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不思議な声
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宝石をどう調べても,見た目には,特に変わったところは無さそうだった。
とりあえず,貝殻の破片を捨て,宝石を鞄にしまうことにした。
ところが,宝石の入った鞄を持っていると,不思議な声が聞こえて来ることに気がついた。自分が考え事をする時に,言葉が脳裏に浮かぶと同様に,知らない声が,自分が使わないような言葉で,自分に話しかけてくる。
「待っている。」とか,「波があなたを招いている。」とか,変なことを色々言って来る。
最初は、幻聴だと思い,インターネットで症状を調べたが,症状は、鞄を身につけている時にしか出ないし,自分の心の声とは、はっきりと識別できているから,どうも,病気ではないようだ。
病気ではないことが判明し,安心したのも束の間,「じゃ,一体何なんだ,あの声は!?」という疑問が解けないまま,頭の中を駆け巡り続ける。
不思議な声が,「波」という言葉をよく使うから,海に行ってみることにした。しかし,一番近いところでも,海に行こうと思ったら,電車を何回も乗り継ぐ必要があるし,2時間以上かかる。休みの日じゃないと,往復4時間余りの遠出が出来ない。
土曜日は部活の予定が入っていたので,次の日曜日に行ってみることにした。父親は,仕事で,家にいないから,出掛けるための口実を考える必要もない。
最寄りの駅で降り,海岸まで歩いた。歩きながら,考えた。志穂は、海に遊びに来た記憶は全くなかった。海水浴も,砂遊びも,したことがない。海は,その自分にとっては,全く知らない領地だ。そう思うと,ワクワクして来た。
海岸沿いに住宅がたくさん並んでいた。「海のすぐ近くに住むのは,どういう気持ちなんだろう?」と志穂が静かに想像してみて,羨ましくなった。
海に近づくと,頭の中の声が一段としつこくて,うるさくなった。
「そう,波の中へおいで。待っているよ。」
志穂は、首を横に振った。「泳げないし、海に入るつもりはない。調べに来ただけだ。」不思議な声に返答するように,志穂は、自分にそう言い聞かせた。
志穂は、生まれて初めて,洋々と広がる海を見て,感動した。潮風が頬に心地よく当たり、思いっきり,綺麗な空気を吸い込み,海には香りがあるということを初めて知った。
「なんて素敵な場所だ!」と思った。
しかし,頭の中の声は,うるさい。
「あとちょっとだ。待っているよ。」
志穂は、また首を横に振った。どんなに気持ち良くても,海に飛び込んだりするつもりはない。その無茶なことをする訳がない。
しかし,頭の中の声は,容赦なく志穂にあれこれと話しかけ,説得しようとする。
「調べに来たでしょう?真実が知りたいでしょう?なら,おいで。」
不思議なことに,頭の中の声の言うことを聞いているうちに,頭で決めたはずのことが揺らぎ,声に従いたくなる。自分の声ではないのに,抵抗するのは,とても難しい。この場所にいると,ますます困難になる。自分で決めた意思が折れそうになる。
すると、頭の中の声が問いかけて来た。「どうして,そんなに戦うの?知りたくないの?」
志穂は、頭を激しく横に振り,大きな声で叫んでしまった。
「泳げないと言っているのに,なんでそんなにしつこいの!?うるさいってば!」
そしたら,海に面している住宅に住む年老いたお爺さんが,志穂の声を聞いたのか,突然外に出て来た。志穂の困惑した表情を見ると,気になって,志穂に喋りかけた。
「大丈夫ですか?」
「だ,大丈夫です。」
志穂は、吃りながら,辛うじて答えた。
「もしよかったら,お茶でも飲んで行かないか?」
お爺さんが優しく微笑んだ。
志穂は、小さい頃から,知らない人に警戒するように注意され,育って来た。「いろんな人がいる。変な人も,自分を傷付けるような人もいる。」と。
しかし,度々そう注意して来た親が自分にずっと嘘をついて,今も嘘をつき続けていると思うと,その忠告を無視したくなった。あえて,背いてみたくなった。何より,頭の中の不思議な声を黙らせたかった。
「じゃ,お言葉に甘えて。」
志穂がニコニコ顔の優しそうなお爺さんに頭を下げた。
とりあえず,貝殻の破片を捨て,宝石を鞄にしまうことにした。
ところが,宝石の入った鞄を持っていると,不思議な声が聞こえて来ることに気がついた。自分が考え事をする時に,言葉が脳裏に浮かぶと同様に,知らない声が,自分が使わないような言葉で,自分に話しかけてくる。
「待っている。」とか,「波があなたを招いている。」とか,変なことを色々言って来る。
最初は、幻聴だと思い,インターネットで症状を調べたが,症状は、鞄を身につけている時にしか出ないし,自分の心の声とは、はっきりと識別できているから,どうも,病気ではないようだ。
病気ではないことが判明し,安心したのも束の間,「じゃ,一体何なんだ,あの声は!?」という疑問が解けないまま,頭の中を駆け巡り続ける。
不思議な声が,「波」という言葉をよく使うから,海に行ってみることにした。しかし,一番近いところでも,海に行こうと思ったら,電車を何回も乗り継ぐ必要があるし,2時間以上かかる。休みの日じゃないと,往復4時間余りの遠出が出来ない。
土曜日は部活の予定が入っていたので,次の日曜日に行ってみることにした。父親は,仕事で,家にいないから,出掛けるための口実を考える必要もない。
最寄りの駅で降り,海岸まで歩いた。歩きながら,考えた。志穂は、海に遊びに来た記憶は全くなかった。海水浴も,砂遊びも,したことがない。海は,その自分にとっては,全く知らない領地だ。そう思うと,ワクワクして来た。
海岸沿いに住宅がたくさん並んでいた。「海のすぐ近くに住むのは,どういう気持ちなんだろう?」と志穂が静かに想像してみて,羨ましくなった。
海に近づくと,頭の中の声が一段としつこくて,うるさくなった。
「そう,波の中へおいで。待っているよ。」
志穂は、首を横に振った。「泳げないし、海に入るつもりはない。調べに来ただけだ。」不思議な声に返答するように,志穂は、自分にそう言い聞かせた。
志穂は、生まれて初めて,洋々と広がる海を見て,感動した。潮風が頬に心地よく当たり、思いっきり,綺麗な空気を吸い込み,海には香りがあるということを初めて知った。
「なんて素敵な場所だ!」と思った。
しかし,頭の中の声は,うるさい。
「あとちょっとだ。待っているよ。」
志穂は、また首を横に振った。どんなに気持ち良くても,海に飛び込んだりするつもりはない。その無茶なことをする訳がない。
しかし,頭の中の声は,容赦なく志穂にあれこれと話しかけ,説得しようとする。
「調べに来たでしょう?真実が知りたいでしょう?なら,おいで。」
不思議なことに,頭の中の声の言うことを聞いているうちに,頭で決めたはずのことが揺らぎ,声に従いたくなる。自分の声ではないのに,抵抗するのは,とても難しい。この場所にいると,ますます困難になる。自分で決めた意思が折れそうになる。
すると、頭の中の声が問いかけて来た。「どうして,そんなに戦うの?知りたくないの?」
志穂は、頭を激しく横に振り,大きな声で叫んでしまった。
「泳げないと言っているのに,なんでそんなにしつこいの!?うるさいってば!」
そしたら,海に面している住宅に住む年老いたお爺さんが,志穂の声を聞いたのか,突然外に出て来た。志穂の困惑した表情を見ると,気になって,志穂に喋りかけた。
「大丈夫ですか?」
「だ,大丈夫です。」
志穂は、吃りながら,辛うじて答えた。
「もしよかったら,お茶でも飲んで行かないか?」
お爺さんが優しく微笑んだ。
志穂は、小さい頃から,知らない人に警戒するように注意され,育って来た。「いろんな人がいる。変な人も,自分を傷付けるような人もいる。」と。
しかし,度々そう注意して来た親が自分にずっと嘘をついて,今も嘘をつき続けていると思うと,その忠告を無視したくなった。あえて,背いてみたくなった。何より,頭の中の不思議な声を黙らせたかった。
「じゃ,お言葉に甘えて。」
志穂がニコニコ顔の優しそうなお爺さんに頭を下げた。
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