忘却の海辺

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村の議会

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 嫌な雪だった。粗い雪がこの村に降り注ぎ、目につくものを全て吸い取ろうとしていた。地面を覆いつくしては生気を吸い取り、堅い葉をつける木々を包み込み、いずれあの森を飲み込んでしまうのではないかと思った。粉雪は廃材を削り取り、そこに宿っていた魂までも消し去ってしまう。空を覆う雲から落ちてくる白い雨が、滅んだ村に死に化粧を施している。私は薄く心許ない屋根の下で、微かな光が丘の向こうから差してくるのを待っていた。朝が来ても気温は上がらなかった。夜が明けると、彼の暖炉に火の気配はなくなっているだろう。ロゲルトは荒れ果てた小屋の戸口に立ち、激しく厳しい風に煽られ、雪が渦を巻いて舞うのを眺めている。この地の雪が雪が彼の魂を蝕んでいく。粗末な煙突と、小さな暖炉。薄い衣と干し肉、瘦せ細った幾つかの野菜。彼は寒さを感じていないようにも見える。彼の肌には傷痕があり、それらは古かったり新しかったりする。彼は雪を眺めている。何も語らず、何も求めず、ただここで生きていた。彼は今やこの村の長であり、また同時に墓守でもあった。ロゲルトは時々静かに目を閉じる。その瞼の裏で、何を考えているのだろう。
 私は肌を貪るような雪の中で、失われた村人たちの家々を一つずつ数え上げていった。彼を許してはならないこと、私がこの村を受け継ぐべきことを確かめようと考えていた。村人たちが使っていた家はどれも小さく縮み、そして崩れかけている。誰かの声が聞こえ、また誰かの影が見え隠れする。死者たちはどこにいるだろう?  彼らは死んだ後も、彼らの家に留まり続けている。透き通った青白い顔で、村長が大きな日時計を見つめている。二の腕に膨らんだ筋肉を持つ木こりが、熱い火事場で目を焼かれた鍛冶屋が、痩せぎすで薄ら笑いを浮かべた商人がいる。その妻も一緒だ。風の音に交じって、彼らの笑い声が聞こえる。あれは猟師の声だ。羊飼いも石工もいる。
 彼らの話し声が聞こえる。
「もうすぐ冬が来る。今年の雪はきっとひどいだろうよ。森の木が倒れるし、畑の作物は枯れてしまうだろう」
「これは、この村ができた時に作られたものだ。いつまで残るもんかねえ」
 農夫は何かを思い出したように口を開いた。
「まだ枯れた草が残ってるんだ。あれを取らなくちゃいけねえ。雪が降ればもうじき春だ。そしたら、また種まきをする。もっと新しい畑を作るんだ」
「なら、鋤を作りなおさなけりゃならんな。前のよりもいいやつを作ろうじゃないか」
「おい、いい小麦の種は手に入ったのかい?」
 彼らは口々に自分の意見を言って、遠くの丘を見た。その丘は灰色に染まっており、ところどころに雪が積もり始めている。ふいに冷たい風が吹いた。男は自分の手を擦り合わせ、息を吹きかけた。
「そうさなあ、俺はあそこの切り株を掘り起こしたいんだが」
「いや、ひとまず村を直そう。この分じゃ隙間風がひどいぞ。もうボロボロだ。家からだ、家を直すんだよ」
男たちは口々に不満を言い始める。女の一人がそれを宥めようと声を上げる。
「まあまあ、あんたがた。そんなことを言わずに。あそこを見てご覧なさいな」
男たちは一斉にそちらを見る。彼女たちは微笑んでいる。
「ほら、見て御覧なさい。立派な教会でしょう。あれがある限り、あたしたちはまだ大丈夫です」
 しかし教会の鐘は鳴らない。あたりは雲に覆われ、暗くなっていた。丘の光は望めそうもなかった。彼らは沈黙したまま、ただ白く塗りつぶされていく。私は冷たい空気を大きく吸う。肺が痛んだが、息を止めることはしなかった。不意に、そうだった、と誰かが言った。
「ここは死んでいるんだ。もう誰も帰っては来られないんだ」
「いや、一人だけここにいるじゃない。まだ小さな子供よ。かわいそうに、どうしてあの子が残るのかねえ」
 猟師は私を見つけて、憐れむような調子で話した。
「坊やはどうしてここに来たんだ?」
 羊飼いが名残惜しそうに言った。
「いいか。ここにはもう、誰もいないんだ。みんなすぐだ。もうすぐだ」
 村人たちが白く塗りつぶされていく。風が吹きすさぶたびに、家の一部がまだ剥がれ落ちて、その下から朽ちた骨が現れた。かつて彼らがここに暮らしていたという証はほとんど残っていなかった。私は彼らに語りかけようと、何度も唇を動かそうとした。しかし言葉が出てこなかったし、声すらも聞こえなかった。彼らはもういないのだ。私は彼らを呼ぼうとしたが、喉からは掠れた音が漏れただけだった。彼らは皆死んでしまった。私の目の前にいるのは死者たちなのだ。私は彼らに声をかけようとしたが無駄だと悟った。死者の魂は肉体を離れ、もはや生きる者たちの領域に留まることはない。雪が彼らを連れ去ってゆく。私は一人になってしまった。
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