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32.次元の狭間

15.森羅の魔物

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 世界はいつの間にか鬱蒼とし始めていた。先程の氷獄の魔宮ではジャイアントイエティの大群に出会ったが、今はグローウルフとゴブリンの大群に遭遇している。面倒なことに、グローウルフの上にゴブリンが乗って操っている。ゴブリンライダーというべき存在となっていた。
 新しい魔物と判別するべきかどうかは置いておくが、片方を倒したところで、もう片方が攻撃してくるのだ。

 謎の連携を見せてくるグローウルフとゴブリンに嫌気が差しつつ、切り殺していく。一番安全なのは、一刀で二匹とも倒していくことだが、そればかり目指しておくと、失敗しそうだ。

『ゴァ!』

 ゴブリンが血を吐いて倒れた。

「これで最後か?」

 コストイラがゴブリンに刺さった刀を抜き、血を飛ばした。

「第一陣がね」

 アストロの冷徹な一言に、コストイラはうげ、という顔をした。
 すでに一時間以上の戦闘を行っているため、疲れがある。この程度の疲れなら、無視して戦うことができるが、心労は消えないのだ。

「ほら、第二陣が来たわよ」
「無心だな、無心。正気に戻った時には戦いが終わっているようにしよう」
「仕事はしなさいよ」

 アストロの号令に、コストイラは遠い目をして刀を握り直した。そう言えば、司令塔はアレンのはずなのだが、今はアストロではないか。アレン、要らない子?

『ゴァゴァゴァ!!』

 先頭を走るゴブリンライダーが、モーニングスターをブンブン振り回している。

 普通、動物に気を遣って、騎乗主は武器を選ぶのだが、このゴブリンは何も考えてなさそうだ。
 しかも、振り回していた鉄球が、暴力的に生い茂る木に当たった。そして、木は半ばまで凹んだが、破砕できなかった。

『は?』

 バンダナを巻いていたゴブリンが落狼し、地面をゴロゴロと転がった後、後続の狼に踏まれた。

『ゴォオオアアアア!?』

 ゴブリン達はグローウルフから下り、バンダナのゴブリンに寄っていく。バンダナをつけているあたり、この集団のリーダーなのかもしれない。そして、心配されているところから、慕われているのかもしれないと思った。

『ゴ、ゴァ……』
『ゴ、ゴァ!?』

 アストロ達にはゴブリンの言葉は分からない。そのため、何をしているのかさっぱりだ。
 
 抱えられたバンダナゴブリンがブルブル震えながら親指を立てた。周りにいたゴブリン達は大いに涙を流しながら、バンダナゴブリンを担ぎ、グローウルフに乗って去って行った、

「な、何だったんだ?」
「私に聞かないで。分かるわけないでしょ?」
「凄く人間味ある行動でしたね」

 戦闘へ向かおうとしていた気持ちをどこに向けばよいのか分からず、刀を中途半端に上げたまま止まっている。アストロはコストイラの意見にあまり理解できなかった旨を話し、アレンの意見に同意した。

「何か来た」

 シキがアストロの袖を引いた。第三陣かと思いつつ、目を凝らしてみると、そこには一人の魔物がいた。

『うちの奴等が迷惑をかけたようじゃの』

 とても流暢な人語だった。滑らかすぎて、魔物であることを忘れてしまいそうだ。いや、原因はそれ以外にもある。
 明らかに人の見た目をしているのだ。滑らかで凹凸のない黒色の肌をしていなければ、人間として見ていただろう。
 前衛した特徴から考えれば、この魔物はゴブリンだ。高身長で、アストロと同じ目線の高さのゴブリンだ。

『何、迷惑を掛けちまった詫びをしてぇだけなんじゃ』

 そういったゴブリンは、女の柔肌など簡単に貫きそうな牙を見せつけ、微笑んだ。
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