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33.魔大陸
20.震える時
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「どこだ。どこで我々は方向が変わった?」
レイドが猛吹雪のせいで足跡が消えてしまっている道を見た。もちろん足跡が残っていないため、何も分からない。それに加え、視界は吹雪で不明瞭であり、さらに何も分からない。
「どこか、何てないわね。どこか特定の場所じゃなくて、全体的に間違っていたっぽいわね」
アストロが白い息を吐きながら、周囲を見渡す。
吹雪が特殊な吹雪であった。普通の吹雪のような自然現象ではなく、濃い魔力が巻き込まれている自然災害だ。
濃い魔力が魔力探知のための魔力を攪乱してしまう。そのせいでアストロは、エンドローゼの身に着けている魔道具すら感知しにくくなっている。
「シキ、どう? 分かる?」
「60%」
「その60%だとして、どっちが島の中心?」
「多分、あっち?」
シキの勘であっても、自分達がどこにいるのか分からない。その分からないなりに、疑問形でありながら、指を差した。
今は何もヒントがないため、その不安さえも信頼しなければならない。
勇者一行+αはシキの指差した方向に行くことにした。
少しずつ吹雪の勢いが弱まっていく。
とはいえ、まだ激しい。全盛に比べて弱まっているだけに過ぎない。
そんな吹雪の中、しばらく歩く。すると、向かいからシルエットが見えてきた。
人ではない。これは明らかだ。
まず、背が異常に高い。18mくらいある。そして、尾がある。次に目がオレンジに光っている。
どう考えても魔物。戦うかどうか魔物による。
吹雪の中でも見られるくらいには近づいた。
アースドラゴンだ。緑の巨体を小さく揺らし、体に積もった雪を落とす。
アースドラゴンは通常5m程度であり、ある程度の棘が生えている。しかし、この個体は18mほどあり、棘がほとんどなくつるつるだ。
え、お前恒温動物だったの?
「ウオ! デカい! 逃げるか!?」
フウが興奮している。五月蠅いのでシキが殴った。フウは頬を膨らませつつ、紅潮させた。
ボッッと雪が消えていく。その原因となっている尾の槍の側面に、コストイラが足裏を添えた。尾の軌道が逸れる。
「別によ、お喋り自体を止める気はさらさらねェけどよ、一個訂正させてくれや」
「何よ」
本当につまらなそうに話すコストイラにアストロ、フウ、シキは首を傾げた。
「地上を走るのと、雪上を走るのは、全然違ぇだろ」
シキとフウは目を丸くした。確かにそうじゃん、と。
アースドラゴンは尾の槍を簡単に往なされてしまったため、別の手段で攻撃することにした。原始の攻撃手段、すなわち噛みつきである。
18mの巨躯を誇る恐竜が持つのに相応しい大口を、コストイラは大胆にも真正面から迎え撃つ。下の歯を蹴折り足場にし、上の歯を左手一本で掴んだ。
ここからいくら力んでも、口が閉じない。噛み潰すことができない。
アースドラゴンが舌を伸ばし、コストイラを叩こうとするが、対して侍は刀で切って落とした。コストイラが大量の血を浴びる。
「あぁ、血が温けェ」
「サイコ野郎みたいなこと言うわね」
「僕はどこかの猟奇的殺人犯のようだと思いましたね」
「現在暖を取る方法がこれしかない世界の方が間違っている」
コストイラは一頻り血を浴びると、そのまま手を放した。
「……ヤベェ」
「え、何急に、どうしたのよ」
自身の掌を見ながら固まるコストイラに、一抹の不安を覚えてしまう。
「血で濡れたせいで余計に寒くなっちまった」
「気化じゃん! 自業自得じゃん! うわぁ心配して損した」
「ププ、バカじゃん」
コストイラはテンプルにカチンときた。アストロはいつものことのため、何とも思わない。むしろちょっと興奮するが、フウのはなぜか腹が立つ。殴ってやりたい。
ドンと地面がかすかに揺れる。その揺れは異常者でなければ気付けないようなものだった。当然の如く壊人のコストイラや絶人のシキは気付いているが口に出さない。
「何か今揺れた?」
他の者の配慮など全く気にせず、フウが口に出した。
「……揺れたな」
「……揺れたわね」
「……揺れた」
「えっと、揺れたんですか?」
フウの行動に溜息吐きつつ、肯定した。もはや予定調和のようにアレンは気付いていない。
そのため、アレンは考えてしまう。
本当に自分はここにいていいのだろうか。
そして、当然のように揺れの原因は勇者一行に辿り着く。
レイドが猛吹雪のせいで足跡が消えてしまっている道を見た。もちろん足跡が残っていないため、何も分からない。それに加え、視界は吹雪で不明瞭であり、さらに何も分からない。
「どこか、何てないわね。どこか特定の場所じゃなくて、全体的に間違っていたっぽいわね」
アストロが白い息を吐きながら、周囲を見渡す。
吹雪が特殊な吹雪であった。普通の吹雪のような自然現象ではなく、濃い魔力が巻き込まれている自然災害だ。
濃い魔力が魔力探知のための魔力を攪乱してしまう。そのせいでアストロは、エンドローゼの身に着けている魔道具すら感知しにくくなっている。
「シキ、どう? 分かる?」
「60%」
「その60%だとして、どっちが島の中心?」
「多分、あっち?」
シキの勘であっても、自分達がどこにいるのか分からない。その分からないなりに、疑問形でありながら、指を差した。
今は何もヒントがないため、その不安さえも信頼しなければならない。
勇者一行+αはシキの指差した方向に行くことにした。
少しずつ吹雪の勢いが弱まっていく。
とはいえ、まだ激しい。全盛に比べて弱まっているだけに過ぎない。
そんな吹雪の中、しばらく歩く。すると、向かいからシルエットが見えてきた。
人ではない。これは明らかだ。
まず、背が異常に高い。18mくらいある。そして、尾がある。次に目がオレンジに光っている。
どう考えても魔物。戦うかどうか魔物による。
吹雪の中でも見られるくらいには近づいた。
アースドラゴンだ。緑の巨体を小さく揺らし、体に積もった雪を落とす。
アースドラゴンは通常5m程度であり、ある程度の棘が生えている。しかし、この個体は18mほどあり、棘がほとんどなくつるつるだ。
え、お前恒温動物だったの?
「ウオ! デカい! 逃げるか!?」
フウが興奮している。五月蠅いのでシキが殴った。フウは頬を膨らませつつ、紅潮させた。
ボッッと雪が消えていく。その原因となっている尾の槍の側面に、コストイラが足裏を添えた。尾の軌道が逸れる。
「別によ、お喋り自体を止める気はさらさらねェけどよ、一個訂正させてくれや」
「何よ」
本当につまらなそうに話すコストイラにアストロ、フウ、シキは首を傾げた。
「地上を走るのと、雪上を走るのは、全然違ぇだろ」
シキとフウは目を丸くした。確かにそうじゃん、と。
アースドラゴンは尾の槍を簡単に往なされてしまったため、別の手段で攻撃することにした。原始の攻撃手段、すなわち噛みつきである。
18mの巨躯を誇る恐竜が持つのに相応しい大口を、コストイラは大胆にも真正面から迎え撃つ。下の歯を蹴折り足場にし、上の歯を左手一本で掴んだ。
ここからいくら力んでも、口が閉じない。噛み潰すことができない。
アースドラゴンが舌を伸ばし、コストイラを叩こうとするが、対して侍は刀で切って落とした。コストイラが大量の血を浴びる。
「あぁ、血が温けェ」
「サイコ野郎みたいなこと言うわね」
「僕はどこかの猟奇的殺人犯のようだと思いましたね」
「現在暖を取る方法がこれしかない世界の方が間違っている」
コストイラは一頻り血を浴びると、そのまま手を放した。
「……ヤベェ」
「え、何急に、どうしたのよ」
自身の掌を見ながら固まるコストイラに、一抹の不安を覚えてしまう。
「血で濡れたせいで余計に寒くなっちまった」
「気化じゃん! 自業自得じゃん! うわぁ心配して損した」
「ププ、バカじゃん」
コストイラはテンプルにカチンときた。アストロはいつものことのため、何とも思わない。むしろちょっと興奮するが、フウのはなぜか腹が立つ。殴ってやりたい。
ドンと地面がかすかに揺れる。その揺れは異常者でなければ気付けないようなものだった。当然の如く壊人のコストイラや絶人のシキは気付いているが口に出さない。
「何か今揺れた?」
他の者の配慮など全く気にせず、フウが口に出した。
「……揺れたな」
「……揺れたわね」
「……揺れた」
「えっと、揺れたんですか?」
フウの行動に溜息吐きつつ、肯定した。もはや予定調和のようにアレンは気付いていない。
そのため、アレンは考えてしまう。
本当に自分はここにいていいのだろうか。
そして、当然のように揺れの原因は勇者一行に辿り着く。
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