レッドリアリティ

アタラクシア

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1日目

報復

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その時、後ろの方から声が聞こえてきた。走ってくる人の声。なんと男は猟銃を持っていた。これには桃也も驚く。

「――蓮見!!猿だ!!猿が出た!!」
「大きさは!?」
「1m位の白色!!多分『山駆け』だ!!」
「よし来た!!ちょうどいいから桃也も来い!!」
「え、ちょ、ちょっと――」

腕を引かれて走り出す。握力が見た目以上に強い。長らく走ってなかったからか、走り始めて数秒で心臓が大きく鳴り始めた。

一旦、疑問符を心にしまう。とりあえず目の前のことに集中しなくては。身体中の悲鳴を無視しながら、手を引かれるがまま走り続けた。





夕凪山ゆうなぎやま。その昔、風の強い日に八月村の人が山を見た時、森の木々は海ののように静まり返っていた。時間帯は夕方。美しい夕日が山の頂上から顔を出していたらしい。

この八月村に住む猟師はいつもここで狩りをしている。豊かな自然に様々な動物。狩場としては絶好だ。

猟師の子供はここで狩りの練習をする。物心ついてすぐに山へと狩り風景を見せられるので、この村で育った猟師は、山の中を目を瞑って移動することだってできるのだ。



桃也はそんな場所へと向かおうとしていた。二酸化炭素で充満された肺に酸素を送り込んでいく。流れる汗が目に入っても気にしない。とにかく呼吸をしたかった。

「……アンタが新入りか?都会の軟弱な環境で体が弱っちまってるなぁ」
「役に立たなかったら、お前を狩ってやるぞ」

ゴツイ猟師さんたちに指を刺される。罵倒だろうか。それとも励ましているのか。どちらにせよ桃也の頭には入ってきていない。


「そう虐めるな。さっきも言ったが、この村ではを大切にしているんだ。これは分かるな?」

爽やかな汗をかいている蓮見が聞いてきた。

「はい……」
「さっき言ってた『山駆け』はこの村の作物を荒らす悪い猿でな。最近は人間まで襲いはじめていたんだ」

猟師の雰囲気が変わった。オーラが赤色になったとでも言おうか。肌がピリピリと痛む感じがする。

周りは全員が猟銃を持っている。暇で手伝いに来ていた農民もクワや鎌などの、おおよそ武器になりそうな物を担いでいた。

周りが全員武器を持っている。それだけでも怖いのに、桃也を除く全ての人間が、どこか怒りに満ちた表情をしていた。下手なホラー映画よりも怖い状況である。

「たかが猿。されど猿。この村に仇をなすのならば、猿といえども許さない――」





「――武器は持ったなお前らァァァァ!!!」

山全体が揺れるような大声だった。思わず耳を塞いだが、既に遅い。爆発のような声をモロに聞いてしまった。

他の住人は声に怯むことなく武器を上に掲げている。自分を鼓舞しているようにも見えた。

「な、なんだ……?」

困惑する桃也。だがそんな桃也を他所に、話はどんどんと続いていく。

「たかが猿ごときに遅れを取るのか!?我らの力を合わせれば、悪魔だって殺すことができる!!」
「「「そうだ」」」
「――山の支配者がお前じゃないってことを伝えてやるぞ!!」
「「「おう!!」」」





「桃也さん……だっけ?」

後ろから話しかけられた。見たことの無い人。猟銃を持っているので、猟師ということは分かった。

髪は茶髪のオールバック。紫色のジャケットと藍色の動きやすそうなズボン。マタギと言うよりかは、現代の猟師に近い格好だ。

「は、はい。羽衣桃也です」
「俺は坂野猟虎さかのりょうこ。この村で1番腕の立つ猟師だ」

ライフルを肩で抱え、胸を張る。

「いきなり驚いたろ?農作物や村人に危害を及ぼした動物は、村人の男性全員で殺しに行くんだ。今のは気合い注入ってところかな?」
「いやぁ凄かったです。気迫にやられました。実際に俺が殺されるわけじゃないのに、死ぬかと思って冷や汗をかいちゃった……」
「命のやり取りをするんだ。それくらいじゃないと死んじまう」

三枚目のような男だと思ったが、予想以上の真面目。言われてみれば確かに命のやり取りをするのだ。

これくらいの気迫がないと相手にも失礼になる。ずっと町で暮らしてきた桃也はハッとした。


「……そういやお前、武器を持ってないのか」
「いきなり連れてこられたので」
「ついさっきに場所が特定されたからな。だけど武器がないのはマズイな――ほい」

背中から取り出したライフルを桃也に投げ渡した。慌てて受け取る。銃の重みが両腕にのしかかる。

「素人のお前じゃマトモに撃てないだろうが、ないよりはマシだろ?」
「マシって……猟師免許とか持ってないんですけど」
「猟師免許?なにそれ?」

なんか色々と適当だ。しかし武器無しで狩りをするのは自殺行為と同じ。ありがたいものではある。

「それと。お前はこの山のこと知らないよな?」
「えぇまぁ」
「目印を出すとはいえ、1人だと遭難する可能性がある」
「そりゃそうですよね」
「だから1。俺の妹を貸してやる」
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