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乾くもの
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騎士団長は机の上で手を組み、椅子に深く座りなおした。
「まあ、そんなものだ。何が残るかは分からない。目を掛けていた騎士が死ぬこともある。いつまでも忘れまいとしていたことも、どれだけ輝いていた瞬間も、時の流れの中で次第に色を失っていく」
騎士団長は少し寂しそうに見える笑みを浮かべながら、部下たちにそう語った。若き騎士たちは真剣な眼差しで耳を傾けるだろう。彼は部下たちの目をしっかりと見つめ、静かに語り続けた。彼の人生は確かに、剣と共にあった。彼の鎧には幾多もの戦友の血と涙があった。だが、そのことは語ろうとしない。旅の途中に思い出すことはあるだろう。しかし四人の騎士たちと人生の全てを分かち合うことはできないし、その夥しい量の液体もほとんどが時の流れに乾き、また凍り付いてしまう。団長は少し窓際に引いてある、華美ではないが確かに品のある椅子を見つめた。いや、彼はもっと違うものを見ていたのかもしれない。その椅子の近くにある窓だろうか。窓越しに重なって見える遠い過去の出来事だろうか。騎士団長の言葉を聞いているうちに、いつしか彼の部下たちも窓の外を眺め始めていた。彼らの瞳は悲しそうだったが、その内から優しさが溢れ出してくるようでもあった。
「雪はまだ降りそうですね、隊長」
若い騎士の一人が言った。明るい茶色の短髪が乱れ、そこから冷えた若々しい汗と枯れた木々、そして紅茶の匂いがする。隊長は外を眺める騎士団長の後ろ姿を見ながら、ゆっくりと首肯した。
「雪ってきれいですよね。白くて、冷たくて……」
女騎士が言った。中堅の騎士は眉を顰め、髭のうっすら残った口を開く。
「雪は嫌いだよ、俺は。寒くて仕方がない。それに、あいつらはすぐに溶けて消えてしまう。何も残さないんだ。何もかもが無意味に思えてくるよ」
彼女はそれを聞き、男の方を向いて微笑んで見せた。
「あなたらしい考え方ですね。でも、私は好き。遠い星が綺麗に見えるところも、雪も、冷たい空気も、澄み渡っていて、透き通っているところも」
男はため息をつく。隊長は二人を軽く小突き、騎士団長に退室前の挨拶をした。若い騎士は苦笑している。四人を見送りながら、彼はこう考えている。私は多くのものを失い、そして得た。やがてこの職を辞し、遍歴の旅の半ばで朽ち果てることだろう。それで構わないのだ。そうなれば再び子供に戻ることができるのだから。
緋色のコートの肩回りには、金糸の刺繡に交じっていくつもの雪の結晶がついているだろう。既にあの廃墟さえ存在しないけれど、彼はそれを今でも鮮明に見ている。心の中では、今も昔も変わらない姿で、薄汚れた格好の誰かがそこにいる。
そして、雪はまた降ってくる。あの白い廃墟にだけ、静かに音もなく。
「まあ、そんなものだ。何が残るかは分からない。目を掛けていた騎士が死ぬこともある。いつまでも忘れまいとしていたことも、どれだけ輝いていた瞬間も、時の流れの中で次第に色を失っていく」
騎士団長は少し寂しそうに見える笑みを浮かべながら、部下たちにそう語った。若き騎士たちは真剣な眼差しで耳を傾けるだろう。彼は部下たちの目をしっかりと見つめ、静かに語り続けた。彼の人生は確かに、剣と共にあった。彼の鎧には幾多もの戦友の血と涙があった。だが、そのことは語ろうとしない。旅の途中に思い出すことはあるだろう。しかし四人の騎士たちと人生の全てを分かち合うことはできないし、その夥しい量の液体もほとんどが時の流れに乾き、また凍り付いてしまう。団長は少し窓際に引いてある、華美ではないが確かに品のある椅子を見つめた。いや、彼はもっと違うものを見ていたのかもしれない。その椅子の近くにある窓だろうか。窓越しに重なって見える遠い過去の出来事だろうか。騎士団長の言葉を聞いているうちに、いつしか彼の部下たちも窓の外を眺め始めていた。彼らの瞳は悲しそうだったが、その内から優しさが溢れ出してくるようでもあった。
「雪はまだ降りそうですね、隊長」
若い騎士の一人が言った。明るい茶色の短髪が乱れ、そこから冷えた若々しい汗と枯れた木々、そして紅茶の匂いがする。隊長は外を眺める騎士団長の後ろ姿を見ながら、ゆっくりと首肯した。
「雪ってきれいですよね。白くて、冷たくて……」
女騎士が言った。中堅の騎士は眉を顰め、髭のうっすら残った口を開く。
「雪は嫌いだよ、俺は。寒くて仕方がない。それに、あいつらはすぐに溶けて消えてしまう。何も残さないんだ。何もかもが無意味に思えてくるよ」
彼女はそれを聞き、男の方を向いて微笑んで見せた。
「あなたらしい考え方ですね。でも、私は好き。遠い星が綺麗に見えるところも、雪も、冷たい空気も、澄み渡っていて、透き通っているところも」
男はため息をつく。隊長は二人を軽く小突き、騎士団長に退室前の挨拶をした。若い騎士は苦笑している。四人を見送りながら、彼はこう考えている。私は多くのものを失い、そして得た。やがてこの職を辞し、遍歴の旅の半ばで朽ち果てることだろう。それで構わないのだ。そうなれば再び子供に戻ることができるのだから。
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そして、雪はまた降ってくる。あの白い廃墟にだけ、静かに音もなく。
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