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12話

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「さぁ! やっていきますわ!」

 約束どおりに汐梨さんと共にやってきたマガツキ討伐。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああ!?」

 そこで僕はマガツキの大群に追われていた。
 パッと見るだけで10を超えているのがわかる。実際に数えたらとんでもないこと数になるだろう。
 50は行きそう。

「さぁ! 早く倒すんですの」
「た、倒すって言ったて……そもそもこれ、倒しちゃって良いんですか!? 沙月さんから無闇にマガツキは倒さないよう言われているのですか!」
「別に遠慮なくやっちゃっていいですわぁー! ここは誰の影響下にもないところですわぁー! 盛大にぶっ飛ばすんですわぁー!」

 て、テンションに追いつけない……! これ以上無いほどにテンションが上がっていいる汐梨さんが見ている中で僕は腹をくくって足を止めて拳を握る。

「お、おらぁ!」

 そして、振り返って殴ろうとするのだが……。

『ギャギャギャ!?』

 僕の拳が当たるよりも先に何故かマガツキが何も光となって消え、僕の体にマガツキの呪力が流れてくる。
 残ったのは先程まではいたはずのマガツキの指だけが残っている。

「へ?」

『ぎゃぎゃ?』

 突然の光景に僕もマガツキも硬直して体を止める。

「ほら! 呆けていないので早く殴るんですの」
「……ハッ!」

 だが、汐梨さんの言葉を受けてようやく現実に立ち返った僕は拳を握って他のマガツキへと殴りかかる。
 今度は殴る前に消えることはないが、それでも殴っただけで敵が消滅し、マガツキの呪力が僕へと流れて指だけが残る……なんで指だけ?

「……はぁ、はぁ、はぁ」

 そんなことを考えながらがむしゃらに拳を振るっていた僕は自分を追いかけていた多くの魔物を倒し切ることに成功する。

「お疲れ様ですわ」
 そんな僕のもとに少し離れたところで観戦していた汐月さんが近づいてくる。
「流石にこのレベルであれば何も出来ずに消えるわね……本当に、不思議な性質ね。どうなっているのかしら」
「ありがとう、ございます」
「それで? 貴方は陰陽術どれだけ修めていますの?」
「えっ? まぁ……簡単なものであれば」

 僕は汐梨さんの言葉に頷く。
 一応、基礎のところは出来るようになったと言える、はずだ。

「護符の展開は」
「それならば出来ます」

 僕は予め自作していた持っていた護符を取り出して陰陽術を発動。己の身を守るとともに強化する光が僕を包む。

「武器はあるかしら?」
「はい」

 続いては武器だ。小型化された小さく切れ味もないストラップのような刀を取り出した僕はそれを護符へと通して強化する。すると、ストラップでしかなかった小さな刀がたちまち大きな刀へと変貌する。

「……全然洗練されていないけども、ただの力のごり押しだけで一流のレベルにまで押し上げている……何とも無茶苦茶なことをするんですの」
「えっ……? あ、ありがとうございます?」
「別に褒めているわけじゃないですの。とりあえず最低限武装出来ることはわかったですし、本格的にマガツキの掃討をしていくんですの。いくら人とマガツキは全面戦争は避けているとはいえ、あまりマガノの数が増えるのも喜ばしいことじゃないですし」
「そうなんですか?」
「えぇ……増えすぎたマガツキはいずれ、世界の壁を曖昧にしてしまうものよ。基本的に人とマガツキの争いの根底にあるのは世界の形を維持したい人とその世界を曖昧にしてしまいたいマガツキとの争いなんですわ。されど、人はマガノとの全面戦争で多くの人的被害を出すのを認めず、マガノは人との全面戦争で世界の壁を曖昧にするのに必要な数から大きく減ってしまうのを認めていないだけですの」
「そ、それは……」
「いつの間にか陰陽師たちの間で何もしていないマガツキを殺すのは可哀想だから! とか、均衡を保つため! とか、色々な言説が流布しているそうだけど、結局のところあるのはただの利害関係でしかないですの。どちらかが楽に相手を確実に攻め滅ぼせると判断したら一瞬で全面戦争開始ですの」
「……えぇ?」

 僕は沙月さんから聞いた話との違いに困惑する。
 お、思っていたよりもかなりシビアだった……人も、マガツキも。

「まぁ、ここら辺の話は大した話じゃなかったですの。さっさとマガツキを倒していきますの」
「あっ、はーい」

 僕は斧を振り回しながら急ぎ足でマガツキを探してマガノを進んでいく汐梨さんについていくのだった。
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