詠み人知らず、言わずと知れて。

立花伊作

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さよならが待ってる。

あと幾つ。

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「もって後2年でしょう」

そう言われたのが数ヶ月前のこと。

まだそんなに生きていないあの子に、あと幾つか、という人生最後を叩きつけられることになった。

あと、2年。

それが、彼女の生きれる時間。

あの子には彼氏がいて、将来結婚を誓った愛しい人がいる。

彼も、その2年という年月を受け入れた。

「別れよ?」

彼女がそう切り出すと、彼は、

「別れない」

と言った。

「だって…」

私、死んじゃうんだよ?

2年後には、いなくなっちゃうんだよ。

私のことは忘れて、貴方には幸せな人生をこれからも歩んで欲しい。

こんなに私を好きになってくれた貴方だからこそ、泣いて欲しくない。

私と過ごした時間が募れば募るほど、私が死んだ後貴方が苦しい思いをする。

「僕は、いつか来る別れまで、君と歩いていきたいんだ。他の誰でもない君と」

別れて、悲しく苦しい思いをするのは、
彼なのに。

死んでしまう彼女ももちろんそうだろう。

想い人を残してこの世を去る。

こんなに苦しいことは無い。

けれど、人が死んで、より苦しい思いをするのは残された側の人だ。

思い出とか、恋しさとか、喪失感とか、
そういう情緒的な傷が残るから。

生きていれば、会いたくなる、話したくなる、触れたくなる、気持ちを、交わしたくなる。

でも、そう思う相手は、もう、この世にはいないのだから。


「僕は、君への愛が本物だと思っている。きっと、君をずっと好きでいると思うんだ。他の誰かを、君以上に好きになることは無いだろう……。だから、君がいつかいなくなってしまっても、僕が君との思い出でその先幸せになれるように、君の残りの時間を僕に下さい」

幸せの貯蓄。

「もし仮に、君の余生が長くなったら、その時僕はこの上ないくらいの喜びで泣いてしまうだろう。その時は、君には笑って僕を抱きしめて欲しい」

彼はそういった後、力強く彼女を抱きしめた。




2年後、彼女はその人生に幕を閉じることになった。

なかなかに呆気なく、奇跡なんて、
無慈悲な程に起こらなかった。


彼の些細な祈りも、神は聞き入れてくれなかったのか。




取り残された彼は、その後、誰とも付き合うことも、結婚することもなかった。


ただただ、たった一人の女性を愛し、
慈しみ、彼の最後の最期まで、
その愛を貫いたという。


「あぁ、聴こえるよ」


死んでしまった人間の、1番初めに忘れてしまうのは「声」だという。


「君の声が、聴こえる」


彼は彼女と過ごした愛おしい時間の、
音すらも忘れることなく、
その生涯を終えたという。

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感想 1

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みんなの感想(1件)

ゆく
2017.10.23 ゆく

そういえばこの作品は長く続いてますね

これからも頑張ってください

解除

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