メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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32.次元の狭間

17.仲間という財産

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 仲間はかけがえのない財産である。決して裏切ることなかれ。決して仲間を見捨てることなかれ。決して見放すことなかれ。

 それこそが最高の仲間である。

 それを信条に、恭平は生きてきた。これをすべての仲間に押し付けて、暮らしてきた。
 その仲間の死体が討ち捨てられている。許せない。許せるはずがない。

『ふざけるな!』

 にこやかに近づいてきたゴブリンが顔を豹変させ、ハイキックを繰り出した。明らかに殺気の籠った一撃。それがコストイラに向かう。

 コストイラは刀を合わせて切り落とそうとした。しかし、大きく踏み止まり、状態を反らすことで躱した。

 ゴブリン越しに鳥の面が見えたのだ。

「スチェルファイ?」
『あ?』

 ゴブリンの攻撃が止まった。ゴブリンの横を、鳥の面をつけた少女が通ったのだ。妖精女王ティターニアが気のない動きで、腕を持ち上げた。
 病的なまでに白い指が優しくコストイラの頬を挟む。何も感情の乗っていない視線を仮面越しに放ちながら、コストイラの頬をムニムニしている。

 アストロ達もゴブリンも眉根を寄せている。

 コストイラには分かる。スチェルファイはコストイラを咎めているのだ。本人にとってこのムニムニは、頬を抓っているつもりなのだが、力がなさ過ぎてムニムニになっている。
 セルンを連れて悪戯をしていた時も、スチェルファイはこうして叱ってくれた。それを思い出すと泣いてしまいそうだ。

『……コストイラ、メッ』
「……はい」

 話せると思っていなかったコストイラは頬をムニムニと揉まれたまま、天を仰いだ。

「ね、ねぇ。また、私達の知らないコストイラの知人が出てきたわ」
「冥界前の女、虫、冥界の王、会ってないけど分かっているのはテシメ、アイケルス、セルン。結構いるな」

 十歳以降に知り合った幼馴染であるアストロとアシドは、小さな声でやり取りしている。

『どういうことだ、スチェルファイ。その男とどういう仲なんだ!』

 分かりやすく怒っている。束縛系なのだろう。

『……知り合いの子。ご近所さん』
『その割にはベタベタしすぎなんじゃないか!?』

 絶妙に威圧感がある。いわゆる小物のような三下のような、感心するほど見事な精神だ。

 スチェルファイは自分の何が怒られる原因になっているのか分からないまま、従った。
 いいのか、と目で訴えてみると、この人は寂しん坊、と返ってきた。どうやら合わせているだけらしい。

『貴方のそれは仲間の絆ではなく、ただの支配よ』
『ッ!? 誰だっ!?』

 言われたくないことを言われたからなのか、ゴブリンが一気に激高した。

『スチェルファイ。貴女の方もよ。いつまでそんな慈善活動をするつもりなの?』
『あ?』
「あ」

 ゴブリンははっきりと慈善活動と言われて、キレた。恭平にとって、妹似の少女スチェルファイがともにいるのは当然のことで、何より好きで一緒にいると考えているのだ。
 コストイラが声を出したのは、そこではない。声の主が、見たことのある人物だったからだ。

 緑の頭髪に赤い目、可愛いや綺麗というより、格好いいという言葉が似合う、端整な顔立ちとオーラを身に纏う女だ。
 そして、その女は、アストロにもアシドにも見覚えがあった。

「あの花畑の」
「管理人?」
「テシメ」
『ハァイ、コストイラ。久し振りね。大きくなったわね』
『五月蠅ぇ! 無視すんじゃねェ!』

 答え合わせをするコストイラに、テシメは気持ち悪いほどに指を滑らかに動かし、応じた。しかし、恭平はそれが許せなかった。
 恭平は自分を中心にしてほしかった。自分を仲間に入れてほしかった。

 だから、自分よりも注目を集める者を排除するのは、当然の行いだった。

『アァ!?』

 恭平はいつの間にか・・・・・・手にしていた棍棒でテシメの頭を殴り潰した。
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