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33.魔大陸
44.一将万骨
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ブサウを元の世界へと送り出す。そのための時間稼ぎをする。
何とも単純なやることだ。しかし、それ以上に難しい。
相手もこの魔大陸を踏破した、それだけのレベルがあるということだ。
護る。その一点においては譲るつもりはない。しかし、とそこでレイドは相手の全身を見た。
アシドよりも濃い蒼、藍と言ってもいいかもしれない色をした髪に同色の吊り目をした侍。東方の地域に伝わるキモノを着ていることから、コストイラに比べても、より侍然としている。
凶悪な肉食獣を思わせる笑みを浮かべる彼は、いきなり炎を纏ったかと思うと、戦場全体に炎の絨毯を敷いた。
「ぬ!?」
レイドは楯で守ることができたが、どこからかアレンの悶える声が聞こえた。今の炎を喰らってしまったのだろう。
レイドの頭が一気に血が上った。アレンを守れなかった自身への怒りもそうだが、それ以上に許せないことがある。アレンまで届いたということは、他の者達、相手にとっての仲間にまで届いたということ。つまり、こいつは仲間を巻き込んだのだ。
脳が沸騰しそうなほど熱い。
「貴様、今の攻撃なんだ? 仲間ではないのか?」
「……? 何を言っているんだ?」
「なぜ、仲間にまで攻撃をしたのだ!」
戦いの余波に髪を揺らしながら、レイドは怒りをぶつける。相手は何を言っているのか分からないという顔をしていたが、すぐにニヤリと笑った。
「何を言ってんだ? 仲間だって、勝利のためには犠牲にするモンだろ?」
キスレ・アガタ。侍う人の名家アガタ家の次男。
アガタ家は殿様にお仕えする侍う人を多く輩出し、最も信頼されている家系である。他にもカナエ家やトゥナカ家などがあるが、それでも殿様はアガタ家を最も信頼している。
そんな家系に生まれたのだから、キスレが侍う人を目指すのは必然だった。
殿様の隣にいるための最低限の立ち居振る舞いを学び、刀の腕も他人よりも磨いた。
家のことは兄に任せておけばいい。兄は病弱だが、頭が良い。頭の回転が速く、機転が利く。軍人というより、軍略家に向いている。
だからこそ、キスレは軍人のように前線で戦っていればよかった。時には要人の護衛を行い、時には魔物の討伐を行った。
そんなある日、殿様が演説をしている時に暗殺者が襲ってきた。その時に同僚が庇う形で救った。
暗殺者は同僚と相打ちになった。それを見た殿様は都殺場の豚を見るような目を向けた。
キスレは理解した。自分達は使い捨ての道具なのだ。仲間や部下ではなく、使い潰すものなのだ。
キスレは喜んだ。だってそうだろう? お上がそうしているのだ。お上、もとい導き手とは、進むべき道を示す者だ。つまり、お上がそれをしているということは、それが推奨されているということだ。
そこで、キスレは犠牲をすることになった。犠牲を必要なことなのだ。だって、殿様が推奨しているし。
キスレは刀を振っては炎を吐き出し、味方を巻き込んで敵を倒していく。
もちろん、味方を巻き込むような男に人気があるはずがない。同僚からはかなり嫌われていた。好感度はもうマイナスの域に入っていた。
しかし、更生することなく、キスレは犠牲を出し続けた。
犠牲者が5000人を超えた時、キスレは殿様から処刑の命令を受けた。テロリストだと思われたのだ。
その命令を出された時、キスレはとてもいい笑顔で承諾した。だって、それがお上の命令なのだろう?
処刑を待っている間に、ショカンに出会った。
『本当にそれでいいのかい?』
「うん?」
牢の前に立ち腰を折り、3m大の巨漢が覗き込んでいた。
『本当にそれでいいのかい?』
「さっきも言っていたが、何が言いてぇんだよ、大男。はっきり言ってくれ、オレは馬鹿なんだ」
『このまま死んでもいいのかい? もうやりたいことはないのか?』
「あぁ、そう言う事か。そりゃお上の命令だからな。受け入れるしかないだろ」
『お上がすべてなのか? お前の中じゃそれだけなのかい?』
「……オレの立場上、そうだって言うだろ」
『立場を無視したならば?』
「…………は?」
キスレがショカンのことを睨む。で? 何が言いてぇの?
『僕が君に居場所を用意してみせよう。だから、僕につかないか?』
「お上を裏切れ、と? オレに?」
『別に裏切らなくてもいい。僕に力を貸してくれないか?』
キスレとショカンの視線が絡まる。何かの葛藤があるのだろう。
「オレは仲間を犠牲にする奴だぜ?」
『構わんさ』
「仲間ってのは、勝利のためなら犠牲にするモンだろ」
キスレは嬉しそうに言うと、刀を振った。もう一発、炎の絨毯を。
そう思った時、目の前にはレイドが楯を構えた状態で突進してきていた。
ガキンと刀と楯がぶつかる。
「ぬご!?」
キスレはレイドに力負けし、殴り飛ばされてしまった。
何とも単純なやることだ。しかし、それ以上に難しい。
相手もこの魔大陸を踏破した、それだけのレベルがあるということだ。
護る。その一点においては譲るつもりはない。しかし、とそこでレイドは相手の全身を見た。
アシドよりも濃い蒼、藍と言ってもいいかもしれない色をした髪に同色の吊り目をした侍。東方の地域に伝わるキモノを着ていることから、コストイラに比べても、より侍然としている。
凶悪な肉食獣を思わせる笑みを浮かべる彼は、いきなり炎を纏ったかと思うと、戦場全体に炎の絨毯を敷いた。
「ぬ!?」
レイドは楯で守ることができたが、どこからかアレンの悶える声が聞こえた。今の炎を喰らってしまったのだろう。
レイドの頭が一気に血が上った。アレンを守れなかった自身への怒りもそうだが、それ以上に許せないことがある。アレンまで届いたということは、他の者達、相手にとっての仲間にまで届いたということ。つまり、こいつは仲間を巻き込んだのだ。
脳が沸騰しそうなほど熱い。
「貴様、今の攻撃なんだ? 仲間ではないのか?」
「……? 何を言っているんだ?」
「なぜ、仲間にまで攻撃をしたのだ!」
戦いの余波に髪を揺らしながら、レイドは怒りをぶつける。相手は何を言っているのか分からないという顔をしていたが、すぐにニヤリと笑った。
「何を言ってんだ? 仲間だって、勝利のためには犠牲にするモンだろ?」
キスレ・アガタ。侍う人の名家アガタ家の次男。
アガタ家は殿様にお仕えする侍う人を多く輩出し、最も信頼されている家系である。他にもカナエ家やトゥナカ家などがあるが、それでも殿様はアガタ家を最も信頼している。
そんな家系に生まれたのだから、キスレが侍う人を目指すのは必然だった。
殿様の隣にいるための最低限の立ち居振る舞いを学び、刀の腕も他人よりも磨いた。
家のことは兄に任せておけばいい。兄は病弱だが、頭が良い。頭の回転が速く、機転が利く。軍人というより、軍略家に向いている。
だからこそ、キスレは軍人のように前線で戦っていればよかった。時には要人の護衛を行い、時には魔物の討伐を行った。
そんなある日、殿様が演説をしている時に暗殺者が襲ってきた。その時に同僚が庇う形で救った。
暗殺者は同僚と相打ちになった。それを見た殿様は都殺場の豚を見るような目を向けた。
キスレは理解した。自分達は使い捨ての道具なのだ。仲間や部下ではなく、使い潰すものなのだ。
キスレは喜んだ。だってそうだろう? お上がそうしているのだ。お上、もとい導き手とは、進むべき道を示す者だ。つまり、お上がそれをしているということは、それが推奨されているということだ。
そこで、キスレは犠牲をすることになった。犠牲を必要なことなのだ。だって、殿様が推奨しているし。
キスレは刀を振っては炎を吐き出し、味方を巻き込んで敵を倒していく。
もちろん、味方を巻き込むような男に人気があるはずがない。同僚からはかなり嫌われていた。好感度はもうマイナスの域に入っていた。
しかし、更生することなく、キスレは犠牲を出し続けた。
犠牲者が5000人を超えた時、キスレは殿様から処刑の命令を受けた。テロリストだと思われたのだ。
その命令を出された時、キスレはとてもいい笑顔で承諾した。だって、それがお上の命令なのだろう?
処刑を待っている間に、ショカンに出会った。
『本当にそれでいいのかい?』
「うん?」
牢の前に立ち腰を折り、3m大の巨漢が覗き込んでいた。
『本当にそれでいいのかい?』
「さっきも言っていたが、何が言いてぇんだよ、大男。はっきり言ってくれ、オレは馬鹿なんだ」
『このまま死んでもいいのかい? もうやりたいことはないのか?』
「あぁ、そう言う事か。そりゃお上の命令だからな。受け入れるしかないだろ」
『お上がすべてなのか? お前の中じゃそれだけなのかい?』
「……オレの立場上、そうだって言うだろ」
『立場を無視したならば?』
「…………は?」
キスレがショカンのことを睨む。で? 何が言いてぇの?
『僕が君に居場所を用意してみせよう。だから、僕につかないか?』
「お上を裏切れ、と? オレに?」
『別に裏切らなくてもいい。僕に力を貸してくれないか?』
キスレとショカンの視線が絡まる。何かの葛藤があるのだろう。
「オレは仲間を犠牲にする奴だぜ?」
『構わんさ』
「仲間ってのは、勝利のためなら犠牲にするモンだろ」
キスレは嬉しそうに言うと、刀を振った。もう一発、炎の絨毯を。
そう思った時、目の前にはレイドが楯を構えた状態で突進してきていた。
ガキンと刀と楯がぶつかる。
「ぬご!?」
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