メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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33.魔大陸

37.より近く・より咫く・より詛く・より邇く

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 これまでに出会った敵の中では、かなり強い方に含まれる。

 これがカーミラに対する、シキの純粋な感想だ。

 事実として、カーミラのレベルは900ピッタリである。他に900の者がいるかと問われると、少し前に戦った龍神や、魔眼の魔王グレイソレア月の魔王フォンが当てはまる。
 勇者一行はそれ以上のレベルの敵と戦ったことがある。獣の魔神イーラ世界の闇アイケルス最優の騎士王アスタットなどがいる。
 つまり、理不尽な強さではない。むしろ、倒せる。何事もなければあと三秒で辿り着く。

 カーミラにとっては理不尽だ。カーミラの強さは近接戦闘ではなく、自身の能力を最大限に活用させた戦闘方法にある。
 <境界の怪物>などと呼ばれるとおり、境界を使うものだ。

 シキの二歩分斜め前に境界が出現する。ヴォンと音を立てて開いた。中から見たことのない竜が出てくる。
 石材を粗く削ったようにごつごつとした一本角が眉間と鼻頭の中間あたりから生えている。こちらを食べようとして大きく開かれる口の中には歯が一本もなく、代わりにあるのは無数の触手。その先端には光が集まっている。この世界では見たことのない生き物だ。
 体の表面積の二倍はあろう両翼と、体長と同じくらいの長さがある尾。見た目的には竜種だが、知らない竜種だ。

 無数の触手の先端にある光が集約し、光線レーザーを撃とうとする。

 しかし、シキの意識は別のところに向いていた。未知の竜以上にカーミラとあと二つの境界。
 二つのうち一つからは網目状に血管が張り巡らされている、人型の何か。人というよりは猿のような見た目をしている。こちらに猟奇的な視線を向けている。
 
 もう一つからは黒光りする巨躯を誇る猛牛。王族用の馬車ほどのサイズのあるそれは闘牛のように、足にエネルギーを溜めていた。

 四つに意識を割く。

 未知の竜がビームを放とうとする直前、シキの姿は掻き消え、怪物の首が飛んだ。
 一秒後、石柱に添うようにして移動し、両腕を解いた猿の首と胴と胸を切り離した。
 瞬きをする時間もない後、猛牛がスタートを切った。

 シキは身を屈めて猛牛の頭よりも低くなる。そこから顎下を回し蹴り上げた。猛牛が目を丸くした。
 猛牛が空中を散歩する。シキが腕を振るうと、四肢と頭が斬られた。肉塊が地面をバウンドする。

 三秒後、シキはカーミラの元に辿り着いた。

 カーミラが境界を開く。

「ム?」

 シキは着地点が分からず、ゴロゴロと転がり、棚にぶつかった。
 木目調の天井が見える。視界の端には自分の脚の先が見えた。

『えっと、大丈夫? っていうか、貴女、勇者じゃない。どうやってここに来たの?』
「???」

 シキは何が起こったのか全く分からない。しかし、これだけは分かる。今、目の前にイフリータはサヒミサセイだ。
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