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33.魔大陸

31.エンドローゼの死闘

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 かか様の眼は義眼だ。
 エンドローゼがそれを知ったのは、孤児院を脱出する1年前だった。エンドローゼが回復魔法を覚えたての頃に、かか様の左眼から生気を感じなかった。そして、寝る時に左眼から目玉を外していた。

 エンドローゼは今着けた義眼も知っている。あれは熱を探知しているものだ。黄色の瞳で熱を感知し、青色の瞳で実際の景色を見ている。

 エンドローゼは「ご、ご、ごめんなさい!」と言いながら、家の扉を蹴り壊した。彼女は木の破片を一つ手に取ると、別の木片と合わせてこすり続ける。常人では目に見えない速度でこすることで、木片から火を出した。

「足りない」

 エンドローゼは顎にまで伝った汗を左手の甲で拭い取る。少女は止まることなく走り、隣の家の扉も壊し、火を点ける。

「おん? 急に熱が……。エンドローゼめ、火を点けたね。この義眼のこと覚えていたのかい」

 スモアは義眼に手を添えながら、エンドローゼを探す。駄目だ。やはり分からない。

 スモアは燃えている家屋を破壊し、火事の上に降り注がせた。空気の供給が止まり、火が消えた。隣の家にも同じことをする。他にも家が燃えているが、エンドローゼが動いているのを目撃できた。

「見えた」

 スモアは脚を引き摺りながら、駆け出す。曲がり角を見た途端、指で石畳を掻き、軸にしながら円を描くように曲がる。

 追い着いた。エンドローゼは石畳の上で、木片に火を点けていた。もう目視できる位置にいるため、熱に意味はない。

 気付いたエンドローゼが膝を立てていた状態から走り始める。とはいえ、巨人族の歩幅は大きい。あっという間に距離が失われた。
 いくら逃げ足の速いエンドローゼといえど、まだ走り出していないため、距離がどんどん縮まっていく。そこで走り出し始めるが、もう遅い。

 シスタースモアがエンドローゼに追いつく。

 怪老が右腕を引く。現役を退いているとはいえ、巨人族の本気の拳だ。高レベルのエンドローゼとはいえ、ひとたまりもない。
 怪老の拳が大気を壊していく。このままいけばエンドローゼの頭も壊れてしまうだろう。
 そこで、エンドローゼが躓いた。石畳が浮いていたようだ。

 超加速する思考、超低速となる視界、瞬足で脳裏を訪ねてくる記憶。あ、ここ、来るとき通った道だ。
 ギュオンッ! と頭上が焼かれた。躓いたおかげで回避することができた。
 エンドローゼの頭の中で、カチッと何かのスイッチが切り替わった。

 駄目だ。これ以上かか様の更生の案が思い浮かばない。すでに30以上のアプローチを7年前から行っていたが、かか様は変わらなかった。
 何も変わらない。もうこれ以上何をすれば変わってくれるのか分からない。

 嗚呼、ごめんなさい。

 エンドローゼは心の中で謝罪をし、空中で体勢を変えた。回転したエンドローゼは痛そうに尻餅をつくが、一切顔色を変えずに右腕を伸ばす。
 左手を右の肘に添える。そして右手はスモアの胸に添えた。

「ごめんなさい」

 エンドローゼが呟き、右手から魔力が放出された。
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