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鉄の女
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昼休憩になると,山田さんが慌てて会社を出て行ったので,雄二が追いかけた。
「あの…一緒でもいいですか?」
「どうぞ。」
山田さんが言った。
二人で,お店に入ると,山田さんが別人のように,打ち解けて話してくれた。
「そうなんですね。それで泣いていたんですね。」
雄二が山田さんの失恋の話を聞いて,相槌を言った。
「だから,しばらく人と付き合うのをやめようと思って…。」
山田さんが言った。
「え?それは,もったいないんじゃないですか?その人がダメだったからと言って,諦めるのは,まだ早いんじゃないですか?」
雄二が励まそうとした。
「二度と恋をしないとは言っていないの。ちょっと休憩をするだけ。社長にも,迷惑をかけたんだし…。」
山田さんが説明した。
「社長になんの迷惑をかけたんですか?」
雄二には,山田さんの発言の意味がよくわからなかった。
「朝から様子がおかしいことに気づいて,尋問されたの。振られたことがショックでって言ったら,仕事に支障が出るようなら,やめたほうがいいと言われたの。」
「えー!?何,それ!?」
雄二は,社長がそのことを言うとは驚いた。
「社長は,恋愛にあまり関心のない人だからね。」
山田さんがさりげなく言った。
「あんなに綺麗な人なのに?」
雄二が追求した。
「綺麗でしょう?よく告白されるけど,みんな断るの。面倒くさいようで…。実はね,2年前にね,私と同期で入った人が社長に告白したの…。」
山田さんが声を低くして,話した。
「誰?」
雄二が,身を乗り出して,訊いた。
「もう,いない…告白して,すぐに首が飛んだよ。社長は,そう言う気持ちが邪魔になるから,許さないの。」
山田さんがもっと声を低くして,言った。
「え?好きになっただけで,解雇された!?」
雄二は,驚いた.
「そう。だから,あなたも,気をつけた方がいいよ。」
山田さんが雄二の内面を見透かしたかのように言った。
「え?僕は,ない,ない!そんなこと,絶対ない!」
雄二が慌てて,否定した。
「あ,そう?
でも,気になっているでしょう,どんな人なのかなって?やめといた方がいいよ。鉄の女って言われているもんだから。」
山田さんは,雄二の気持ちをわかっているような口ぶりで,目を輝かせて言った。
「それは,気になるよ。だって,上司でしょう?ある程度,知っとかないと,上手く付き合えないじゃん?」
雄二は,いつからか,山田さんに対して,敬語を使わなくなっていた。
「服部社長の場合は,知らない方が上手く付き合える。部下に自分のことを知られるのが嫌な人だからね。」
山田さんが面白そうに笑みを浮かべて,言った。
「趣味は?」
雄二が尋ねた。
「さあ…。」
山田さんは,関心無さそうに答えた。
「何も,知らないの?ずっと一緒に働いているのに!?」
「知らない…知りたくもない。だから,長い付き合いが出来るの。程よい距離というか…。」
***
部下には,知られていないが,服部美穂には,立派な趣味がある。
毎日,仕事を終えて,まっすぐアパートに帰る美穂は,玄関に入ってすぐに,部屋着に着替え,ワインを出して,自分のグラスに注ぐ。それから,わざわざインターネットで取り寄せている特製のチョコレートの箱を出し,パソコンを置いているこぢんまりとしたリビングまで運ぶ。
パソコンを起動させながら,チョコレートの一口目の旨味を深く味わいながら,職場では,絶対に見せない幸せそうな表情をする。
パソコンが動き出すと,最近ハマっている落語を読みながら,ワインをガバ飲みし,チョコレートを頬張る。そして,落語のオチが面白いと,笑う。お腹を抱えて,声を出して,顔をくしゃくしゃにして笑うのだ。
「あの…一緒でもいいですか?」
「どうぞ。」
山田さんが言った。
二人で,お店に入ると,山田さんが別人のように,打ち解けて話してくれた。
「そうなんですね。それで泣いていたんですね。」
雄二が山田さんの失恋の話を聞いて,相槌を言った。
「だから,しばらく人と付き合うのをやめようと思って…。」
山田さんが言った。
「え?それは,もったいないんじゃないですか?その人がダメだったからと言って,諦めるのは,まだ早いんじゃないですか?」
雄二が励まそうとした。
「二度と恋をしないとは言っていないの。ちょっと休憩をするだけ。社長にも,迷惑をかけたんだし…。」
山田さんが説明した。
「社長になんの迷惑をかけたんですか?」
雄二には,山田さんの発言の意味がよくわからなかった。
「朝から様子がおかしいことに気づいて,尋問されたの。振られたことがショックでって言ったら,仕事に支障が出るようなら,やめたほうがいいと言われたの。」
「えー!?何,それ!?」
雄二は,社長がそのことを言うとは驚いた。
「社長は,恋愛にあまり関心のない人だからね。」
山田さんがさりげなく言った。
「あんなに綺麗な人なのに?」
雄二が追求した。
「綺麗でしょう?よく告白されるけど,みんな断るの。面倒くさいようで…。実はね,2年前にね,私と同期で入った人が社長に告白したの…。」
山田さんが声を低くして,話した。
「誰?」
雄二が,身を乗り出して,訊いた。
「もう,いない…告白して,すぐに首が飛んだよ。社長は,そう言う気持ちが邪魔になるから,許さないの。」
山田さんがもっと声を低くして,言った。
「え?好きになっただけで,解雇された!?」
雄二は,驚いた.
「そう。だから,あなたも,気をつけた方がいいよ。」
山田さんが雄二の内面を見透かしたかのように言った。
「え?僕は,ない,ない!そんなこと,絶対ない!」
雄二が慌てて,否定した。
「あ,そう?
でも,気になっているでしょう,どんな人なのかなって?やめといた方がいいよ。鉄の女って言われているもんだから。」
山田さんは,雄二の気持ちをわかっているような口ぶりで,目を輝かせて言った。
「それは,気になるよ。だって,上司でしょう?ある程度,知っとかないと,上手く付き合えないじゃん?」
雄二は,いつからか,山田さんに対して,敬語を使わなくなっていた。
「服部社長の場合は,知らない方が上手く付き合える。部下に自分のことを知られるのが嫌な人だからね。」
山田さんが面白そうに笑みを浮かべて,言った。
「趣味は?」
雄二が尋ねた。
「さあ…。」
山田さんは,関心無さそうに答えた。
「何も,知らないの?ずっと一緒に働いているのに!?」
「知らない…知りたくもない。だから,長い付き合いが出来るの。程よい距離というか…。」
***
部下には,知られていないが,服部美穂には,立派な趣味がある。
毎日,仕事を終えて,まっすぐアパートに帰る美穂は,玄関に入ってすぐに,部屋着に着替え,ワインを出して,自分のグラスに注ぐ。それから,わざわざインターネットで取り寄せている特製のチョコレートの箱を出し,パソコンを置いているこぢんまりとしたリビングまで運ぶ。
パソコンを起動させながら,チョコレートの一口目の旨味を深く味わいながら,職場では,絶対に見せない幸せそうな表情をする。
パソコンが動き出すと,最近ハマっている落語を読みながら,ワインをガバ飲みし,チョコレートを頬張る。そして,落語のオチが面白いと,笑う。お腹を抱えて,声を出して,顔をくしゃくしゃにして笑うのだ。
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