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2日目
平和
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「出来損ない」
「その絵……気持ち悪い」
「なんでみんなに合わせられないの?」
「他の子はもっと上手くできるのに」
「頭悪い。気持ち悪い。お前にいい所はあるのか?」
「その目を向けるな」
「どんな思考をしてるんだ?」
「何を考えてるんだ?」
「恨んでやる……!!」
「怨んでやる……!!」
「殺してやる……!!」
「そうやって生きていくがいいさ」
「お前はそんな生き方しかできない」
「臆病者が」
「異常者が」
「狂ってる」
「狂ってるよアンタ」
「そんなんだから見放されるんだ」
「そんなんだから相手にされないんだ」
「お前は生きていることが罪だ」
「ナイトウォーカー。素敵な名前。あなたが私も愛してなくてもいい。誰もあなたのことを愛してなくても……私だけは――」
――視界が晴れる。
嫌な夢。実に不快な夢であった。だが日常的なこととなれば、いずれは慣れてくる。
気持ちのいい日光を体で浴びる。縁側から刺してくる光は都会とはまた違った暖かさだ。桃也はこっちの光の方が好きらしい。
隣ではまだ2人が眠っていた。安心しきっている安らかな笑顔。起こすわけにはいかない。
桃也はゆっくりと立ち上がる。光を額に反射させながら、思い切り背伸びした。今までの座った仕事から解放され、大自然を感じながら起床する……。
かなりいい。すごくいい。今は空気も星5レストランのスープくらいに美味しい。呼吸までもが楽しくなってくる。
「さて。今日も……いや、今日から忙しくなるぞ」
――桃也の真の目的。それは『乙音に関する情報の入手』である。ほとんど勘だが、昨日の出来事で確信に変わった。
この村にはなにかがある。それも乙音に関するなにかが。今まで欲しかったもの。手を伸ばしても届かなかったものが近くにある。
皮のマスクなんかじゃない。本物の乙音に会える気がする。桃也は胸を踊らせた。
「生きてろよ……」
拳を握りしめる。その拳には決意が宿っていた。覚悟が宿っていた。
この村は異常だ。それは分かっている。だがそれだけの理由で桃也は止まることができない。興味とはそういうものだ。
「乙音には永遠に生きてもらわないと困るからね……」
目覚ましのために外に出る。空には朝日が半分ほど顔を出していた。まだまだ眠っている人多い時間帯だろう。
だがこの村の大半は老人だ。基本的に老人は早起きである。なので既にこの村は昼間と変わらない人の数が見えた。
「おはよう羽衣さん」
「あ、おはようございます」
ちょうど前を通りかかった老人に挨拶をされる。昨日来たばかりなのに名前を覚えられていた。
嬉しいことだ。だけどなんだか怖い。警戒はしておくべきだろう。
「――おはよう」
ふっと隣から――氷華の声が聞こえてきた。水色のパーカーに真っ黒のショートパンツ。動きやすそうな格好だ。
「おはよう……どした?」
「猟師になるんでしょ」
間髪入れずに聞かれる。昨日に猟師を進められはしたが、するとは言っていない。そもそも猟師の話は美結と時斜にしか言っていない。誰から聞いたのか。まぁだいたい予想がつく。
「時斜さんから聞いたのか?」
「うん。『猟師になりたいらしいわよ』って言ってた」
「まてまて。俺は猟師になりたいとは――」
背中に視線が突き刺さる。後ろを振り向いてみると――そこにはクワを持ったおじいさんが立っていた。桃也を血走った目でギロリと睨み、今にも襲ってきそうな雰囲気を漂わせている。
1人じゃない。突き刺さってくる視線はあらゆる場所からだった。
もはやこの村全体……この村そのものから睨みつけられているような感覚が桃也を襲った。
「――猟師に……ならない?」
自分よりも一回りも二回りも小さい女の子。そんな女の子の圧に桃也は狼狽えてしまった。
怖い。明らかに敵意か悪意――もしくは殺意を向けられている感覚だ。何度か桃也も感じ取ったことがあるから分かる。
断ったら何をされるか分からない。睨みつけるような視線に桃也は思わず答えてしまった。
「――わ、わかった。なるよ……猟師になる」
――視線は消えた。後ろのおじいさんもニッコリとした笑顔になって歩いていく。
なんだったのか。さっきまでのは夢だったのだろうか。しかし刺さった視線とその殺意は確かに心の中に残っている。
「じゃあ着いてきて」
氷華が歩き出す。引っ張られるようにして桃也は歩き始めた。
「その絵……気持ち悪い」
「なんでみんなに合わせられないの?」
「他の子はもっと上手くできるのに」
「頭悪い。気持ち悪い。お前にいい所はあるのか?」
「その目を向けるな」
「どんな思考をしてるんだ?」
「何を考えてるんだ?」
「恨んでやる……!!」
「怨んでやる……!!」
「殺してやる……!!」
「そうやって生きていくがいいさ」
「お前はそんな生き方しかできない」
「臆病者が」
「異常者が」
「狂ってる」
「狂ってるよアンタ」
「そんなんだから見放されるんだ」
「そんなんだから相手にされないんだ」
「お前は生きていることが罪だ」
「ナイトウォーカー。素敵な名前。あなたが私も愛してなくてもいい。誰もあなたのことを愛してなくても……私だけは――」
――視界が晴れる。
嫌な夢。実に不快な夢であった。だが日常的なこととなれば、いずれは慣れてくる。
気持ちのいい日光を体で浴びる。縁側から刺してくる光は都会とはまた違った暖かさだ。桃也はこっちの光の方が好きらしい。
隣ではまだ2人が眠っていた。安心しきっている安らかな笑顔。起こすわけにはいかない。
桃也はゆっくりと立ち上がる。光を額に反射させながら、思い切り背伸びした。今までの座った仕事から解放され、大自然を感じながら起床する……。
かなりいい。すごくいい。今は空気も星5レストランのスープくらいに美味しい。呼吸までもが楽しくなってくる。
「さて。今日も……いや、今日から忙しくなるぞ」
――桃也の真の目的。それは『乙音に関する情報の入手』である。ほとんど勘だが、昨日の出来事で確信に変わった。
この村にはなにかがある。それも乙音に関するなにかが。今まで欲しかったもの。手を伸ばしても届かなかったものが近くにある。
皮のマスクなんかじゃない。本物の乙音に会える気がする。桃也は胸を踊らせた。
「生きてろよ……」
拳を握りしめる。その拳には決意が宿っていた。覚悟が宿っていた。
この村は異常だ。それは分かっている。だがそれだけの理由で桃也は止まることができない。興味とはそういうものだ。
「乙音には永遠に生きてもらわないと困るからね……」
目覚ましのために外に出る。空には朝日が半分ほど顔を出していた。まだまだ眠っている人多い時間帯だろう。
だがこの村の大半は老人だ。基本的に老人は早起きである。なので既にこの村は昼間と変わらない人の数が見えた。
「おはよう羽衣さん」
「あ、おはようございます」
ちょうど前を通りかかった老人に挨拶をされる。昨日来たばかりなのに名前を覚えられていた。
嬉しいことだ。だけどなんだか怖い。警戒はしておくべきだろう。
「――おはよう」
ふっと隣から――氷華の声が聞こえてきた。水色のパーカーに真っ黒のショートパンツ。動きやすそうな格好だ。
「おはよう……どした?」
「猟師になるんでしょ」
間髪入れずに聞かれる。昨日に猟師を進められはしたが、するとは言っていない。そもそも猟師の話は美結と時斜にしか言っていない。誰から聞いたのか。まぁだいたい予想がつく。
「時斜さんから聞いたのか?」
「うん。『猟師になりたいらしいわよ』って言ってた」
「まてまて。俺は猟師になりたいとは――」
背中に視線が突き刺さる。後ろを振り向いてみると――そこにはクワを持ったおじいさんが立っていた。桃也を血走った目でギロリと睨み、今にも襲ってきそうな雰囲気を漂わせている。
1人じゃない。突き刺さってくる視線はあらゆる場所からだった。
もはやこの村全体……この村そのものから睨みつけられているような感覚が桃也を襲った。
「――猟師に……ならない?」
自分よりも一回りも二回りも小さい女の子。そんな女の子の圧に桃也は狼狽えてしまった。
怖い。明らかに敵意か悪意――もしくは殺意を向けられている感覚だ。何度か桃也も感じ取ったことがあるから分かる。
断ったら何をされるか分からない。睨みつけるような視線に桃也は思わず答えてしまった。
「――わ、わかった。なるよ……猟師になる」
――視線は消えた。後ろのおじいさんもニッコリとした笑顔になって歩いていく。
なんだったのか。さっきまでのは夢だったのだろうか。しかし刺さった視線とその殺意は確かに心の中に残っている。
「じゃあ着いてきて」
氷華が歩き出す。引っ張られるようにして桃也は歩き始めた。
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