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32.次元の狭間
19.祈りは届く、しかし、願いは
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『改めて自己紹介をしましょう。私はテシメ。この花畑の守護者、とでも言えばいいのかしらね』
「それも気になるんだけどさ」
自己紹介を始めるテシメを妨げ、アストロがテシメを指差した。テシメはよく分かっていないようで、首を傾げた。
しかし、これはテシメの方に問題がある。なぜかテシメが二人いるのだ。顔が半分潰されたテシメと、何も不備が起きていない完全体テシメ。
アストロ的にはなぜ二人いるかの説明が欲しいのだ。でなければ、話がいまいち入ってこない。
『あぁ、これ? 私の複製体よ。私、あまりここから動けないから、便利なのよ』
「だから潰されても平気だった、と」
『ま、そうね。死んでも私に影響がないから、面倒になってしまうのよね』
半分頭が潰れたテシメが植物に戻っていく。
『戻した方が話が進みそうね』
テシメがじっとコストイラを見る。
「え、何? というか、そろそろ解放してくれない?」
コストイラの混乱はすでに解けている。しかし、なぜかテシメの蔦は解かれていない。蔦に絡まったまま、木々から吊らされていた。
『だって、私はまだあの時の悪戯を覚えていないわ。フォンもガンドウも、変なことを吹き込んでくれたわ』
「え、ふ、フォン様?」
『ん、様? トッテム教?』
「は、はい! そーです!」
フォンの名前が出てきたことで、エンドローゼの顔が明るくなる。どこまでもフォン大好きっ子の狂信者だ。
「ん? ま、ま、待ってください。て、てテシメさんの言うように、こ、こ、コストイラさんに、なーにか吹き込んだ、ということ、は、こ、こ、コストイラさんは、ふ、フォン様に会ったことがあーった?」
エンドローゼの首が九十度に折れ曲がり、コストイラの顔を見つめた。コストイラはどこか恐怖を感じながら、エンドローゼから目を逸らした。
「な、なぁ、テシメ。あの狐の面ってやっぱり」
『えぇ、フォンよ』
コストイラは顔を覆いたくなったが、縛られているためできなかった。
エンドローゼはゆっくりとコストイラに近づき、吊るされた少年の頬を両手で挟んだ。そして、目を逸らせないように固定し、じっと瞳を見つめた。
『さて、話を戻しましょう。……何の話だったっけ』
「えっと自己紹介じゃありませんでしたか?」
『あぁ』
「そんな気がしてきた」
『まぁ、でも、改めていうことはあんまりない……』
テシメは手を叩いて軌道修正しようとしたが、できなかった。修正する先が見当たらなかったのだ。アレンのおかげで話していた内容を思い出したのだが、そこに戻す意味がない。
『あ、そういえば、貴方達のこと自体はフォンやシュルメから聞いているわ。だから、ある程度のことは知っているわよ』
「悪口?」
『いいえ。かなり客観的な評価よ。経歴とか属性とか、その辺? 宗教は聞いてなかったけど』
テシメは話しながら、いまだに目を合わせ続けるエンドローゼを見た。
『あ、思い出した』
「ん?」
テシメをコストイラを見つめることで話さなければならないことを思い出した。
『コストイラ、大事な話よ』
「ん? どうした?」
『貴方がこの先に進もうというのなら』
「何だ? 止めるのか?」
『本当は止めたいところだけど、それをしても貴方には意味がないから、絶対しないわ』
「じゃあ、何だよ」
『この先、セルンやカーミラ、アイケルス、それこそフラメテにだって会えるかもしれないわ。気を付けてね』
コストイラは目を伏せ、それ以上、何も話さなくなった。
「それも気になるんだけどさ」
自己紹介を始めるテシメを妨げ、アストロがテシメを指差した。テシメはよく分かっていないようで、首を傾げた。
しかし、これはテシメの方に問題がある。なぜかテシメが二人いるのだ。顔が半分潰されたテシメと、何も不備が起きていない完全体テシメ。
アストロ的にはなぜ二人いるかの説明が欲しいのだ。でなければ、話がいまいち入ってこない。
『あぁ、これ? 私の複製体よ。私、あまりここから動けないから、便利なのよ』
「だから潰されても平気だった、と」
『ま、そうね。死んでも私に影響がないから、面倒になってしまうのよね』
半分頭が潰れたテシメが植物に戻っていく。
『戻した方が話が進みそうね』
テシメがじっとコストイラを見る。
「え、何? というか、そろそろ解放してくれない?」
コストイラの混乱はすでに解けている。しかし、なぜかテシメの蔦は解かれていない。蔦に絡まったまま、木々から吊らされていた。
『だって、私はまだあの時の悪戯を覚えていないわ。フォンもガンドウも、変なことを吹き込んでくれたわ』
「え、ふ、フォン様?」
『ん、様? トッテム教?』
「は、はい! そーです!」
フォンの名前が出てきたことで、エンドローゼの顔が明るくなる。どこまでもフォン大好きっ子の狂信者だ。
「ん? ま、ま、待ってください。て、てテシメさんの言うように、こ、こ、コストイラさんに、なーにか吹き込んだ、ということ、は、こ、こ、コストイラさんは、ふ、フォン様に会ったことがあーった?」
エンドローゼの首が九十度に折れ曲がり、コストイラの顔を見つめた。コストイラはどこか恐怖を感じながら、エンドローゼから目を逸らした。
「な、なぁ、テシメ。あの狐の面ってやっぱり」
『えぇ、フォンよ』
コストイラは顔を覆いたくなったが、縛られているためできなかった。
エンドローゼはゆっくりとコストイラに近づき、吊るされた少年の頬を両手で挟んだ。そして、目を逸らせないように固定し、じっと瞳を見つめた。
『さて、話を戻しましょう。……何の話だったっけ』
「えっと自己紹介じゃありませんでしたか?」
『あぁ』
「そんな気がしてきた」
『まぁ、でも、改めていうことはあんまりない……』
テシメは手を叩いて軌道修正しようとしたが、できなかった。修正する先が見当たらなかったのだ。アレンのおかげで話していた内容を思い出したのだが、そこに戻す意味がない。
『あ、そういえば、貴方達のこと自体はフォンやシュルメから聞いているわ。だから、ある程度のことは知っているわよ』
「悪口?」
『いいえ。かなり客観的な評価よ。経歴とか属性とか、その辺? 宗教は聞いてなかったけど』
テシメは話しながら、いまだに目を合わせ続けるエンドローゼを見た。
『あ、思い出した』
「ん?」
テシメをコストイラを見つめることで話さなければならないことを思い出した。
『コストイラ、大事な話よ』
「ん? どうした?」
『貴方がこの先に進もうというのなら』
「何だ? 止めるのか?」
『本当は止めたいところだけど、それをしても貴方には意味がないから、絶対しないわ』
「じゃあ、何だよ」
『この先、セルンやカーミラ、アイケルス、それこそフラメテにだって会えるかもしれないわ。気を付けてね』
コストイラは目を伏せ、それ以上、何も話さなくなった。
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