117 / 148
届けたい想いがある
ミサンガ
しおりを挟む
その日は、
朝から怖い夢を見て、
気分がとても憂鬱だった。
一人ぼっちになる夢を見た。
愛する人に拒絶され、
大切な家族からも見捨てられ、
友人たちにも後ろ指を指される、
そうやって、一人ぼっちになっていく夢。
怖くて怖くて、
泣きたくて。
でも涙は不思議と出てこなくて、
涙を流さずに泣いた。
息苦しくて、夢から覚めた今でも、
恐怖が離れない。
足取りは重く、
歩き方を忘れたかのように足元がふらつく。
そんな思い気持ちのまま、
子供たちのところへと向かった。
子供たちが帰ってくるのを待っている間、
僕は震えを抑えるのに必死だった。
両腕を強く体に引き寄せ、
固まるように立っているのがやっとだった。
子供たちが帰ってきて、
いつものように、楽しそうに、
思い思いに遊び始める。
あの子は積み木、
その子は塗り絵、
たくさんの遊びをする中でも、
この子はミサンガ作りにはまっているようだ。
ピンクの色の三つの糸を
一生懸命に三つ編みにして、
途中ちょっと手こずって、
悩んだりしながら一本一本を編んでいって、
一つのミサンガに仕上げていく。
そういえば、
ミサンガの始めに結び目を作るのだけれど、
その作業が出来ないからと、
やってやってとせがまれたっけ。
机に固定させるからと、
テープを貼ってほしいとも言われた。
あんなに真剣に、
何を思って作っているのだろう。
他の子とも遊んで、一息ついていたころ、
その子が僕に近寄ってきた。
「どうしたの?」
「見て、ミサンガ出来たの。」
ところどころ三つ編みが崩れた
ピンク色のミサンガ。
不器用なようで美しく完成されたそれは、
とてもこの子らしい代物となっていた。
「へぇ、綺麗に出来たね。」
「名札。」
「…ん?名札?これ?」
僕が首から下げてる
僕の名前が書いてある名札。
それを引っ張って、
そのピンクのミサンガを括りつけた。
初めは、よく、分からなかった。
「…?」
「……。」
照れたように一歩一歩退く仕草が可愛らしくて、いじらしくて、
ちょっといじめてみたくなってしまった。
「これ、くれるの?」
その子は黙って、首を縦に振った。
「ありがとう。嬉しいよ。」
そうやって僕が微笑むと、
その子はニコニコしながら元いた場所へと戻っていった。
なんでくれたのかは分からない。
来た時から元気の無い僕に気づいて、
元気づけようとしてくれたのだろうか。
勘ぐりすぎだとは思う。
でもそう思うことで、
僕は救われたと感じることが出来た。
ありがとう。
本当に、嬉しかったんだよ。
括りつけられただけのピンクのミサンガを、僕はリボンにして名札に結び直した。
このミサンガには、
あの子の何が込められているのだろう。
思い、夢、希望、情、なんでもいい。
それがどんなものであったとしても、
このミサンガは僕の名札に付けられたものだ。
あの子が、僕の名札につけたもの。
それ以上でもなく、以下でもない。
ただ、それだけのもの。
特別な何かはなくていい。
ただ、僕にこのミサンガをくれたあの子がいたこと。
その証となるなら。
そのミサンガが切れた時、
一体何が起こるのだろう。
あの子の何かが、変わるのだろうか。
僕は、一人で密かに、
その時を待ち遠しく思う。
それは密かに、誇らしく。
一人じゃなかったという、
僕の囁かなお守りなのだ。
朝から怖い夢を見て、
気分がとても憂鬱だった。
一人ぼっちになる夢を見た。
愛する人に拒絶され、
大切な家族からも見捨てられ、
友人たちにも後ろ指を指される、
そうやって、一人ぼっちになっていく夢。
怖くて怖くて、
泣きたくて。
でも涙は不思議と出てこなくて、
涙を流さずに泣いた。
息苦しくて、夢から覚めた今でも、
恐怖が離れない。
足取りは重く、
歩き方を忘れたかのように足元がふらつく。
そんな思い気持ちのまま、
子供たちのところへと向かった。
子供たちが帰ってくるのを待っている間、
僕は震えを抑えるのに必死だった。
両腕を強く体に引き寄せ、
固まるように立っているのがやっとだった。
子供たちが帰ってきて、
いつものように、楽しそうに、
思い思いに遊び始める。
あの子は積み木、
その子は塗り絵、
たくさんの遊びをする中でも、
この子はミサンガ作りにはまっているようだ。
ピンクの色の三つの糸を
一生懸命に三つ編みにして、
途中ちょっと手こずって、
悩んだりしながら一本一本を編んでいって、
一つのミサンガに仕上げていく。
そういえば、
ミサンガの始めに結び目を作るのだけれど、
その作業が出来ないからと、
やってやってとせがまれたっけ。
机に固定させるからと、
テープを貼ってほしいとも言われた。
あんなに真剣に、
何を思って作っているのだろう。
他の子とも遊んで、一息ついていたころ、
その子が僕に近寄ってきた。
「どうしたの?」
「見て、ミサンガ出来たの。」
ところどころ三つ編みが崩れた
ピンク色のミサンガ。
不器用なようで美しく完成されたそれは、
とてもこの子らしい代物となっていた。
「へぇ、綺麗に出来たね。」
「名札。」
「…ん?名札?これ?」
僕が首から下げてる
僕の名前が書いてある名札。
それを引っ張って、
そのピンクのミサンガを括りつけた。
初めは、よく、分からなかった。
「…?」
「……。」
照れたように一歩一歩退く仕草が可愛らしくて、いじらしくて、
ちょっといじめてみたくなってしまった。
「これ、くれるの?」
その子は黙って、首を縦に振った。
「ありがとう。嬉しいよ。」
そうやって僕が微笑むと、
その子はニコニコしながら元いた場所へと戻っていった。
なんでくれたのかは分からない。
来た時から元気の無い僕に気づいて、
元気づけようとしてくれたのだろうか。
勘ぐりすぎだとは思う。
でもそう思うことで、
僕は救われたと感じることが出来た。
ありがとう。
本当に、嬉しかったんだよ。
括りつけられただけのピンクのミサンガを、僕はリボンにして名札に結び直した。
このミサンガには、
あの子の何が込められているのだろう。
思い、夢、希望、情、なんでもいい。
それがどんなものであったとしても、
このミサンガは僕の名札に付けられたものだ。
あの子が、僕の名札につけたもの。
それ以上でもなく、以下でもない。
ただ、それだけのもの。
特別な何かはなくていい。
ただ、僕にこのミサンガをくれたあの子がいたこと。
その証となるなら。
そのミサンガが切れた時、
一体何が起こるのだろう。
あの子の何かが、変わるのだろうか。
僕は、一人で密かに、
その時を待ち遠しく思う。
それは密かに、誇らしく。
一人じゃなかったという、
僕の囁かなお守りなのだ。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる