2 / 13
服部社長
しおりを挟む
翌朝,雄二は早起きして,初めての出勤の支度をした。内定をもらったのは,小さな広告会社だった。雄二は,広告業界についての知識は乏しく,自信がなかったが,内定をもらったからには,頑張ろうと意気込んでいた。
会社に到着すると,面接をしてくれた人がすぐに出迎えてくれた。山崎さんという中年男性だ。会社は,女性社長が法学部で身に付けた法律の知識を活かし,自分で立ち上げたものらしいが,採否の判断も含め,人事のことは,全部山崎さんに任せているそうだ。
「では,早速,社長に挨拶をしてもらいますね。大きな会社は,下っ端の人と社長が交わることはあまりないと思いますが,うちは,小さなところなので,下っ端への指示や指導も,ほとんど社長自身が行います。」
山崎さんが雄二を案内しながら,説明した。
「社長に気に入られた方が仕事がスムーズに行くということですよね?」
雄二が確認した。
「まあ,そういうことです…嫌われると,大変ですよ。」
山崎さんが苦笑いをした。
「では,こちらです。」
山崎さんがそういうと,社長室のドアを開けた。
雄二は,社長の顔を見て,唖然とした。昨夜,うっかり「綺麗だ。」と弘樹と話しているのを聞かれてしまって,怒鳴られた女性だった。
女性社長も,二人が部屋に入って来ると,すぐに挨拶をしようと立ち上がったが,雄二の顔を見ると,目を丸くし,驚いた表情をした。
「先日は,大変失礼致しました。」
雄二が自分から先に謝った方が印象がいいと思い,慌てて頭を下げた。
「え?お知り合いでしたか?」
山崎さんが女性社長と雄二の顔を見比べて,尋ねた。
「いいえ。」
女性社長が気を取り直して,雄二がドギマギしている隙に,山崎さんの疑問を否定した。
「服部社長,今日からお世話になる岡田雄二です。」
山崎さんは,社長の態度から,それ以上追求しない方がいいことを察し,雄二を紹介した。
「よろしくお願いします。」
服部社長が氷のように冷たい声で,雄二に頭を軽く下げ,挨拶をした。
「こちらこそ,よろしくお願い致します。」
雄二が頭をこれ以上下がらないくらい,頭を深く下げて,お辞儀をした。
「山崎さん,失礼ですが,何故この方を?」
服部社長が雄二の様子を一瞥してから,山崎さんに注目を向けて,尋ねた。
「え?…新しい風を吹かせてくれそうな方だと思ったからです。」
山崎さんが虚をつかれて,少し戸惑いながら,答えた。
「そうですか…。」
服部社長は,腑に落ちない様子だった。
「何か,不満な点でも?」
山崎さんが社長の様子の異変に困惑し,訊いた。
「いいえ。」
服部社長がまた冷たく答えた。
「あの…一生懸命頑張りますので…!!」
雄二が社長の機嫌を取ろうと,もう一度深くお辞儀をした。
「はい,頑張ってください。不真面目な言動は,許しませんので。」
服部社長がよそよそしい態度を崩さずに,言ってから,また山崎さんの方を向き直った。
「早速,働いてもらいましょう。」
会社に到着すると,面接をしてくれた人がすぐに出迎えてくれた。山崎さんという中年男性だ。会社は,女性社長が法学部で身に付けた法律の知識を活かし,自分で立ち上げたものらしいが,採否の判断も含め,人事のことは,全部山崎さんに任せているそうだ。
「では,早速,社長に挨拶をしてもらいますね。大きな会社は,下っ端の人と社長が交わることはあまりないと思いますが,うちは,小さなところなので,下っ端への指示や指導も,ほとんど社長自身が行います。」
山崎さんが雄二を案内しながら,説明した。
「社長に気に入られた方が仕事がスムーズに行くということですよね?」
雄二が確認した。
「まあ,そういうことです…嫌われると,大変ですよ。」
山崎さんが苦笑いをした。
「では,こちらです。」
山崎さんがそういうと,社長室のドアを開けた。
雄二は,社長の顔を見て,唖然とした。昨夜,うっかり「綺麗だ。」と弘樹と話しているのを聞かれてしまって,怒鳴られた女性だった。
女性社長も,二人が部屋に入って来ると,すぐに挨拶をしようと立ち上がったが,雄二の顔を見ると,目を丸くし,驚いた表情をした。
「先日は,大変失礼致しました。」
雄二が自分から先に謝った方が印象がいいと思い,慌てて頭を下げた。
「え?お知り合いでしたか?」
山崎さんが女性社長と雄二の顔を見比べて,尋ねた。
「いいえ。」
女性社長が気を取り直して,雄二がドギマギしている隙に,山崎さんの疑問を否定した。
「服部社長,今日からお世話になる岡田雄二です。」
山崎さんは,社長の態度から,それ以上追求しない方がいいことを察し,雄二を紹介した。
「よろしくお願いします。」
服部社長が氷のように冷たい声で,雄二に頭を軽く下げ,挨拶をした。
「こちらこそ,よろしくお願い致します。」
雄二が頭をこれ以上下がらないくらい,頭を深く下げて,お辞儀をした。
「山崎さん,失礼ですが,何故この方を?」
服部社長が雄二の様子を一瞥してから,山崎さんに注目を向けて,尋ねた。
「え?…新しい風を吹かせてくれそうな方だと思ったからです。」
山崎さんが虚をつかれて,少し戸惑いながら,答えた。
「そうですか…。」
服部社長は,腑に落ちない様子だった。
「何か,不満な点でも?」
山崎さんが社長の様子の異変に困惑し,訊いた。
「いいえ。」
服部社長がまた冷たく答えた。
「あの…一生懸命頑張りますので…!!」
雄二が社長の機嫌を取ろうと,もう一度深くお辞儀をした。
「はい,頑張ってください。不真面目な言動は,許しませんので。」
服部社長がよそよそしい態度を崩さずに,言ってから,また山崎さんの方を向き直った。
「早速,働いてもらいましょう。」
0
あなたにおすすめの小説
【短編】記憶を失っていても
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
7年以上前の記憶のない平民出身のラチェルは、6年前に娘のハリエットを生んでからグリオス国のアンギュロスの森付近の修道院で働きながら暮らしていた。
そんなある日ハリエットは見たことのない白銀色の大樹を見つけたと、母ラチェルに話すのだが……。
これは記憶の全てを失ったラチェル──シェシュティナが全てを取り戻すまでのお話。
※氷雨そら先生、キムラましゅろう先生のシークレットベビー企画開催作品です( ´艸`)
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
なぜか水に好かれてしまいました
にいるず
恋愛
滝村敦子28歳。OLしてます。
今空を飛んでいたところをお隣さんに見られてしまいました。
お隣さんはうちの会社が入っているビルでも有名なイケメンさんです。
でもかなりやばいです。今インターホンが鳴っています。
きっと彼に違いありません。どうしましょう。
会社の帰りに気まぐれに買ったネイルをつけたら、空を飛べるようになって平凡じゃなくなったOLさんのお話。
『さよなら、彼に依存していた私―30日間の失恋回復ストーリー』
月下花音
恋愛
別れた日から30日。毎日、少しずつ「本当の私」に出会っていく
「嫌いになりたくないから、別れよう」
2年間付き合った彼氏・優也にそう告げられた日、私の世界は色を失った。
コーヒーは苦く、鏡に映る自分は知らない女で、スマホの通知音に心臓が跳ねる。
彼の好きだったチョコミントを避け、彼の痕跡が残る部屋で、ただ泣いていた。
でも、私は決めた。30日間で、私を取り戻す。
Day 1、苦いコーヒーを飲み干した。
Day 5、スマホを遠ざけた。
Day 7、彼のSNSを削除した。
Day 9、部屋の模様替えをした。
Day 13、彼のための香りを捨て、私の香りを選んだ。
Day 17、自分のために、花を買った。
Day 22、長い髪を切り、新しいスマホに変えた。
Day 29、新しい出会いを、恐れずに楽しめた。
Day 30、ストロベリーアイスを食べながら、心から笑っていた。
小さな「さよなら」を積み重ねるたび、私は変わっていく。
「彼に依存していた私」から、「私自身でいられる私」へ。
これは、失恋から立ち直る物語ではありません。
誰かのために生きていた女性が、自分のために生きることを選ぶ物語です。
【全31話完結】こころの30日間を追体験してください。
婚約破棄された私はカエルにされましたが、悪役令嬢な妹が拾って舞踏会で全部ひっくり返します
まぴ56
恋愛
異世界貴族の私は、婚約者に捨てられ――口封じに“蛙”へ。
声も出せず噴水の縁で震える私を拾ったのは、嫌味たっぷりで見下すように笑う妹のミレイだった。
「汚らしいお姉さま――わたくしが連れ帰って、たっぷり苛めて差し上げますわ」
冷たく弄ぶふりをしながら、夜な夜な呪いの文献を漁るミレイ。
やがて迎える、王も出席する大舞踏会。ミレイの千里眼が映す“真実”が、裏切り者たちの仮面を剥ぎ取っていく――
呪いが解ける条件は、最後のひと押し。
姉妹の絆が、ざまぁと逆転を連れてくる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる