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33.魔大陸
32.想いを繋ぐ
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濃すぎる魔素。回転し続ける魔力変換器官。明らかにコンディションが悪い。その中でできる最高のパフォーマンスを見せつけ、ぶつける。
体の下で発光する魔力を感じながら、エンドローゼの顔を見る。
格好いい。それが素直な感想だった。
あのオドオドしていたびびりが。大人に近づかないようにしていた恐がりが。人と群れずに教室の隅で本を読んでいた人に声を掛けられなかった少女が。
ここまで成長したのか、この少女は。何と強くなったことか。
もう、あの、話すときに息を大きく吸っていた少女はいない。
もう、あの、ビクビクして言葉を跳ねさせていた少女はいない。
もう、あの、人を気遣いすぎて言葉ですら人を傷つけることができなかった少女はいない。
しかし、それは悲観することではない。それは成長と呼ばれるものだ。
少女の瞳には決意が込められていた。シキのような漆黒の意志でも、コストイラのような煉獄の意志でも、アシドのような敏速の意志でも、アストロのような渇望の意志でも、レイドのような憤懣の意志でも、アレンのような軟弱な意志でもない。
少女の意志は、忍耐の意志だ。さらにそこに、情熱や憤怒も感じる。
スモアの知るエンドローゼの眼ではない。
成長したのだ、エンドローゼは。
対しての私はどうだ? 今も昔も目玉に執着しており、何も変わっていない。
エンドローゼは変わってしまったのだ。スモアもかか様も知らないエンドローゼだ。
ごめんなさいを聞いた二秒後、スモアに魔力が当たり、吹き飛んだ。
エンドローゼの三倍以上も体重のあるスモアが浮くほどの爆発だったのだ、エンドローゼだって無事では済まない。
「ぐ、あ」
スモアが呻きながら、己の胸に手で触れた。
人間から見れば巨乳、巨人族から見れば貧乳に当たる胸が抉れており、指にはべっとりと血がついてきた。
あの娘にも、ここまでの攻撃力、暴力性、凶悪性を秘めていたとは思わなかった。
嬉しい。スモアは倒れながら微笑んだ。あの、半分が白髪となっている少女は、私を打ち破ったのだ。
もし、一人であったなら、俯いてばかりだっただろう。
エンドローゼはユラユラと立ち上がった。目尻いっぱいに涙を溜めて、既に半分以上白くなっている髪を躍らせる。
しかし、今は一人ではない。独りでもない。仲間がいる。
最近はかか様から離れていた。どこまでも遠く、遥か離れた場所にいたって、声は必ず届くと思っていた。
どんなに自分の力が小さくても、貴方を守りたいと思っていた。
旅の途中でもかか様のことを考えていた。今の自分には、何が出来るのか、と。
分からなかった。思いつくことは旅に出る前、ゴール家に買われる前にすべて試してしまった。
それでも顔を上げて、真摯に向き合うしかなかった。
貴女への想いこそが、世界のどこにいても胸にあった。やはり、互いに手を取り合って、共に生きたい。そんな未来を信じて、立ち向かった。
一歩、また一歩とスモアに近づく。
もしも独りだったなら、きっと諦めていただろう。しかし、どんな時も仲間が思い浮かんだ。未知へと立ち向かう勇気をくれた仲間の背中が。
スモアにも、その祈りが届いていた。貴女を救いたいという思いが。
エンドローゼの差し伸べた手、そこから感じられた温もりを強く握りしめて、いつの日か、この出会いが奇跡だと思えるのだろう。
温かな鼓動を鳴らし、今日という日の連続を生き続けた。
約束は形を変えず、今叶おうとしている。
夜明けまであと少しだ。
もう押しとどめておくことはできない。エンドローゼの眼から雫が、頬を伝い、顎から落ちた。
優しい。何と優しい娘だろうか。まぁ、そんな優しさなど、私のような悪者に利用されるだけだ。
「フォン様がおっしゃっておられた。私自身は手を出さないけど、エンドローゼは諦めないよ、と。本当だったようだね」
スモアの脇に正座をしたエンドローゼは、回復魔法を使おうとする。スモアはエンドローゼの手を弾いた。
「え?」
「もう、助からないよ」
「ま、ま、まだ! 分ーからないっじゃっな、ないですか!」
エンドローゼが血とともに唾を吐く。
スモアは微笑みながらエンドローゼの瞳を見る。
「アンタは優しい。恐ろしいくらいに、ね。だからこそ、私のような奴と一緒にいちゃあいけない。ほれ、今もアンタの元へ駆けつけようとしてくれている仲間がいる。私が隣にいるべきじゃない。資格がない」
「し、し、資格なんて!」
言葉を続けようとするエンドローゼの唇に人差し指を当てる。
「私の事も尊重しておくれ」
そんなことを言われてしまったから、エンドローゼは何も言い返せない。大粒の涙を落とし、石畳の色を変えていく。
エンドローゼの元に追いついたアストロが、彼女の肩を叩く。
いつの間にか、シスタースモアは息を引き取っていた。
体の下で発光する魔力を感じながら、エンドローゼの顔を見る。
格好いい。それが素直な感想だった。
あのオドオドしていたびびりが。大人に近づかないようにしていた恐がりが。人と群れずに教室の隅で本を読んでいた人に声を掛けられなかった少女が。
ここまで成長したのか、この少女は。何と強くなったことか。
もう、あの、話すときに息を大きく吸っていた少女はいない。
もう、あの、ビクビクして言葉を跳ねさせていた少女はいない。
もう、あの、人を気遣いすぎて言葉ですら人を傷つけることができなかった少女はいない。
しかし、それは悲観することではない。それは成長と呼ばれるものだ。
少女の瞳には決意が込められていた。シキのような漆黒の意志でも、コストイラのような煉獄の意志でも、アシドのような敏速の意志でも、アストロのような渇望の意志でも、レイドのような憤懣の意志でも、アレンのような軟弱な意志でもない。
少女の意志は、忍耐の意志だ。さらにそこに、情熱や憤怒も感じる。
スモアの知るエンドローゼの眼ではない。
成長したのだ、エンドローゼは。
対しての私はどうだ? 今も昔も目玉に執着しており、何も変わっていない。
エンドローゼは変わってしまったのだ。スモアもかか様も知らないエンドローゼだ。
ごめんなさいを聞いた二秒後、スモアに魔力が当たり、吹き飛んだ。
エンドローゼの三倍以上も体重のあるスモアが浮くほどの爆発だったのだ、エンドローゼだって無事では済まない。
「ぐ、あ」
スモアが呻きながら、己の胸に手で触れた。
人間から見れば巨乳、巨人族から見れば貧乳に当たる胸が抉れており、指にはべっとりと血がついてきた。
あの娘にも、ここまでの攻撃力、暴力性、凶悪性を秘めていたとは思わなかった。
嬉しい。スモアは倒れながら微笑んだ。あの、半分が白髪となっている少女は、私を打ち破ったのだ。
もし、一人であったなら、俯いてばかりだっただろう。
エンドローゼはユラユラと立ち上がった。目尻いっぱいに涙を溜めて、既に半分以上白くなっている髪を躍らせる。
しかし、今は一人ではない。独りでもない。仲間がいる。
最近はかか様から離れていた。どこまでも遠く、遥か離れた場所にいたって、声は必ず届くと思っていた。
どんなに自分の力が小さくても、貴方を守りたいと思っていた。
旅の途中でもかか様のことを考えていた。今の自分には、何が出来るのか、と。
分からなかった。思いつくことは旅に出る前、ゴール家に買われる前にすべて試してしまった。
それでも顔を上げて、真摯に向き合うしかなかった。
貴女への想いこそが、世界のどこにいても胸にあった。やはり、互いに手を取り合って、共に生きたい。そんな未来を信じて、立ち向かった。
一歩、また一歩とスモアに近づく。
もしも独りだったなら、きっと諦めていただろう。しかし、どんな時も仲間が思い浮かんだ。未知へと立ち向かう勇気をくれた仲間の背中が。
スモアにも、その祈りが届いていた。貴女を救いたいという思いが。
エンドローゼの差し伸べた手、そこから感じられた温もりを強く握りしめて、いつの日か、この出会いが奇跡だと思えるのだろう。
温かな鼓動を鳴らし、今日という日の連続を生き続けた。
約束は形を変えず、今叶おうとしている。
夜明けまであと少しだ。
もう押しとどめておくことはできない。エンドローゼの眼から雫が、頬を伝い、顎から落ちた。
優しい。何と優しい娘だろうか。まぁ、そんな優しさなど、私のような悪者に利用されるだけだ。
「フォン様がおっしゃっておられた。私自身は手を出さないけど、エンドローゼは諦めないよ、と。本当だったようだね」
スモアの脇に正座をしたエンドローゼは、回復魔法を使おうとする。スモアはエンドローゼの手を弾いた。
「え?」
「もう、助からないよ」
「ま、ま、まだ! 分ーからないっじゃっな、ないですか!」
エンドローゼが血とともに唾を吐く。
スモアは微笑みながらエンドローゼの瞳を見る。
「アンタは優しい。恐ろしいくらいに、ね。だからこそ、私のような奴と一緒にいちゃあいけない。ほれ、今もアンタの元へ駆けつけようとしてくれている仲間がいる。私が隣にいるべきじゃない。資格がない」
「し、し、資格なんて!」
言葉を続けようとするエンドローゼの唇に人差し指を当てる。
「私の事も尊重しておくれ」
そんなことを言われてしまったから、エンドローゼは何も言い返せない。大粒の涙を落とし、石畳の色を変えていく。
エンドローゼの元に追いついたアストロが、彼女の肩を叩く。
いつの間にか、シスタースモアは息を引き取っていた。
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