メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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32.次元の狭間

18.花の魂

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「な」

 誰が声を出したのか分からない。
 しかし、誰もが声を出してしまう状況であった。

 テシメの頭の半分が潰された。そのあまりにも軽い感触に、恭平自身も驚いた。前世でも喧嘩三昧だった恭平は、人の頭の感触を知っている。いくら転生し、数倍の筋力を手に入れたとはいえ、人の頭がこんなに軽いはずがない。
 棍棒をどかすと、グボリと音を立てて抜けた。潰れたままで、顔は元に戻らない。

『かなりやんちゃね。ま、当時のコストイラと比べたら……プッ、比べるまでもないわね』

 顔が凹んだまま、テシメは鼻で笑った。

「え、オレ、そんなヤバい奴だったの。そんなヤバい奴だったの? ねぇ、テシメ!? オレってそんなにヤバかったの!?」
『はぁ!? 何でその状態で平然としてんだよ!?』
『ほら言ったでしょ? スチェルファイ。その男はヤバい奴だって』
『……ん』
「え!? いきなり頭を潰すような奴よりもヤバかったの!? え、こいつの方がヤバいよね。え!? ヤバいよね」
『おい、無視すんじゃねェ!! 俺を見ろ! 俺を入れろ! 俺を仲間外れにすんじゃねェ! 何で見てくれねぇんだよ!』
『ほら、束縛系。しかも、かなりの重症。人を見る目は未だ養われず、ね。スチェルファイは鳥の面を貰っているんだから、もっと俯瞰できるようにならなきゃ』
『……ん、流石は悪魔のテシメ』
「マジか。オレの悪戯ってそんなにヤバかったのか。もしかして、あの時出会った甲虫バルロイ女帝アルロスもオレに何か言いたかったのか? ごめんよ、バルロイ、アルロス! オレが何かよく分かってないけど、ごめんよ!」
『おい! だから無視すんじゃねェ! 俺を外すんじゃねェ! つか、何で生きてんだよ。頭半分潰れたまんまなのに、どうなってんだよ! おい、もう片方も潰してやんぞ! こら!!』
『いい? 尽くすんじゃなくて、餌を狙う鳥のように相手を観察するの。良い男って言うのはね、気を抜いた時にもいい男なの。駄目な男って言うのは表面上はいい男を装うものよ。そして、気を抜いた時に本性が出る。そこまで待つのよ』
『……フムフムφ(..)』
混沌カオス

 アストロがこの状況を一言で表した。アシドやアレン、レイドも同じ言葉を頭に思い浮かべた。

 我々の仲間コストイラは百面相しながら頭を抱えたり、木に頭をぶつけたいしており、何者か分からない敵ゴブリンは騒ぎ、喚き散らしながら、鉄塊のような棍棒を振り回している。花畑の管理人テシメは二人を完全無視し、スチェルファイに教育を施しており、鳥の面を所有する少女スチェルファイはそんな悪魔の面を持つ悪魔のような少女の言葉を鵜吞みにして掌にメモしていく。

 この状況を混沌カオス以外の何と言えばいいのだろうか。アストロは他の言葉を持ち合わせていない。

『五月蠅ェ!』

 さすがに堪忍袋の限界が来たのか、テシメは怒鳴りながら、地面から蔦を出して引っ叩いた。叩かれた恭平は木にぶつかり気絶し、コストイラは脳を揺さ振られたのか目の焦点が合っていない。

「えぇ……」
『……おぉ』

 予想以上の攻撃を目の当たりにし、アストロはドン引き、スチェルファイは静かに拍手を送った。

『行きましょうか』
「こいつらどうすんの?」
『え? 置いて行けばいいんじゃない? えっと』
「アストロです」
『アストロ。アストロ、ね。アストロ?』

 どこか引っかかるところでもあったのか、テシメは自身の顎に手を添えて、記憶を探り始める。しかし、すぐに頭を振って疑問を落とした。

『まぁ、コストイラは回収しておきましょうか』

 植物の蔦がうねり、コストイラの身体に巻き付くと、そのまま抱え上げられた。
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