エレンディア王国記

火燈スズ

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第1章

30.貧しき者、富める者

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「やっとついたあ…!」ヒナがベッドに倒れ込む。

 カルネリスの町の門は、常時開いているようだった。門番こそいたが、入る者を拒むようなことはないようだ。7人は王都からの旅行者であることを告げるだけで町に入ることが許可された。
 7人は荷物を部屋に置き、リアのもとに集合することになったのだった。
 リアの部屋では、同室のカイラ、ケニー、アレスが談笑をしていた。

「本当に良かったのですか?リア様。俺たちと同じ大部屋だなんて。」

 リアは笑って言った。

「ああ、もちろん。王族だからって特別扱いはいらないよ。あくまで開拓団の上司ってことだけわかっていてもらえれば、他は気にしないでいい。それとも、上司と一緒に泊まるのはまずかったか?」

「ああいえ、そういうわけでは…!むしろいろいろなお話ができそうで感謝しております。」

「そりゃよかった。…それにしても、カルネリスって普通の町だよな?王都に雰囲気は似てにぎやかだし。」

「ここは、そうですね。東地区なので…。」カイラの言う、『東地区』を知る者はいないようだった。全員が首をかしげる。

「東?じゃあ西があるの?」ヒナが聞く。カイラはうなずいた。

「ああ。カルネリスの大きな特徴は、町民の貧富の差だ。侯爵レベルの貴族もいれば、家どころか、その日の職にも困る者もいる。その差は、街の景観にも表れるのさ。」

「…ということは、東の反対、西地区は…」

 カイラが少し怖い顔をしてうなずく。

「はい。いわゆるスラム。貧民街です。」

 カイラの話では、カルネリスの東地区は街の7割程度を占める大規模な土地だが、西側3割は、西地区と呼ばれ、貧民街、スラムであるという。職を失い、財をもたないものが住み、不衛生で治安も悪い場所らしい。

「土地の広さに差がある反面、多いのはむしろ貧民。だから、西地区は人であふれかえってます。」

 シャリスが肩を震わせる。

「それって、暴動とか、起きないの?」シャリスの質問の通り、過半数以上を貧民が占めているのであれば、暴動が起きてもおかしくはない。しかし…

「東地区は、少なくとも治安はよかったな。町の人たちも怖がっている様子はなかった。あとかなり裕福な見た目の人が多かったな。」

 リアの言葉にはカイラが反応する。

「そうなんです。今や中流階級すらもこの街にはいない。大富豪か貧民か、そんな街です。で、暴動についてですが、まず起きることはないでしょうね。」

「なぜ?人数が多いなら…」

「いや、無理だ。東地区と西地区には決定的な『壁』が存在する。」カイラは突然立ち上がった。

「リア様、この後予定はありますか?」

「いや、自由行動にして、物資集めをしようかと思ってたが…」

 すると、カイラはニコッと笑って言った。

「ちょっと、社会勉強でもしに行きませんか?」
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