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はじまりの唄

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なにも考えずただ歩いて。

時間が経つのも忘れて。

東京の街を徘徊する。

テンポのいい曲で足取りは軽く、
かつリズミカルに気軽に。

大きな荷物は持たず必要なものだけ持って。

街を見て、人を見て、
空を見て、思う。

こんな時間がずっと続けばいい。

頭を空っぽにして、
人に流されるまま、
本能のままに。

もともとなにも考えてない
空っぽの頭を
もっと空っぽにして。

音楽と街の音に耳を傾ける。

街の雑踏の中に、少し、
小鳥のさえずりなんかが聞こえたりして。

雑音が少しうるさくて、
でもそれもまた心地よくて。

新たな発見をしたりする。

あ、こんな所にお洒落なカフェがある。

あ、そこには小さな雑貨屋さん。

隠れて営業してるようなバーもあった。

3時過ぎに家を出て、
もうこんなに暗いんだなぁ。

あたたかくなってきているけれど、
やっぱり夜はまだ冷える。

春と呼ぶにはまだ寒過ぎる。

冬と呼ぶにはあたたか過ぎる。

僕が育ったあの街は、
まだ少し寒いだろうか。

東京の街は夜も明るい。

空を見ないと、
時間が分からない。

あの街は、夜と共に暗くなるから、
空を見なくても分かったのに。


ほんの少しの寂しさと、
ほんの少しの期待を胸に、
この街にやってきた。

僕は、なにか、変われるだろうか。

この街で。
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