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32.次元の狭間
16.王と女王
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宮井恭平は仲間に恵まれなかった。
地域が恐れる暴走族”爆進隊”を創設したメンバーであり、初代総長も務めた男である。
時にはメンバーと夢を語らい、時には地域をパトロール。警察に補導されたり、指定暴力団に喧嘩や大法螺を吹くなどの大立ち回り。
恭平のリアルはこの上なく充実していた。
ともに夢を語ったり、涙が出るほど笑ったりできる仲間など、爆進隊のメンバー以外にはいなかった。
そんな時に事件は起きた。
家が燃えたのだ。中にいた両親も妹も弟も死んだ。
恭平は頭がカッとなるのを感じた。今、犯人が目の前に出て来たら、勢い余って殺してしまいそうだ。
恭平はすぐさま爆進隊へと連絡を入れ、招集した。当然の弔い合戦だ。
犯人は見つけて殺す。恭平にはそれしかなかった。
結論から言おう。犯人は爆進隊のメンバーだった。犯行の動機は、もうついていけなくなったから。自分勝手に振る舞う恭平が嫌になったからだ。
真実が明らかになった際、恭平は大いに取り乱した。そして、激高した。
我儘な子供は拳を硬く握り、復讐者として、殺人犯に振るった。
空間に血が舞う中、爆進隊のメンバーが小振りのナイフを取り出した。刃渡り数㎝程度の、断ちバサミより小さなナイフだ。しかし、殺傷能力はそれで十分。
短い刃が肝臓に入った。肝腎要と言われる肝臓だ。非常にまずい状態だ。早く治さなくては。
恭平は腹が熱くなるのを自覚しながら、前のめりになってナイフを抜こうとする。
そこを好機と見たのか、爆進隊のメンバーが一気に攻めへと転じた。ナイフを肝臓に刺したまま、恭平は抵抗を続けた。
そして、遂に実行犯と黒幕を殴り殺した時、すべてが終わった。エンドルフィンやアドレナリンなどの脳内麻薬が切れ、そして、失血してしまった。
もう足にも腕にも力が入らない。
天を仰ぎ、輝きを放ち続ける星々を見ながら倒れていく。
決して裏切らず、決して見捨てず、決して見放すことのない仲間が欲しい。
「あぁ、消える……」
自らの命の灯火を見つめながら、己が瞳の光を消していった。
気が付くと、恭平は花畑にいた。
弟がハマっていた異世界転移だったか、異世界転生だったか。確かそんなものだったはず。恭平がそれを受け入れるのに、四日掛かった。
どうにか生き残って、爆進隊のメンバーに復讐することを誓った。そして、根性焼きをすることも。復讐することが生きる意味。生きていくための原動力になった。
この時、なぜか隣に女がいた。トンボのような脈がある、半透明な翅が生えており、白く長い睫毛が生えている。その目は生気を感じられなかった。原因は分かっている。瞬きをしていないからだ。
気味が悪いため、突き放してやりたかった。しかし、ただ隣におり、何をするでもなく寄りかかってくる姿が、生前に仲の良かった妹と重なったため、躊躇われた。
『チ。好きにしろよ』
『ん』
『話せんのかよ……』
声まで妹と似ており、天を仰いでしまった。
護らなければならない。そんな意識が芽生える中、妖精女王は静かに恭平の指を掴んだ。
地域が恐れる暴走族”爆進隊”を創設したメンバーであり、初代総長も務めた男である。
時にはメンバーと夢を語らい、時には地域をパトロール。警察に補導されたり、指定暴力団に喧嘩や大法螺を吹くなどの大立ち回り。
恭平のリアルはこの上なく充実していた。
ともに夢を語ったり、涙が出るほど笑ったりできる仲間など、爆進隊のメンバー以外にはいなかった。
そんな時に事件は起きた。
家が燃えたのだ。中にいた両親も妹も弟も死んだ。
恭平は頭がカッとなるのを感じた。今、犯人が目の前に出て来たら、勢い余って殺してしまいそうだ。
恭平はすぐさま爆進隊へと連絡を入れ、招集した。当然の弔い合戦だ。
犯人は見つけて殺す。恭平にはそれしかなかった。
結論から言おう。犯人は爆進隊のメンバーだった。犯行の動機は、もうついていけなくなったから。自分勝手に振る舞う恭平が嫌になったからだ。
真実が明らかになった際、恭平は大いに取り乱した。そして、激高した。
我儘な子供は拳を硬く握り、復讐者として、殺人犯に振るった。
空間に血が舞う中、爆進隊のメンバーが小振りのナイフを取り出した。刃渡り数㎝程度の、断ちバサミより小さなナイフだ。しかし、殺傷能力はそれで十分。
短い刃が肝臓に入った。肝腎要と言われる肝臓だ。非常にまずい状態だ。早く治さなくては。
恭平は腹が熱くなるのを自覚しながら、前のめりになってナイフを抜こうとする。
そこを好機と見たのか、爆進隊のメンバーが一気に攻めへと転じた。ナイフを肝臓に刺したまま、恭平は抵抗を続けた。
そして、遂に実行犯と黒幕を殴り殺した時、すべてが終わった。エンドルフィンやアドレナリンなどの脳内麻薬が切れ、そして、失血してしまった。
もう足にも腕にも力が入らない。
天を仰ぎ、輝きを放ち続ける星々を見ながら倒れていく。
決して裏切らず、決して見捨てず、決して見放すことのない仲間が欲しい。
「あぁ、消える……」
自らの命の灯火を見つめながら、己が瞳の光を消していった。
気が付くと、恭平は花畑にいた。
弟がハマっていた異世界転移だったか、異世界転生だったか。確かそんなものだったはず。恭平がそれを受け入れるのに、四日掛かった。
どうにか生き残って、爆進隊のメンバーに復讐することを誓った。そして、根性焼きをすることも。復讐することが生きる意味。生きていくための原動力になった。
この時、なぜか隣に女がいた。トンボのような脈がある、半透明な翅が生えており、白く長い睫毛が生えている。その目は生気を感じられなかった。原因は分かっている。瞬きをしていないからだ。
気味が悪いため、突き放してやりたかった。しかし、ただ隣におり、何をするでもなく寄りかかってくる姿が、生前に仲の良かった妹と重なったため、躊躇われた。
『チ。好きにしろよ』
『ん』
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護らなければならない。そんな意識が芽生える中、妖精女王は静かに恭平の指を掴んだ。
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