忘却の海辺

da8

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  あの村はいつも白いままだ。蛮族たちが来た後の夏を私は想像することができない。誰かと話をするまでは、ある年のある季節、その中のある天気から決して逃れられないだろうと思っていた。この呪縛がうまく解けるといいのだが、詮無いことだ。郷愁がいい思い出ばかりを選別して、他のものが入り込む隙間の無いように、疲れた空気を入れて膨らませていた。特別に蒼い虫を育てようと思った理由はない。今思えば、他にも虫は至る所にいた。釣った魚の身の中や、一角兎の皮の下から這い出てくる寄生虫がうようよと蠢いていて、腹の足しになるならと私たちはそれも焼き殺して胃の中に入れた。歯や唇に触れるたび、足だった部分や尻だった部分が崩れていったのを覚えている。口の中で弾けるように潰れると、奴らが貪ってきた内臓の臭いが鼻の奥まで漂う。吐くことは許されなかった。それすらもできず、ただ飲み込んでいくしかなかった。エファイマの蛮族は黒い雨のように突然やってきた。村人は誰も武器を振るう心構えを持っていない。ただ怯えて逃げ惑うことしかできなかった。最初のうちは抵抗しようと鎌や槌を抜いた者もいた。木こり、鍛冶屋や農夫、そして石工もそうだ。彼らはすぐさま叩き潰された。村の畑を焼き払い、家畜を殺し、家を壊した。子供たちが泣き叫ぶ声が聞こえて、私は恐怖で体が動かなかった。村の中心にある広場で、大人の怒号が響き渡る。男も女も関係なく、肉片や血溜まりになっていただろう。男たちの無残な死体に混じって、まだ息のあったものが助けを求める。それを見たような気がする。村の真ん中に立って……いや、違う。戦場の景色と混ざったに違いない。私はずっと隠れたままだった。やがて全てが終わってしまった。雪は止んでいた。雲の切れ間から月が見えていた。暗闇の中で、私は恐ろしくなって、自分の両肩を抱いた。
 虫が這いずっている。質感には少し光沢があるが、それが雪解けのせいなのか、元から備わっていたのかは覚えていない。蒼い体に二本の黒い線が入った芋虫だ。一本は腹部を横切り、もう一本は背中を中央で縦に貫いている。両線は真っ直ぐで、確かな太さがある。当時の私にはそれが芋虫の体を縛り付けているように感じられた。今になってみれば、それはただの模様にすぎない。だが、当時はそうではなかった。その模様が私の心に根付いて離れなくなった。小さな足が6本あって、それぞれの先に小さな爪が備わっていた。それは小さな小屋の中で一歩一歩蠕動運動を繰り返していて、私はそれを冷めた目で見つめていた。じっと立ち止まるときもあり、全く動かない日もあった。しかし、明け方に目を覚ました時に限って、動きは活発だった。羽があるわけでもないのに、飛び立とうとするかのように前へ後ろへと体を動かしていた。何かに取り憑かれたかのようで、私は毛布を頭まで被って、その光景を見ていた。夜が白み始めれば、また動かなくなる。蒼い虫の動きが鈍くなってから、私は眠りにつくことができた。私は啓示というものを受けたことがないが、もしあったとすればこれだろう。それは些細な予感だった。瞼を閉じる直前、虫の蒼い体が空の光に透き通った。糸を引く粘液の詰まった体が私の瞼の裏に焼き付いていた。
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