忘却の海辺

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魂の習い

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 誰も死ぬことはできない。誰もこの村から出ることを許されてはいない。私は死者たちの足跡を追おうとするが、その先でロゲルトが蹲っていることを思い出し立ち止まるだろう。彼は雪の上に膝をつき、地面に爪を立てては、雪の中に埋まった何かを探し求めている。私はあろうことか彼を憐れみ、そっと踵を返してその場を去る。雪を踏みしめる音だけが響いていた。私の背後では、雪に覆われた古い村が死んでいく音がする。私は振り返らない。振り返ったとしてもそこにはもう何もないのだ。私は両親の名前を呟いてみるだろう。そしてすぐに後悔し、唇を引き結ぶ。あの村はもう、どこにもない。その夜はノックの音が聞こえてきた。
 ロゲルトはその晩、躊躇うような口調で私に話しかけてきた。
「この村の人々は、死後どこに行ったのだろう」
 私はナイフを研いでいた。しばらく考えた後に答えようとしたが、喉から出たのは乾いた吐息だけだった。彼は少しだけ黙っていたが、やがて独り言のように、俺の故郷とは何もかもが違うようだ、と言ったきり口を閉ざしてしまった。その声は低く沈んでいた。時が引き伸ばされていく。
「ワイバーンの腹の中だ」
 私はようやくこう答えた。ロゲルトが顔を上げる気配がしたが、私はじっと俯いたまま、足元に視線を落としていた。何も考えないようにしていた。彼は長い溜息をついて、それから口を開いた。そうか、と彼は静かに言った。それ以上何も言わなかった。私も何を言えばいいのか分からないまま、しばらくの間沈黙が続いた。その夜の夢には、暗い空から降る雪と、教会の尖塔の幻が見えた。そして最後に、村の人々が現れた。彼らは私の目の前にいた。みんな笑顔を浮かべていたが、まるで見知らぬ人間のように思えた。私が手を伸ばした瞬間、人違いに気付いたかのように全員が消えてしまった。彼らは私が死ぬのを待っていた。
 雪は止むことなく降り続いて、埋められることのなかった人々の目から墓標を隠しているようだった。彼は夜中になると私の小屋に入り込んできた。私は拒まなかった。億劫に思っていたから、彼のために扉を開けることはしなかったが。外に出ることもなく、少ない食料で食い繋ぐとき、私たちは窓辺に腰かけて、暗闇の中で話をすることもあったし、ただぼんやりと天井を見上げていることもあった。あの死者たちを眠らせてやろう。彼はそう考えるようになっていたのだと思う。当時もなんとなく分かっていた。しかし、私にとってあれほどの欺瞞はなかった。ロゲルトにこう伝えた。
「あれは墓だ。エファイマの蛮族が来るまで、村人たちは代々あの石の下で眠っていた」
「魂はどうなる。石の下に閉じ込められるのか?」
 彼の問いに対する答えは私にも分からなかった。以前、あの場所に留まって、この村を永遠に見守り続けるのだと聞かされたような記憶はある。村長からではなかったか。しかし答えてはいけないような気がして、私は彼の言葉を無視することに決めた。
「石の下で眠っていた。だが、それももう終わりだ。灰となって吹き飛んだ死者のためにできることは、もうお前にはない」
 ロゲルトの瞳は時折、雪が降っているはずの外に向けられたが、その奥にある感情を読み取ることはできなかった。彼はただ、村人たちの墓がどうなっているかを想像し続けていた。雪に閉ざされて、墓石さえも見えなくなっているのではないか。
「墓というのは、どう作るのだろう」
 彼はそう呟いた。私は腹が立ち、また聞こえないふりをしてナイフを見つめた。気づかぬ内に切った親指から、丸く膨らんだ血が滲んでいた。
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