元・聖女候補は不器用に恋を紡ぐ

透告ユキ

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神聖で普遍的な朝

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一時間にわたる被虐の時間が終わり、解放されたミシェルは修道士に両脇から支えられながらよろよろと立ち上がった。力みすぎた体はあちこちが痛みに軋み、鞭打たれた背中は熱を孕んで激しく痛んだ。

大窓の取り付けられた光差す廊下を、よろめきながら歩く。

神様。神様。神様。罪深き私達をお許しください。皆をお許しください。そうしたら、私も痛みを受けなくて済むでしょう……?

それとも、そんなことを考える私は甘えているのでしょうか。

神への問い掛けも祈りも、この時間の後はただ虚しく思えるだけだった。

眩しすぎる光に、顔を上げる。昼前の真白い光に、ミシェルの白いヴェールもその下の金の髪も儚げに透き通る。

しばし足を止めてぼんやりと窓から見える樹と目が痛くなるほどに明るい空を眺め、ミシェルはまた俯きがちに自室へと繋がる廊下を進んで行った。



「やべ、」

青年は、アンティーク調の錆びた双眼鏡を握ったまま顔を真逆に向けた。隣の運転席に煙草をふかす男に、気だるい声を投げて寄越す。

「ボス、見られた」
「ああ?」
「だぁから、見られたっつってんの」
「バカ野郎、この間抜け」

まだ半分残っている煙草を灰皿に押し付け、双眼鏡の青年に手を差し出す。青年は「ん」と短い反応を返して双眼鏡を手渡した。と、見る間に双眼鏡が青年の銀髪の頭を襲う。

「いって!」
「間抜け。煙草だろ」
「もうねえよ、パワハラくそ上司」

空になった煙草の箱を揺すって答え、双眼鏡を返された青年は頭を擦る。

「辞めてぇ……」
「ははっ」

ボスと呼ばれた男は日に焼けた顔に笑みを浮かべた。マフィアのような人相の顔に浮かんだのは、存外人好きのする、子供のような笑みだった。

「拾われた縁だ、全うしな」
「ああもう、くそ」

唇を尖らせ、銀髪の切り揃えた長めの髪を揺らして青年は顔を背ける。

「じゃなきゃ死ね」

少年じみた笑みから煙の代わりに軽やかに吐き出された言葉に、青年はただ黙って双眼鏡を覗いた。

視線の先には、木々に隠れてそびえ立つ白い奇妙な建物。十字架の取り付けられた屋根。教会に似ている。厳かに鐘が鳴った。ちょうど昼時のようだった。
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