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32.次元の狭間
37.346年前の置き土産
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「りゅ、竜……いや、狐?」
アストロの喉が震える。コストイラ達は言葉を交わさず、ただのその総躯を見つめた。
朽木色の体躯に刺々しい見た目。険しい天峰から切り出したような歪な爪、語るほど恐怖に落ちていく金毛に覆われた巨大すぎる胴、そして悪魔のような狐頭。
どくっどくっと怪しい紅の光を放ちながら脈打つ肉は、先程の竜達の鼓動以上だ。
「何よ、あの魔物」
「アレはイーラ。我が友ホウギの古き仲間だ」
アストロが恐怖を悟られぬように唇を震わせる中、レイベルスが横に立ち、穴を覗きこんだ。
「イーラ。確かマーエン教の神様?」
「あん? あぁ、そういやぁそんな、よく分かんねぇ宗教あったな。あの化け狐が神格化とかおっかねェおっかねェ」
レイベルスが嘲り笑うように腹を揺らし、イーラを見た。
「そぉいやぁ、レイベルスは何しに来たんだよ」
「あん? オレか? オレはイーラを見に来たのさ。封印がきちんとできてんのかどうかってよ」
「じゃあ」
「あぁ、駄目だ。最初に何してんだろうなって見ちまった。アレがいけなかった。来るぞ、復活だ」
今までに感じたことのない緊張を感じながら、穴を見つめる。
そして、ボボボと耳鳴りのような音が聞こえ、三本の尾が動き始めた。
『ハ、ラ、ヌ』
奇妙な言葉が飛び出す。何か意味のあるものなのか、ないものなのかは分からないが、恐怖が為に警戒してしまう。
『ガァアアアアアア!!』
イーラは大絶叫をすると、四肢を大きく動かし、穴から脱出した。その際の地震の影響で、勇者一行はバランスを崩してしまう。
『フー、フー』
血走った目を向けながら、荒い息を吐くイーラは、周りにいる者達を睥睨する。
『フー、ン? 何だ、誰かと思えば、ホウギ、いやレイベルスではないか。息災か』
「あぁ、元気だぜ、復活しやがって、面倒くせぇ」
『本音が隠せてねぇなぁ。ハッハッハッ』
イーラの目がギョロギョロと動いている。涙袋に指を当て、瞳が動くのを止めようとしているが、止まらない。
『俺様ぁ復活したばっかで、左目の調子が……。お、治った』
左目の調子が戻ったようだが、右目はまだゴロゴロ動いたり、ビリビリ震えたり、異常な動きをしているが、いいのだろうか。
『にしても、良いタイミングで起きたものだ』
「あ?」
瞬間、イーラが距離を喰った。
コストイラが目を剥く。目に止まらないわけではない。飛んだ筋肉の動きや走り迫りくるイーラの姿がよく見えていた。
しかし、体が動いてくれない。恐怖かあるいは反応速度のせいかは分からないが、すでにそこにイーラの爪があった。
「く……」
コストイラが咄嗟に刀を間に挟んで防御しようとする。
爪は間違いなく刀に当たった。しかし、馬力が違う。
コストイラの体が浮く。その横にいたレイベルスが無情にも助けることなく体を傾けた。
コストイラは風の矢と化し、カオスドラゴンに突っ込んだ。カオスドラゴンの肉は爆ぜ、コストイラを覆い隠した。
イーラが右爪を振るう。レイベルスはその巨体に似合わない速度で爪を躱し、ボクサーよろしく、まずジャブを顔面に叩き込んだ。
鬼の膂力は全種族の中でもトップクラスだ。イーラの顔骨が衝撃に耐えかね、罅が入った。普通のものであれば砕け散ったり陥没したりするのだが、それがない時点でイーラのレベルと耐久力は並外れてたものということが分かる。
『オオオオオオオオ!!』
全ての者の耳を聾するほどの凄烈な雄叫びを上げ、さらに腕を振るい、レイベルスにも攻撃を当てる。
超人的な筋肉により、爪で裂かれることはなかったが、3m越え400㎏の巨体が宙に浮いた。レイベルスはグランドドラゴンに突っ込んだ。
アストロの喉が震える。コストイラ達は言葉を交わさず、ただのその総躯を見つめた。
朽木色の体躯に刺々しい見た目。険しい天峰から切り出したような歪な爪、語るほど恐怖に落ちていく金毛に覆われた巨大すぎる胴、そして悪魔のような狐頭。
どくっどくっと怪しい紅の光を放ちながら脈打つ肉は、先程の竜達の鼓動以上だ。
「何よ、あの魔物」
「アレはイーラ。我が友ホウギの古き仲間だ」
アストロが恐怖を悟られぬように唇を震わせる中、レイベルスが横に立ち、穴を覗きこんだ。
「イーラ。確かマーエン教の神様?」
「あん? あぁ、そういやぁそんな、よく分かんねぇ宗教あったな。あの化け狐が神格化とかおっかねェおっかねェ」
レイベルスが嘲り笑うように腹を揺らし、イーラを見た。
「そぉいやぁ、レイベルスは何しに来たんだよ」
「あん? オレか? オレはイーラを見に来たのさ。封印がきちんとできてんのかどうかってよ」
「じゃあ」
「あぁ、駄目だ。最初に何してんだろうなって見ちまった。アレがいけなかった。来るぞ、復活だ」
今までに感じたことのない緊張を感じながら、穴を見つめる。
そして、ボボボと耳鳴りのような音が聞こえ、三本の尾が動き始めた。
『ハ、ラ、ヌ』
奇妙な言葉が飛び出す。何か意味のあるものなのか、ないものなのかは分からないが、恐怖が為に警戒してしまう。
『ガァアアアアアア!!』
イーラは大絶叫をすると、四肢を大きく動かし、穴から脱出した。その際の地震の影響で、勇者一行はバランスを崩してしまう。
『フー、フー』
血走った目を向けながら、荒い息を吐くイーラは、周りにいる者達を睥睨する。
『フー、ン? 何だ、誰かと思えば、ホウギ、いやレイベルスではないか。息災か』
「あぁ、元気だぜ、復活しやがって、面倒くせぇ」
『本音が隠せてねぇなぁ。ハッハッハッ』
イーラの目がギョロギョロと動いている。涙袋に指を当て、瞳が動くのを止めようとしているが、止まらない。
『俺様ぁ復活したばっかで、左目の調子が……。お、治った』
左目の調子が戻ったようだが、右目はまだゴロゴロ動いたり、ビリビリ震えたり、異常な動きをしているが、いいのだろうか。
『にしても、良いタイミングで起きたものだ』
「あ?」
瞬間、イーラが距離を喰った。
コストイラが目を剥く。目に止まらないわけではない。飛んだ筋肉の動きや走り迫りくるイーラの姿がよく見えていた。
しかし、体が動いてくれない。恐怖かあるいは反応速度のせいかは分からないが、すでにそこにイーラの爪があった。
「く……」
コストイラが咄嗟に刀を間に挟んで防御しようとする。
爪は間違いなく刀に当たった。しかし、馬力が違う。
コストイラの体が浮く。その横にいたレイベルスが無情にも助けることなく体を傾けた。
コストイラは風の矢と化し、カオスドラゴンに突っ込んだ。カオスドラゴンの肉は爆ぜ、コストイラを覆い隠した。
イーラが右爪を振るう。レイベルスはその巨体に似合わない速度で爪を躱し、ボクサーよろしく、まずジャブを顔面に叩き込んだ。
鬼の膂力は全種族の中でもトップクラスだ。イーラの顔骨が衝撃に耐えかね、罅が入った。普通のものであれば砕け散ったり陥没したりするのだが、それがない時点でイーラのレベルと耐久力は並外れてたものということが分かる。
『オオオオオオオオ!!』
全ての者の耳を聾するほどの凄烈な雄叫びを上げ、さらに腕を振るい、レイベルスにも攻撃を当てる。
超人的な筋肉により、爪で裂かれることはなかったが、3m越え400㎏の巨体が宙に浮いた。レイベルスはグランドドラゴンに突っ込んだ。
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