33 / 197
第1章
30.貧しき者、富める者
しおりを挟む
「やっとついたあ…!」ヒナがベッドに倒れ込む。
カルネリスの町の門は、常時開いているようだった。門番こそいたが、入る者を拒むようなことはないようだ。7人は王都からの旅行者であることを告げるだけで町に入ることが許可された。
7人は荷物を部屋に置き、リアのもとに集合することになったのだった。
リアの部屋では、同室のカイラ、ケニー、アレスが談笑をしていた。
「本当に良かったのですか?リア様。俺たちと同じ大部屋だなんて。」
リアは笑って言った。
「ああ、もちろん。王族だからって特別扱いはいらないよ。あくまで開拓団の上司ってことだけわかっていてもらえれば、他は気にしないでいい。それとも、上司と一緒に泊まるのはまずかったか?」
「ああいえ、そういうわけでは…!むしろいろいろなお話ができそうで感謝しております。」
「そりゃよかった。…それにしても、カルネリスって普通の町だよな?王都に雰囲気は似てにぎやかだし。」
「ここは、そうですね。東地区なので…。」カイラの言う、『東地区』を知る者はいないようだった。全員が首をかしげる。
「東?じゃあ西があるの?」ヒナが聞く。カイラはうなずいた。
「ああ。カルネリスの大きな特徴は、町民の貧富の差だ。侯爵レベルの貴族もいれば、家どころか、その日の職にも困る者もいる。その差は、街の景観にも表れるのさ。」
「…ということは、東の反対、西地区は…」
カイラが少し怖い顔をしてうなずく。
「はい。いわゆるスラム。貧民街です。」
カイラの話では、カルネリスの東地区は街の7割程度を占める大規模な土地だが、西側3割は、西地区と呼ばれ、貧民街、スラムであるという。職を失い、財をもたないものが住み、不衛生で治安も悪い場所らしい。
「土地の広さに差がある反面、多いのはむしろ貧民。だから、西地区は人であふれかえってます。」
シャリスが肩を震わせる。
「それって、暴動とか、起きないの?」シャリスの質問の通り、過半数以上を貧民が占めているのであれば、暴動が起きてもおかしくはない。しかし…
「東地区は、少なくとも治安はよかったな。町の人たちも怖がっている様子はなかった。あとかなり裕福な見た目の人が多かったな。」
リアの言葉にはカイラが反応する。
「そうなんです。今や中流階級すらもこの街にはいない。大富豪か貧民か、そんな街です。で、暴動についてですが、まず起きることはないでしょうね。」
「なぜ?人数が多いなら…」
「いや、無理だ。東地区と西地区には決定的な『壁』が存在する。」カイラは突然立ち上がった。
「リア様、この後予定はありますか?」
「いや、自由行動にして、物資集めをしようかと思ってたが…」
すると、カイラはニコッと笑って言った。
「ちょっと、社会勉強でもしに行きませんか?」
カルネリスの町の門は、常時開いているようだった。門番こそいたが、入る者を拒むようなことはないようだ。7人は王都からの旅行者であることを告げるだけで町に入ることが許可された。
7人は荷物を部屋に置き、リアのもとに集合することになったのだった。
リアの部屋では、同室のカイラ、ケニー、アレスが談笑をしていた。
「本当に良かったのですか?リア様。俺たちと同じ大部屋だなんて。」
リアは笑って言った。
「ああ、もちろん。王族だからって特別扱いはいらないよ。あくまで開拓団の上司ってことだけわかっていてもらえれば、他は気にしないでいい。それとも、上司と一緒に泊まるのはまずかったか?」
「ああいえ、そういうわけでは…!むしろいろいろなお話ができそうで感謝しております。」
「そりゃよかった。…それにしても、カルネリスって普通の町だよな?王都に雰囲気は似てにぎやかだし。」
「ここは、そうですね。東地区なので…。」カイラの言う、『東地区』を知る者はいないようだった。全員が首をかしげる。
「東?じゃあ西があるの?」ヒナが聞く。カイラはうなずいた。
「ああ。カルネリスの大きな特徴は、町民の貧富の差だ。侯爵レベルの貴族もいれば、家どころか、その日の職にも困る者もいる。その差は、街の景観にも表れるのさ。」
「…ということは、東の反対、西地区は…」
カイラが少し怖い顔をしてうなずく。
「はい。いわゆるスラム。貧民街です。」
カイラの話では、カルネリスの東地区は街の7割程度を占める大規模な土地だが、西側3割は、西地区と呼ばれ、貧民街、スラムであるという。職を失い、財をもたないものが住み、不衛生で治安も悪い場所らしい。
「土地の広さに差がある反面、多いのはむしろ貧民。だから、西地区は人であふれかえってます。」
シャリスが肩を震わせる。
「それって、暴動とか、起きないの?」シャリスの質問の通り、過半数以上を貧民が占めているのであれば、暴動が起きてもおかしくはない。しかし…
「東地区は、少なくとも治安はよかったな。町の人たちも怖がっている様子はなかった。あとかなり裕福な見た目の人が多かったな。」
リアの言葉にはカイラが反応する。
「そうなんです。今や中流階級すらもこの街にはいない。大富豪か貧民か、そんな街です。で、暴動についてですが、まず起きることはないでしょうね。」
「なぜ?人数が多いなら…」
「いや、無理だ。東地区と西地区には決定的な『壁』が存在する。」カイラは突然立ち上がった。
「リア様、この後予定はありますか?」
「いや、自由行動にして、物資集めをしようかと思ってたが…」
すると、カイラはニコッと笑って言った。
「ちょっと、社会勉強でもしに行きませんか?」
34
あなたにおすすめの小説
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~
松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。
なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。
生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。
しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。
二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。
婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
ドラゴネット興隆記
椎井瑛弥
ファンタジー
ある世界、ある時代、ある国で、一人の若者が領地を取り上げられ、誰も人が住まない僻地に新しい領地を与えられた。その領地をいかに発展させるか。周囲を巻き込みつつ、周囲に巻き込まれつつ、それなりに領地を大きくしていく。
ざまぁっぽく見えて、意外とほのぼのです。『新米エルフとぶらり旅』と世界観は共通していますが、違う時代、違う場所でのお話です。
『婚約破棄された聖女リリアナの庭には、ちょっと変わった来訪者しか来ません。』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
王都から少し離れた小高い丘の上。
そこには、聖女リリアナの庭と呼ばれる不思議な場所がある。
──けれど、誰もがたどり着けるわけではない。
恋するルミナ五歳、夢みるルーナ三歳。
ふたりはリリアナの庭で、今日もやさしい魔法を育てています。
この庭に来られるのは、心がちょっぴりさびしい人だけ。
まほうに傷ついた王子さま、眠ることでしか気持ちを伝えられない子、
そして──ほんとうは泣きたかった小さな精霊たち。
お姉ちゃんのルミナは、花を咲かせる明るい音楽のまほうつかい。
ちょっとだけ背伸びして、だいすきな人に恋をしています。
妹のルーナは、ねむねむ魔法で、夢の中を旅するやさしい子。
ときどき、だれかの心のなかで、静かに花を咲かせます。
ふたりのまほうは、まだ小さくて、でもあたたかい。
「だいすきって気持ちは、
きっと一番すてきなまほうなの──!」
風がふくたびに、花がひらき、恋がそっと実る。
これは、リリアナの庭で育つ、
小さなまほうつかいたちの恋と夢の物語です。
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
デブだからといって婚約破棄された伯爵令嬢、前世の記憶を駆使してダイエットする~自立しようと思っているのに気がついたら溺愛されてました~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
デブだからといって婚約破棄された伯爵令嬢エヴァンジェリンは、その直後に前世の記憶を思い出す。
かつてダイエットオタクだった記憶を頼りに伯爵領でダイエット。
ついでに魔法を極めて自立しちゃいます!
師匠の変人魔導師とケンカしたりイチャイチャしたりしながらのスローライフの筈がいろんなゴタゴタに巻き込まれたり。
痩せたからってよりを戻そうとする元婚約者から逃げるために偽装婚約してみたり。
波乱万丈な転生ライフです。
エブリスタにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる