貝殻の秘密

Yonekoto8484

文字の大きさ
4 / 11

お爺さんのおもてなし

しおりを挟む
お爺さんの家に入ってみると,志穂は驚いた。貝殻だらけだった。家の本棚も,壁も,床の間も,どこを見ても,貝殻が飾ってあった。

「貝殻をたくさん持っていらっしゃいますね!」
志穂が驚きを隠せずに,お爺さんに言った。

「全部自分でダイビングして採ったものよ。あなたは,貝殻好きか?」
お爺さんが志穂に尋ねた。

志穂は、首を傾げた。人気ドラマや芸能人の好き嫌いを訊く時と同じように,「貝殻が好き?」と訊かれて、違和感を覚えた。貝殻が好きかどうか,これまで考えたこともなかった。
「好きかな…。」
志穂が答えた。

「好きなら,はっきりと「好き」と言えばいいよ。」
お爺さんが志穂の答え方に不満があったようだ。

志穂は、それ以上答えないことにした。

「どうぞ。」
お爺さんがダイニングのテーブルに志穂を案内し,座るように合図をした。

志穂が座ると、お爺さんがすぐにお茶を淹れ始めた。

「俺は,奥さんが亡くなってね、一人なんだよ。趣味があるから一人でもやっていけるんだが、やっぱり、たまには,人とお茶が飲みたくなるんだ。」
お爺さんがお湯を沸かしながら,話し出した。

「そうですか。」
志穂が相槌を打った。

「お嬢ちゃんは?何か用事があって,一人でこんなところまで来たの?」
お爺さんがさりげなく尋ねた。

志穂は、宝石のことをお爺さんに話すかどうか,迷ったが,このお爺さんなら,例の宝石について何か知っているのかもしれないと期待した。

頭の中の声のことだけを伏せて,病床の祖母から告げられた衝撃の事実,貝殻のこと,宝石のことを洗いざらい話した。

お爺さんは、真摯になって,頷きながら,志穂の話に耳を傾けた。志穂が話し終わっても,お爺さんは、続きを待っているかのように、しばらく黙ったままだったが,志穂の話は終わったのを確かめると,お爺さんがようやく口を開けた。

「そこで,どうして海に来たのかね?」
お爺さんは、この点が引っかかったようで,志穂に尋ねた。

志穂は、はっとした。確かに,不思議な声のことを話さないと,話の辻褄は合わない。しかし,話さないと決めたのだ。
「何となく…海の宝石なのかなと…。」
志穂が小さい声で言った。

「俺は,貝を集めるのが生き甲斐でね,海のことには詳しいんだ…もしよかったら,宝石を見せてもらえないかな?」
お爺さんが申し出た。

志穂は、躊躇せずに,宝石を鞄から出し,お爺さんに渡した。

「これか…宝石珊瑚だね。別名で,八方珊瑚と言うんだが,深海で生息する珊瑚の一種だ。この色は,見たことないけどね…。」
お爺さんが指で宝石の表面をなぞりながら,言った。

「珊瑚ですか?でも,どうして,貝殻の中に入っていたと思いますか?」
志穂が追求してみた。

「それは,知らない。」
お爺さんが格好つけずに,素直に言った。すると,淹れ終わったお茶を志穂に注ぎ始めた。

煎餅を戸棚から出し,テーブルに置くと,志穂と向かい合うように,テーブルの反対側の椅子に座った。

「あの珊瑚にどの秘密が隠されているか知らないが,お嬢ちゃんの一番知りたいことは、恐れずに、自分の心の声にじっと耳を澄ませば,わかるんじゃないかな?」
お爺さんがふと言った。

「どう言う意味ですか?」
志穂が聞き返した。

「どう言う意味なんでしょうね…。」
お爺さんが鼻に皺を寄せて,笑いながら,言った。

志穂は、お土産に貝殻を何種類かもらい,親切なお爺さんにお礼を言ってから,急いで帰路についた。父親が帰宅するまでに帰らないと,心配をかけてしまう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

書籍化の打診が来ています -出版までの遠い道のり-

ダイスケ
エッセイ・ノンフィクション
ある日、私は「書籍化の打診」というメールを運営から受け取りました。 しかしそれは、書籍化へと続く遠い道のりの一歩目に過ぎなかったのです・・・。 ※注:だいたいフィクションです、お察しください。 このエッセイは、拙作「異世界コンサル株式会社(7月12日に電子書籍も同時発売)」の書籍化の際に私が聞いた、経験した、知ったことの諸々を整理するために書き始めたものです。 最初は活動報告に書いていたのですが「エッセイに投稿したほうが良い」とのご意見をいただいて投稿することにしました。 上記のような経緯ですので文章は短いかもしれませんが、頻度高く更新していきますのでよろしくおねがいします。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...