無職で何が悪い!

アタラクシア

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3章「美しき水の世界」

82話「勝利宣言を上げろ!」

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ポカンとする2人を持ち上げ、椅子にドカンと座らせる。

「へいお兄ちゃん!!ワインを樽で持ってこーーい!!」
「こっちにはジュースを!!」
「毎度あり!!」

店員っぽい人が店の奥へ。1秒も経たずに樽を持った人が出てきた。


「ちょ……あの……」
「ほらほらお嬢ちゃん飲みな飲みな~。ワインはもう少し大人になってからな。ジュースをたくさん飲ませて上げるよ~」

「兄ちゃんも飲みなぁ。俺とワインの飲みあいをしようぜぇ!!」
「いやあの俺まだ17……」
「関係ねぇ関係ねぇ!!バレなきゃ犯罪にはなんねぇよ!!」


雰囲気に押し負けている2人。下手したらスタートタウンのギルドよりも騒がしい。もうわちゃわちゃしてる。



「すごく強ぇなお嬢ちゃん。あたしびっくりしちまったよ」

ヘキオンの前に豪快に座る女。さっきの威圧感はどこへ。とても親しげに話しかけてきた。

「そ、そうですかね……」
「私のパンチをまともに避けたのはお前が初めてだよ!お腹空いてんだろ?――おい兄ちゃん!この店で1番美味しいものをこの子に!」
「はいさいまいどー!」

樽を横に置いた店員がまた店の奥へと走っていった。



「お嬢ちゃん名前は?」
「ヘキオンです」
「いい名前だ!あたしはクリントン!よろしくな!」
「――はい!」

ジョッキに入ったワインをグイッと喉の奥へと流し込む。その豪快な飲みっぷり。ヘキオンはちょっと憧れるかのような目線をクリントンへ送っている。

「というかお嬢ちゃんほんとうに魔法使いなのか?」
「本当ですよ」
「……あんな強い蹴りをしてくるやつが魔法使いとは思えないが」

ガッチガチのクリントンが言うのだ。嘘ではないはず。

「しっかしすごいな。そんな華奢な体のどこにパワーがあるんだ?びっくりしたぞ私」
「えへへ……」

顔を赤くして頭を搔く。嬉しそうだ。



ワイワイガヤガヤ。

騒がしくも楽しそうな空間。ヘキオンもテンションが上がってきている。

「――なぁヘキオン」

ヘキオンと肩を組んでいるクリントンが目の前に紙を差し出した。


黄ばんでいる古めの紙。筆で書かれたその文字は紙に大々的にこう書かれてあった。

『賞金100万!! ブフィック闘技大会!!』

場所はベネッチアのコロシアム。優勝賞金はそのまま100万円。


「これは……」
「明日コロシアムで闘技大会があるんだ。ヘキオンも出てみない?」
「……へぇ」

目がキラキラと光り出す。今日だけでだいぶお金を使っている。賞金100万。これはヘキオンにとって眉唾物だ。欲しいという感情が喉から溢れかけている。

「男女関係の無い闘技大会。遠慮なく存分に楽しめるぞ!」
「――いいね。いいね!楽しそう!」
「……今日のヤツは本気じゃなかっただろ?少なくとも私は本気じゃないぞ」
「もちろん!まだまだ本気じゃないよ!」
「なら明日。次は本気で戦いあおう……!」

親しげな雰囲気から一転。さっきの威圧感を出していた時と同じ。強そうなオーラが体からだしている。


「うんうん!絶対負けないよ!」

それに答えるように。ヘキオンは強く反応した。瞳には闘志が宿っている。

嬉しそうな表情を浮かべるクリントン。たっぷり注がれたワインを一口で飲み干す。


「――おいおい!明日は姉さんが優勝するに決まってんだろ!」
「わわ!?」

ヘキオンの頭を後ろからワシャワシャと撫で回す。出てきたのはこれまたガチガチの女の人。クリントンよりかは小さいが、ヘキオンからしたらカエデと同じくらいには大きい。


「こらこらやめなさい。言ってることは間違いではないけどな――」
「いや!私が優勝します!」
「――言うじゃねぇか!!そういう子は大好きだぜぇ!!」

周りから担ぎあげられている。

「ふぁ!?えっあっ!?」

突然の出来事で焦っている。そんなものはお構い無し。


「明日が楽しみだな!!絶対あたしが勝ってやるからな!!」

ヘキオンの下で叫ぶクリントン。それどころではなさそうなヘキオンであったが、その声に反応した。

「――私が優勝するもん!!絶対買って100万を獲ってやる!!」





「うーん……」
「お兄ちゃん弱いなぁ!そんなんだからあのヘキオンって子の尻に敷かれるんだぜ!」
「敷かれてなぁい……」

ワインを飲まされまくったカエデは机に倒れているのだった。











続く
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