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英雄は死なず
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ロゲルト・オッリはあの夜、自らの墓標となる地へ運ばれた。敵を前に戦った体は毒に侵され、髪の毛から肌の隅々まで腐敗の緑色を帯びていた。生きたまま地獄に落ちた魂のように、傷口には虫が群がっていた。エファイマの者でこれを悲しまない者は居なかったはずだ。彼らはこの勇士に敬意を示し、せめて華々しい最期を飾らせようと、新しい地を彼に捧げることを決めた。私の村が選ばれたのだ。ことは慎重に運ばれた。勇士に相応しい最期を遂げるために準備されたのだ。エファイマの離れ小島に住む蛮族たちは夕暮れに旅立ち、真夜中には村を滅ぼし終えていた。彼らは英雄のための儀式を行った。満月が血に染まる中、疵と威厳に満ちた皮の鎧をはがし、代わりに聖なる衣をまとわせて、魔術師の髪と蜘蛛の糸で編まれた縄で彼を縛り上げた。獣の香に火をつければやがて幻獣が死体を貪り、ロゲルトはその血肉となって永遠に生き続けるはずだった。エファイマの蛮族たちはつつがなく儀式を執り行った。彼らにとっての英雄はこのように埋葬されるべきだったのだが、そうはならなかった。
彼らの誤算はいくつかある。真っ先に挙げられるのは、その英雄が生きたまま目を覚ましてしまったことだろう。しかし死んでいても同じことだろう。確かに、香の匂いに誘われてワイバーンが彼を見つけたかもしれない。だがそれは村の死体の山を片付けた後のことで、ロゲルトの屍には一足先に蒼い虫がひっついているだろう。それに村の近くのワイバーンはもの病みだった。それに喰われたとして、彼の魂が永遠に生き続けたか怪しいものだ。ともかく、この男は生き延びてしまった。
ロゲルトが忘却の海辺で目を覚ましたのは夜明け前だろう。彼は着慣れた皮鎧ではなく、幻獣に捧げるための一枚布を着せられて海岸に横たわっているはずだ。すぐ傍で獣の匂いが染み着いた枯草のかたまりが燃え、この地に巣食う幻獣たちを呼び寄せようと煙を天高く昇らせている。彼が振り回していた斧が波打ち際で凍えている。その柄には誰かの血と肉片に砂がこびりつき、月光を浴びて青白く輝いていたことだろう。
その日ロゲルトの傍にあったのは、燃えかすと濡れた斧、ほどけた縄、あとは肌寒さぐらいのものだろう。体にまとわりつく獣の匂いに気付いて、最初彼は不思議に思ったことだろう。いったい何が起こっているのか、とな。しかし起き上がろうと目の前に手を伸ばしたあたりでだんだんと気付くに違いない。彼も全くの馬鹿ではなかった。彼が鎧をつけていないことや、辺りは静かで波の音だけが聞こえること。つい先ほどまで聞こえていたはずの仲間たちの声や、彼らが死んでいく音がまったくしないことなどから、なにかまずいことが起こったと考える。そういう時に彼はまず自分の手を見る癖があった。次は足や腹、胸や首に触れるだろう。最後に顔を撫でた時、彼は額から頬にかけて斜めに入った深い切り傷に気付くだろう。それは次第に塞がっていくが、そのときはまだ膿んだような液体をにじませていただろう。
やがて彼は自らが生死の境を彷徨っていたことを思い出すだろう。重く感じる斧を引きずりながら、彼は海風の和らぐ場所を探して村の方へ向かう。彼は廃墟と化した私の村を視界に捉え、この地に仲間が来ていたことに気付くだろう。そしてまた、なぜ自分はこの村を襲っていないのかと疑問に思う。ロゲルトは原因を探るため、海岸や土手の風景を思い出そうとするに違いない。野蛮だが優れた戦士だった彼は、敵の動きや癖を見抜いて斧を叩きつける時のように、すぐにその原因に思い当たるだろう。彼はよろめきながら村の方にやってくる。私が死体の山を見て呆然としていた時だ。
彼らの誤算はいくつかある。真っ先に挙げられるのは、その英雄が生きたまま目を覚ましてしまったことだろう。しかし死んでいても同じことだろう。確かに、香の匂いに誘われてワイバーンが彼を見つけたかもしれない。だがそれは村の死体の山を片付けた後のことで、ロゲルトの屍には一足先に蒼い虫がひっついているだろう。それに村の近くのワイバーンはもの病みだった。それに喰われたとして、彼の魂が永遠に生き続けたか怪しいものだ。ともかく、この男は生き延びてしまった。
ロゲルトが忘却の海辺で目を覚ましたのは夜明け前だろう。彼は着慣れた皮鎧ではなく、幻獣に捧げるための一枚布を着せられて海岸に横たわっているはずだ。すぐ傍で獣の匂いが染み着いた枯草のかたまりが燃え、この地に巣食う幻獣たちを呼び寄せようと煙を天高く昇らせている。彼が振り回していた斧が波打ち際で凍えている。その柄には誰かの血と肉片に砂がこびりつき、月光を浴びて青白く輝いていたことだろう。
その日ロゲルトの傍にあったのは、燃えかすと濡れた斧、ほどけた縄、あとは肌寒さぐらいのものだろう。体にまとわりつく獣の匂いに気付いて、最初彼は不思議に思ったことだろう。いったい何が起こっているのか、とな。しかし起き上がろうと目の前に手を伸ばしたあたりでだんだんと気付くに違いない。彼も全くの馬鹿ではなかった。彼が鎧をつけていないことや、辺りは静かで波の音だけが聞こえること。つい先ほどまで聞こえていたはずの仲間たちの声や、彼らが死んでいく音がまったくしないことなどから、なにかまずいことが起こったと考える。そういう時に彼はまず自分の手を見る癖があった。次は足や腹、胸や首に触れるだろう。最後に顔を撫でた時、彼は額から頬にかけて斜めに入った深い切り傷に気付くだろう。それは次第に塞がっていくが、そのときはまだ膿んだような液体をにじませていただろう。
やがて彼は自らが生死の境を彷徨っていたことを思い出すだろう。重く感じる斧を引きずりながら、彼は海風の和らぐ場所を探して村の方へ向かう。彼は廃墟と化した私の村を視界に捉え、この地に仲間が来ていたことに気付くだろう。そしてまた、なぜ自分はこの村を襲っていないのかと疑問に思う。ロゲルトは原因を探るため、海岸や土手の風景を思い出そうとするに違いない。野蛮だが優れた戦士だった彼は、敵の動きや癖を見抜いて斧を叩きつける時のように、すぐにその原因に思い当たるだろう。彼はよろめきながら村の方にやってくる。私が死体の山を見て呆然としていた時だ。
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