忘却の海辺

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ロゲルト・オッリ

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 彼らが鉛色の海に漕ぎ出す頃には、人々は既に死んでいるだろう。
 エファイマの小島からやってきたその蛮族の一団は、今日死んでいった57人の村人たちのことなど覚えていなかったのだろう。野蛮な船の甲板を松明の火がちろちろと舐めている。彼らは同胞にその村を捧げ、今ごろは満足感と、少しの思い出とともに暗い星々を眺めているだろう。やがて意気揚々と蜂蜜酒と干し肉を散らかして宴を開くだろう。鷲と星座と祖霊に捧げる歌を歌い、そして一人の怪物でもあった英雄のことを思い出し、幻獣の血肉になる彼に敬意を表するだろう。彼がいなくなった後の抗争のことを考えて苦い顔をするかもしれないが、やがて宴と祭礼、そして小島で待つ女がその憂鬱をかき消すのだろう。
 冬の夜の黒い波は砂浜の首を絞めるように覆いかぶさって、彼らが去った村の末路を暗示するだろう。雪はこの夜降らなかった。赤い斑点が残る浜辺から遠ざかり、ヒノクサリグサが生い茂る小高い土手を超えたあたりで瓦礫の山が見つかるだろう。以前小さな家が建っていた場所だが、美しい思い出は見つからなかっただろう。蛮族たちが突如としてこの村にやってきて、ほんの数時間のうちにすべてを奪い去ってしまったからだ。
 ウルバの教会は崩れ去り、むき出しの骨組みに失望した神は引っ越しを済ませていただろう。廃墟になった村の倉庫には腐った骸骨が残るだけだろう。そして血の匂いに誘われて、もうじき山向こうに住むひょろ長い尾の病んだワイバーンが飛んでくる。折り重なった死体の山に目を付ける獣には困らないだろう。連なった丘の向こうのカトブレパスは無関心に草を食んでいるだろう。この村には幻獣が多かった。エファイマの蛮族は、死後幻獣に食われれば幻獣と一体になり永遠に生きられると思っているから、襲われた原因はそれだったのだろう。空っぽになった酒場の隅で、幽霊が哀れな男の歌を歌っていただろう。我が子を抱きしめて死んでいる誰かがいただろう。充血した月は夜を彷徨って、人知れずまた海に沈んだのだろう。風は海砂を巻き上げて、やがてこの地を忘却に包むだろう。
 そうして薄汚れた男が一人、忘れられた砂浜で起き上がるだろう。彼は周囲を見回し、自分を縛っていた忌まわしい縄が潮風に擦り切れているのを見るだろう。わが身を守ってきた斧が波に打ち据えられているのを見て、変色し冷えた体でよろめくように歩き出すだろう。血を吸い込んで枯れた花を見て舌打ちをするだろう 。転がる腕やひしゃげた農具を見て、彼はこの先に自分が得られるものはないと悟ることだろう。男は砂浜に倒れこんで、一晩か二晩、かつての仲間の名を呟きながら力尽きた獣のように眠るだろう。自分が死んだと思われているのに気付き、嘆いていたのではないだろうか。しかし死にはしなかった。彼は明日も目覚め、その時には村のわずかな生き残りにも悪夢をもたらすことに決めていただろう。彼は古びた斧を手に取り、再び人を殺そうとするだろう。彼は罪悪感を抱くこともなく、ただ自分が生きるために無抵抗のものを傷つけ続けるだろう。
 しかし夜は明けるものだ。いずれ夜明け前の最も暗い時間に、彼の罪を暴く者が現れることになる。それが誰なのかは言えないが、それは現れた。そして彼は半ば諦めたような気持ちでその者を待ちわびるだろう。
 その数刻の後、彼はかつての仲間の手によって殺されることになるだろう。しかしその顔には恐怖はない。彼は死の間際まで笑い続け、自分の体が失われる感覚に身を震わせることだろう。彼の意識は途切れ、体は二度と動かずに冷たいままとなるが、それでも魂だけは満足して消えていくのだろう。
 やがて浜辺に朝日が昇り、死んだ男の体を照らし出すはずだ。乾いた血の跡は黒々とした砂に呑み込まれていく。錆びついた刃は朝の光を受けて輝く。かつてそこにあった命の名残は、いつかと同じように何も残さず消え去る。しかしそれを忘れないものがただ一人存在し、彼のことを語り継ぐだろう。
 では、話を聞いてほしい。自らが壊した村を守るために死んだロゲルト・オッリと、若かったころの私の話だ。
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