77 / 117
3章「美しき水の世界」
77話「食事時!」
しおりを挟む
2人は外へ。ヘキオンがさっきまで行こうとしていた店へと行くことにした。
ロードの後ろに隠れるようにして歩く。
「もっと前に出て歩けばいいのに」
「だって恥ずかしいし……スカートとか履くの久しぶりなんだよ……」
「見られても恥ずかしくないためのドレスでしょ。汚いよりかはいいじゃない」
「……うん」
ロードの腕をキュッと抱きしめる。言われてもやっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいよう。鬱陶しそうな顔になる。でも特に振りほどいたりはしていない。
「行こうとしていたお店ってどこ?」
指を指す。さっき来たあの店だ。お昼時だが特に混んではいない。ガラス越しから見える限りはまだ空いている。
「へぇ~。良い目してるね。あそこのイカ墨パスタがとっても美味しいんだよ」
「そうなの?……でも今は貝類の気分」
「じゃあイカ墨パスタと貝類のやつの二つ食べよ!」
「私そんなに食べられないよ~」
こう見るもカップルみたいだ。片方が男だったならカエデが黙っていないだろう。この映像を見せて反応を見てみたいものだ
開かれる扉。高級な店の扉は重いというのが相場だが、ここの扉はスっと開けることができた。
香るのは魚介類の美味しそうな匂い。デザートの甘い匂い。流れる歌が静かな店内をゆっくりと雰囲気で飲み込んでいる。
「いらっしゃいませ」
入った目の前にあるカウンター。タキシードを着たおじさんが頭を下げる。
「二名で。予約してないけど大丈夫ですか?」
「はい。では、こちらへ」
ブティックの店員と同じようなセリフ。高いところの店はだいたいこんなことを言うのか。
そんなことを考えながらヘキオンとロードは案内された机まで歩いていく。
「――」
ヘキオンがメニュー表を見つめている。開いた口が塞がらない。ポカーと口を開けてそのメニューを見ていた。
クァドラフェラット 10000円。
トマトとテネータのリゾット 17800円。
アシダのマリネ 14000円。
フェルマッチ 21000円。
レッドマーチのロック 30000円。
高い。その一言に尽きる。写真がないのが想像力を掻き立てる。が、高すぎで想像力が発揮されてない。
ヘキオンの残り所持金額は15000円。そりゃあ食べられないこともないが、それにしても高すぎる。
「ヘキオンちゃんどれにするの?」
窓際の丸いテーブル。その反対にいるロード。色々と驚いてるヘキオンを面白そうに見つめていた。
「……名前だけじゃわかんないよ。しかもすごく高い……」
「ヘキオンちゃんこんなところ来なさそうだしねー」
「くぁどらふぇらっと?とか聞いたこともないよ……」
「エスターとモッツァレラエッグを混ぜて一緒に揚げたベネッチアの伝統的な料理だよ」
「ごめん。知らない単語の作り方を知らない単語で話されてもわかんない」
クスッと笑う。
「まぁヘキオンちゃんが食べたがってたやつは……これだね。ムール貝とプレイ貝のクリームパスタ」
「12000円かぁ。じゃあこれにする」
「私もそうしようかな」
「じゃあ店員さん呼ぶね――」
「待って待って待って。こういう店にはマナーがあるんだよ。ちょっと見ててね」
近くにいるウェイターに目を合わせる。
ここで簡単なマナー講座。
高級料理店で店員を呼ぶ時はアイコンタクトをしよう。それで気が付かれなかったら人差し指を上げる。それでも気が付かれなかったら手を上げよう。声を出すのは最後の手段。
みんなも高級料理店に行った時はマナーに気おつけようね。
気がついたウェイターがテーブルの方へ。
「ご注文は」
「ムール貝とプレイ貝のクリームパスタを二つ」
「食後のデザートはいかがでしょうか」
「オーロラスープを。ヘキオンちゃんは?」
「えっ……じゃあ私も同じのを」
「かしこまりました」
「――ねぇ。ロードちゃん」
食事が運ばれてくるのには時間がかかる。暇な時間。気になることはたくさんある。聞きたいこともたくさんある。
深刻そうではない。ただ普通に。ヘキオンは気になったことを聞いた。
「なんでカエデはロードちゃんから逃げてるの?」
「……思い当たる節はあるけど、実際のところは知らない」
「思い当たる節って?」
「んー。結構あるんだけどね。まぁしいてあげるとしたら――」
「多分カエデ、私のこと見殺しにしたと思ってるから」
「――ふぇ?」
続く
ロードの後ろに隠れるようにして歩く。
「もっと前に出て歩けばいいのに」
「だって恥ずかしいし……スカートとか履くの久しぶりなんだよ……」
「見られても恥ずかしくないためのドレスでしょ。汚いよりかはいいじゃない」
「……うん」
ロードの腕をキュッと抱きしめる。言われてもやっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいよう。鬱陶しそうな顔になる。でも特に振りほどいたりはしていない。
「行こうとしていたお店ってどこ?」
指を指す。さっき来たあの店だ。お昼時だが特に混んではいない。ガラス越しから見える限りはまだ空いている。
「へぇ~。良い目してるね。あそこのイカ墨パスタがとっても美味しいんだよ」
「そうなの?……でも今は貝類の気分」
「じゃあイカ墨パスタと貝類のやつの二つ食べよ!」
「私そんなに食べられないよ~」
こう見るもカップルみたいだ。片方が男だったならカエデが黙っていないだろう。この映像を見せて反応を見てみたいものだ
開かれる扉。高級な店の扉は重いというのが相場だが、ここの扉はスっと開けることができた。
香るのは魚介類の美味しそうな匂い。デザートの甘い匂い。流れる歌が静かな店内をゆっくりと雰囲気で飲み込んでいる。
「いらっしゃいませ」
入った目の前にあるカウンター。タキシードを着たおじさんが頭を下げる。
「二名で。予約してないけど大丈夫ですか?」
「はい。では、こちらへ」
ブティックの店員と同じようなセリフ。高いところの店はだいたいこんなことを言うのか。
そんなことを考えながらヘキオンとロードは案内された机まで歩いていく。
「――」
ヘキオンがメニュー表を見つめている。開いた口が塞がらない。ポカーと口を開けてそのメニューを見ていた。
クァドラフェラット 10000円。
トマトとテネータのリゾット 17800円。
アシダのマリネ 14000円。
フェルマッチ 21000円。
レッドマーチのロック 30000円。
高い。その一言に尽きる。写真がないのが想像力を掻き立てる。が、高すぎで想像力が発揮されてない。
ヘキオンの残り所持金額は15000円。そりゃあ食べられないこともないが、それにしても高すぎる。
「ヘキオンちゃんどれにするの?」
窓際の丸いテーブル。その反対にいるロード。色々と驚いてるヘキオンを面白そうに見つめていた。
「……名前だけじゃわかんないよ。しかもすごく高い……」
「ヘキオンちゃんこんなところ来なさそうだしねー」
「くぁどらふぇらっと?とか聞いたこともないよ……」
「エスターとモッツァレラエッグを混ぜて一緒に揚げたベネッチアの伝統的な料理だよ」
「ごめん。知らない単語の作り方を知らない単語で話されてもわかんない」
クスッと笑う。
「まぁヘキオンちゃんが食べたがってたやつは……これだね。ムール貝とプレイ貝のクリームパスタ」
「12000円かぁ。じゃあこれにする」
「私もそうしようかな」
「じゃあ店員さん呼ぶね――」
「待って待って待って。こういう店にはマナーがあるんだよ。ちょっと見ててね」
近くにいるウェイターに目を合わせる。
ここで簡単なマナー講座。
高級料理店で店員を呼ぶ時はアイコンタクトをしよう。それで気が付かれなかったら人差し指を上げる。それでも気が付かれなかったら手を上げよう。声を出すのは最後の手段。
みんなも高級料理店に行った時はマナーに気おつけようね。
気がついたウェイターがテーブルの方へ。
「ご注文は」
「ムール貝とプレイ貝のクリームパスタを二つ」
「食後のデザートはいかがでしょうか」
「オーロラスープを。ヘキオンちゃんは?」
「えっ……じゃあ私も同じのを」
「かしこまりました」
「――ねぇ。ロードちゃん」
食事が運ばれてくるのには時間がかかる。暇な時間。気になることはたくさんある。聞きたいこともたくさんある。
深刻そうではない。ただ普通に。ヘキオンは気になったことを聞いた。
「なんでカエデはロードちゃんから逃げてるの?」
「……思い当たる節はあるけど、実際のところは知らない」
「思い当たる節って?」
「んー。結構あるんだけどね。まぁしいてあげるとしたら――」
「多分カエデ、私のこと見殺しにしたと思ってるから」
「――ふぇ?」
続く
0
あなたにおすすめの小説
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた
季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】
気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。
手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!?
傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。
罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚!
人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる