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32.次元の狭間
38.獣の魔神
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青空はすでに消えていた。境界の狭間からは明るさが消え失せている。いつの間にか一転して、まるで月夜の晩のような蒼然とした薄暗さに包まれた。
イーラが高速で動き、アストロ達の前に来る。
アシドとレイドが後衛を護るように割って入る。
しかし、その金毛の太腕に殴り飛ばされ宙を舞う。直撃を避けたところで結果は同じで、人の体が紙屑のように吹き飛ばされる。
アストロが破れかぶれに魔術を放つ。イーラは軽く背を反らせる。そして、胸を風船めいて膨らませ、妖狐は口内で爆発させた。
大音声とともに放たれたのは、衝撃波だった。
狙いはかなり正確で、アストロのネックレスについている骸骨が粉砕される。
『集え!』
神の言葉に呼応するように、人々が集まり出した。おそらくはこれ全員がマーエン教。イーラを護りにやってきた信者達だ。
人の波は唸り声を上げながら、四方から襲い掛かってきた。
「ぬぅん!」
レイドが楯を構えながら突進する。マーエン教徒達が立ち塞がるが、圧倒的なレベル差を前に吹き飛ばされた。
数がいくらいても覆せないレベル差を見て、マーエン教徒の腰が引ける。そんな中、一人の男が有象無象の中から出てきた。
「私がこの者を止めます。その隙に脇からでも背からでも攻めましょう」
そういうと、女は一般的な騎士剣を構えた。レイドもそれに合わせて楯を構えた。
アシドがレイドを助けようとするが、その間に、腹に贅肉をたっぷりと蓄えた男が割って入った。
「邪魔だ!」
少しの苛立ちとともに槍を振ると、男は短剣を抜いて止めた。アシドが舌を打ってさらに槍を振ると、アシドの速度に対応した男が、短剣で槍を止める。
その時、カオスドラゴンの向こう側で魔力爆発が起きた。
「か、は」
赤と青のツートンカラーの髪をした女が、白目を剥きながら気絶した。
周りにいたマーエン教徒達の腰が引けている。コストイラを止められない。あのクレアリーでさえ無傷で突破されてしまった。
コストイラの視線はマーエン教徒ではなく、イーラに向いている。今、イーラの相手をしているのは後衛三人しかいない。
コストイラが周りにいたマーエン教を斬り飛ばして、アストロ達の元へと急いで向かう。
『グヌゥ。これは天罰? 神に向かっての天罰か。フォンめ、面白い!』
イーラが狐の顔を凶悪に歪める。
エンドローゼの顔が泣き顔になっている。フォンの実力でもってしても、イーラには敵わないようだ。
アストロが焦りながら魔術を放つが、イーラの金毛は致命的に威力を軽減している。
アレンはすでに恐怖に支配されてしまっており、頭を抱えて蹲っている。もう戦闘に参加できないかもしれない。
『もう後は弱い者いじめしかないか』
イーラがペシャンコに潰そうと右腕を振り上げた。
コストイラが何とか追いつき、刀の柄でイーラの側頭部を殴った。
『ぐ!?』
「あれ?」
まさか殴れるとは思っていなかったコストイラが勢い余ってイーラの上に乗ってしまった。
『あ? 誰だ、乗っているのは?』
コストイラが口元を手で覆う。息の音すら聞かれたくない。
今、イーラはコストイラかどうかわかっていない。背に誰か乗っているのは分かっているのだろうが、どういうタイプの者が乗っているのか分かっていないのだ。
これを利用しない手はないだろう。
イーラが高速で動き、アストロ達の前に来る。
アシドとレイドが後衛を護るように割って入る。
しかし、その金毛の太腕に殴り飛ばされ宙を舞う。直撃を避けたところで結果は同じで、人の体が紙屑のように吹き飛ばされる。
アストロが破れかぶれに魔術を放つ。イーラは軽く背を反らせる。そして、胸を風船めいて膨らませ、妖狐は口内で爆発させた。
大音声とともに放たれたのは、衝撃波だった。
狙いはかなり正確で、アストロのネックレスについている骸骨が粉砕される。
『集え!』
神の言葉に呼応するように、人々が集まり出した。おそらくはこれ全員がマーエン教。イーラを護りにやってきた信者達だ。
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数がいくらいても覆せないレベル差を見て、マーエン教徒の腰が引ける。そんな中、一人の男が有象無象の中から出てきた。
「私がこの者を止めます。その隙に脇からでも背からでも攻めましょう」
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アシドがレイドを助けようとするが、その間に、腹に贅肉をたっぷりと蓄えた男が割って入った。
「邪魔だ!」
少しの苛立ちとともに槍を振ると、男は短剣を抜いて止めた。アシドが舌を打ってさらに槍を振ると、アシドの速度に対応した男が、短剣で槍を止める。
その時、カオスドラゴンの向こう側で魔力爆発が起きた。
「か、は」
赤と青のツートンカラーの髪をした女が、白目を剥きながら気絶した。
周りにいたマーエン教徒達の腰が引けている。コストイラを止められない。あのクレアリーでさえ無傷で突破されてしまった。
コストイラの視線はマーエン教徒ではなく、イーラに向いている。今、イーラの相手をしているのは後衛三人しかいない。
コストイラが周りにいたマーエン教を斬り飛ばして、アストロ達の元へと急いで向かう。
『グヌゥ。これは天罰? 神に向かっての天罰か。フォンめ、面白い!』
イーラが狐の顔を凶悪に歪める。
エンドローゼの顔が泣き顔になっている。フォンの実力でもってしても、イーラには敵わないようだ。
アストロが焦りながら魔術を放つが、イーラの金毛は致命的に威力を軽減している。
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『もう後は弱い者いじめしかないか』
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コストイラが何とか追いつき、刀の柄でイーラの側頭部を殴った。
『ぐ!?』
「あれ?」
まさか殴れるとは思っていなかったコストイラが勢い余ってイーラの上に乗ってしまった。
『あ? 誰だ、乗っているのは?』
コストイラが口元を手で覆う。息の音すら聞かれたくない。
今、イーラはコストイラかどうかわかっていない。背に誰か乗っているのは分かっているのだろうが、どういうタイプの者が乗っているのか分かっていないのだ。
これを利用しない手はないだろう。
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