忘却の海辺

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 雪が厚く積もっていく。足音はその隙間に吸い込まれ、辺りは息苦しくなるような静けさに包まれているだろう。ロゲルトの眼には黒く歪んだ教会の跡が見えている。崩れかけた教会堂に、煤だらけのステンドグラスの粉塵に、触れられては消える赤黒い絨毯に、銀と緑の小さな雪が降り注ぐ。彼は空からの繻子に覆われる村を打ちひしがれて歩き回る。彼は雪の底が広くなったのに気付くだろう。獣の群れのように平和な集落に降り立ち、廃墟と荒廃を残した日のことを思い出しているだろう。藁葺き屋根や木造の壁が炎に包まれる光景を楽しみながら、破壊を満喫していた頃の自分を思い出すだろう。彼は燃える村の中を歩いている。焼け死ぬ人々を踏みつけて、悲鳴を上げている女を犯し、泣き叫ぶ子供を蹴りつける。脳漿が汚れた土に混じって泥の塊になれば、エファイマの蛮族たちは声をあげて笑う。何もかもがなくなるだろう。彼もまた愉快そうに笑って、それからまた別の家へと向かう。彼らが歩くたび、死体が積み重なっていく。それは彼の少年時代の記憶だ。ロゲルトの記憶の中で、世界は常に燃えていた。心の中に炎が渦巻いていた。耳の奥では火の燃える音がした。その音は次第に大きくなり、やがて現実のものとなるだろう。ロゲルト・オッリはその時小屋の戸口を出て、雪の中に立ち尽くしているだろう。彼は少しずつ前へ進みながら、焼き尽くされた後の、雪の降りしきる廃墟を眺めている。捻じれて黒ずんだ教会跡の先には、松明の明かりに照らされなかった様々な墓が立ち並んでいるだろう。
 栄光も名誉も灰となって消えた。ロゲルトにあったのはこの惨めな場所だけだ。彼は墓に刻まれた文字を読めはしないだろう。彼はそもそも、墓地というものを理解することさえできないだろう。それでも彼はそこに立っている。燃え尽きた教会堂に縋りつくように、彼は目を閉じて、瞼の裏にある闇を見つめ続けるだろう。彼は永遠を手に入れようとしている。彼が手に入れられるものは、それしかないからだ。雪は降り止まず、彼の表情も覆い隠していくだろう。この村のどこか別の場所に、一人の少年がいる。私と同じ名前で、しかし幼く、剣の握り方も知らない子供が。彼はもう二度と両親に会うことはできない。しかし彼が失ったものはそれだけではない。大切なものを全て失ってしまったし、いずれその記憶さえも雪に埋もれてしまうかもしれない。雪は静かに積もっている。それはあらゆるものを覆い隠し、白い衣を翻らせては全てを無に帰してしまうだろう。幽霊たちは体の重みを感じてはいない。彼らの体は軽すぎるから、ただ宙に浮かび、それに気づいてはゆっくりと落ちていくだろう。瓦礫に残る湿った木々は、もう何物にも生まれ変わることがない。
 村人たちは眠ることができないので、仕方なく白く凍りついた死の国へと旅立つ準備をしていた。ロゲルトは一人、寒々とした荒涼とした村の中で、自分が壊した命の跡に囲まれていた。私は廃教会で彼の姿を見る。忘却の海辺へ続く足跡が、一人の蛮族がうずくまる墓地から点々と続いている。
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