い。長らく走ってなかったからか、走り始めて数秒で心臓が大きく鳴り始めた。
一旦、疑問符を心にしまう。とりあえず目の前のことに集中しなくては。身体中の悲鳴を無視しながら、手を引かれるがまま走り続けた。
夕凪山。その昔、風の強い日に八月村の人が山を見た時、森の木々は海の凪のように静まり返っていた。時間帯は夕方。美しい夕日が山の頂上から顔を出していたらしい。
この八月村に住む猟師はいつもここで狩りをしている。豊かな自然に様々な動物。狩場としては絶好だ。
猟師の子供はここで狩りの練習をする。物心ついてすぐに山へと狩り風景を見せられるので、この村で育った猟師は、山の中を目を瞑って移動することだってできるのだ。
桃也はそんな場所へと向かおうとしていた。二酸化炭素で充満された肺に酸素を送り込んでいく。流れる汗が目に入っても気にしない。とにかく呼吸をしたかった。
「……アンタが新入りか?都会の軟弱な環境で体が弱っちまってるなぁ」
「役に立たなかったら、お前を狩ってやるぞ」
ゴツイ猟師さんたちに指を刺される。罵倒だろうか。それとも励ましているのか。どちらにせよ桃也の頭には入ってきていない。
「そう虐めるな。さっきも言ったが、この村ではみんなでひとつを大切にしているんだ。これは分かるな?」
爽やかな汗をかいている蓮見が聞いてきた。
「はい……」
「さっき言ってた『山駆け』はこの村の作物を荒らす悪い猿でな。最近は人間まで襲いはじめていたんだ」
猟師の雰囲気が変わった。オーラが赤色になったとでも言おうか。肌がピリピリと痛む感じがする。
周りは全員が猟銃を持っている。暇で手伝いに来ていた農民もクワや鎌などの、おおよそ武器になりそうな物を担いでいた。
周りが全員武器を持っている。それだけでも怖いのに、桃也を除く全ての人間が、どこか怒りに満ちた表情をしていた。下手なホラー映画よりも怖い状況である。
「たかが猿。されど猿。この村に仇をなすのならば、猿といえども許さない――」
「――武器は持ったなお前らァァァァ!!!」
山全体が揺れるような大声だった。思わず耳を塞いだが、既に遅い。爆発のような声をモロに聞いてしまった。
他の住人は声に怯むことなく武器を上に掲げている。自分を鼓舞しているようにも見えた。
「な、なんだ……?」
困惑する桃也。だがそんな桃也を他所に、話はどんどんと続いていく。
「たかが猿ごときに遅れを取るのか!?我らの力を合わせれば、悪魔だって殺すことができる!!」
「「「そうだ」」」
「――山の支配者がお前じゃないってことを伝えてやるぞ!!」
「「「おう!!」」」
「桃也さん……だっけ?」
後ろから話しかけられた。見たことの無い人。猟銃を持っているので、猟師ということは分かった。
髪は茶髪のオールバック。紫色のジャケットと藍色の動きやすそうなズボン。マタギと言うよりかは、現代の猟師に近い格好だ。
「は、はい。羽衣桃也です」
「俺は坂野猟虎。この村で1番腕の立つ猟師だ」
ライフルを肩で抱え、胸を張る。
「いきなり驚いたろ?農作物や村人に危害を及ぼした動物は、村人の男性全員で殺しに行くんだ。今のは気合い注入ってところかな?」
「いやぁ凄かったです。気迫にやられました。実際に俺が殺されるわけじゃないのに、死ぬかと思って冷や汗をかいちゃった……」
「命のやり取りをするんだ。それくらいじゃないと死んじまう」
三枚目のような男だと思ったが、予想以上の真面目。言われてみれば確かに命のやり取りをするのだ。
これくらいの気迫がないと相手にも失礼になる。ずっと町で暮らしてきた桃也はハッとした。
「……そういやお前、武器を持ってないのか」
「いきなり連れてこられたので」
「ついさっきに場所が特定されたからな。だけど武器がないのはマズイな――ほい」
背中から取り出したライフルを桃也に投げ渡した。慌てて受け取る。銃の重みが両腕にのしかかる。
「素人のお前じゃマトモに撃てないだろうが、ないよりはマシだろ?」
「マシって……猟師免許とか持ってないんですけど」
「猟師免許?なにそれ?」
なんか色々と適当だ。しかし武器無しで狩りをするのは自殺行為と同じ。ありがたいものではある。
「それと。お前はこの山のこと知らないよな?」
「えぇまぁ」
「目印を出すとはいえ、1人だと遭難する可能性がある」
「そりゃそうですよね」
「だから1人。俺の妹を貸してやる」
「――蓮見!!猿だ!!猿が出た!!」
「大きさは!?」
「1m位の白色!!多分『山駆け』だ!!」
「よし来た!!ちょうどいいから桃也も来い!!」
「え、ちょ、ちょっと――」
腕を引かれて走り出す。握力が見た目以上に強い。長らく走ってなかったからか、走り始めて数秒で心臓が大きく鳴り始めた。
一旦、疑問符を心にしまう。とりあえず目の前のことに集中しなくては。身体中の悲鳴を無視しながら、手を引かれるがまま走り続けた。
夕凪山。その昔、風の強い日に八月村の人が山を見た時、森の木々は海の凪のように静まり返っていた。時間帯は夕方。美しい夕日が山の頂上から顔を出していたらしい。
この八月村に住む猟師はいつもここで狩りをしている。豊かな自然に様々な動物。狩場としては絶好だ。
猟師の子供はここで狩りの練習をする。物心ついてすぐに山へと狩り風景を見せられるので、この村で育った猟師は、山の中を目を瞑って移動することだってできるのだ。
桃也はそんな場所へと向かおうとしていた。二酸化炭素で充満された肺に酸素を送り込んでいく。流れる汗が目に入っても気にしない。とにかく呼吸をしたかった。
「……アンタが新入りか?都会の軟弱な環境で体が弱っちまってるなぁ」
「役に立たなかったら、お前を狩ってやるぞ」
ゴツイ猟師さんたちに指を刺される。罵倒だろうか。それとも励ましているのか。どちらにせよ桃也の頭には入ってきていない。
「そう虐めるな。さっきも言ったが、この村ではみんなでひとつを大切にしているんだ。これは分かるな?」
爽やかな汗をかいている蓮見が聞いてきた。
「はい……」
「さっき言ってた『山駆け』はこの村の作物を荒らす悪い猿でな。最近は人間まで襲いはじめていたんだ」
猟師の雰囲気が変わった。オーラが赤色になったとでも言おうか。肌がピリピリと痛む感じがする。
周りは全員が猟銃を持っている。暇で手伝いに来ていた農民もクワや鎌などの、おおよそ武器になりそうな物を担いでいた。
周りが全員武器を持っている。それだけでも怖いのに、桃也を除く全ての人間が、どこか怒りに満ちた表情をしていた。下手なホラー映画よりも怖い状況である。
「たかが猿。されど猿。この村に仇をなすのならば、猿といえども許さない――」
「――武器は持ったなお前らァァァァ!!!」
山全体が揺れるような大声だった。思わず耳を塞いだが、既に遅い。爆発のような声をモロに聞いてしまった。
他の住人は声に怯むことなく武器を上に掲げている。自分を鼓舞しているようにも見えた。
「な、なんだ……?」
困惑する桃也。だがそんな桃也を他所に、話はどんどんと続いていく。
「たかが猿ごときに遅れを取るのか!?我らの力を合わせれば、悪魔だって殺すことができる!!」
「「「そうだ」」」
「――山の支配者がお前じゃないってことを伝えてやるぞ!!」
「「「おう!!」」」
「桃也さん……だっけ?」
後ろから話しかけられた。見たことの無い人。猟銃を持っているので、猟師ということは分かった。
髪は茶髪のオールバック。紫色のジャケットと藍色の動きやすそうなズボン。マタギと言うよりかは、現代の猟師に近い格好だ。
「は、はい。羽衣桃也です」
「俺は坂野猟虎。この村で1番腕の立つ猟師だ」
ライフルを肩で抱え、胸を張る。
「いきなり驚いたろ?農作物や村人に危害を及ぼした動物は、村人の男性全員で殺しに行くんだ。今のは気合い注入ってところかな?」
「いやぁ凄かったです。気迫にやられました。実際に俺が殺されるわけじゃないのに、死ぬかと思って冷や汗をかいちゃった……」
「命のやり取りをするんだ。それくらいじゃないと死んじまう」
三枚目のような男だと思ったが、予想以上の真面目。言われてみれば確かに命のやり取りをするのだ。
これくらいの気迫がないと相手にも失礼になる。ずっと町で暮らしてきた桃也はハッとした。
「……そういやお前、武器を持ってないのか」
「いきなり連れてこられたので」
「ついさっきに場所が特定されたからな。だけど武器がないのはマズイな――ほい」
背中から取り出したライフルを桃也に投げ渡した。慌てて受け取る。銃の重みが両腕にのしかかる。
「素人のお前じゃマトモに撃てないだろうが、ないよりはマシだろ?」
「マシって……猟師免許とか持ってないんですけど」
「猟師免許?なにそれ?」
なんか色々と適当だ。しかし武器無しで狩りをするのは自殺行為と同じ。ありがたいものではある。
「それと。お前はこの山のこと知らないよな?」
「えぇまぁ」
「目印を出すとはいえ、1人だと遭難する可能性がある」
「そりゃそうですよね」
「だから1人。俺の妹を貸してやる」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
M性に目覚めた若かりしころの思い出 その2
kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、終活的に少しづつ綴らせていただいてます。
荒れていた地域での、高校時代の体験になります。このような、古き良き(?)時代があったことを、理解いただけましたらうれしいです。
一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
M性に目覚めた若かりしころの思い出
kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、それをはじめて自覚した中学時代の体験になります。歳を重ねた者の、人生の回顧録のひとつとして、読んでいただけましたら幸いです。
一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる