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3.魔法の森

14.紅玉の迷宮

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 アレン達は少し道を間違えていたらしい。森の中で方向感覚が狂ってしまっており、思っていたところと違うところにいた。地図上ではガレットのいる洞窟はなかったのだ。治癒院から真西に進んでいると思っていたが、200メートルほど南にずれていたようだ。



 ガレットが示してくれたおかげで気づけたが、このままだったらどこに行っていたのだろう。地図を見てみるとよくわからなかった。この森は本当に広大だ。管理者もきっといないのだろう。



 そんなこんなでアレン達は魔法の森での目的地の1か所、紅玉の迷宮に辿り着いた。



「成る程?力試し的な?」



「力試し?まぁ、えっと、そうですね。はい、そんな感じですね」



 本当は力試しでも経験値稼ぎでもないが、それでもいいかもしれない。強いやつと戦いたいだけのコストイラはそれ以上聞かないことにした。このアレンの言い方はたぶんだが強いやつと戦えるのだろう。



 実は、昨晩コストイラはガレットと戦っていた。否、遊ばれていた。アシドですら目で追えない速度と、軽々と振るわれる寸止めの拳から出る風圧でさえ骨を砕く威力を誇っていた。刀で斬りつけても傷一つとしてつくことのない防御力も兼ね備えている。コストイラは打ち砕かれたが、また一つ目標ができた。



 ヲルクィトゥとガレット。



 絶対に追いついてやる。















 洞窟の中は迷宮とは名ばかりに、一本道が続いていた。



「ようやく分かれ道がきたな」



 アレン達は十字路に立たされていた。十字路といっても完全な十字ではなく、結構曲がっているので、先が見えない。



 どこに進むべきか考えていると後ろに何かが落ちてきた。



 ばさりと、何か布が落ち、重なったような音。アレン達は振り返ってみると案の定、布があった。幅70センチほどの布だ。3回くらいに折りたたまれている。しかし、普通の布がこんなところにあるはずがない。布の見えている部分には骸骨の柄が書かれている。



 その布は自立しており、布の上部が持ち上がる。その上部、特に顔の部分が紅く光り輝き始める。そして、







 大爆発が起きた。







 空間から音が消えた。視界からは色が消える。肺は空気を求め喘ぐが、砂塵を吸い咳き込んでしまう。



 どういう生態をしてるんだ。



 自分の命を顧みず、自爆していくなんて。自傷ではなく自爆。そんな攻撃が何度も来るなんて考えると心が折れそうだ。これでも一定数存在しているなんて考えたくない。



 アレン達が起き上がろうとすると、淡い光が身を包んでいく。エンドローゼの回復魔法だ。エンドローゼは自身の怪我より他者の回復を優先していく。エンドローゼはげしゃあと胃の内容物を吐き出してしまう。アストロは強めにエンドローゼの肩を摑み、無理矢理上げさせる。



「やめなさい!死ぬわよ!」



「で、で、でも」



「先に逃げるわよ」



 ズザアと何かが引き摺られる音。音の主はステンノ―という魔物。左腕には丸楯をつけ、右手には斧を持った半人半蛇の魔物だ。



「殿はオレが務めてやる。安全なところを探せ」



 復活したコストイラは刀を抜きステンノ―と対峙する。後から後からステンノ―が出てくる。一人で戦えるのだろうか。



「出来るのですか?いえ、頼みます」



「それでいい」



 コストイラの気迫に押され、アレンは言葉を変える。頼まれてコストイラは親指を立て、炎を纏う。レイドがエンドローゼを担ぐ。



「武運を」



「早よ行け」



 シキもコストイラを見つめるが、何も言わず去っていく。



「来いよ。オレは簡単にはやられねェぞ」















「大丈夫ですか?エンドローゼさん」



「は、はい。だ、だ、大丈夫です」



「大丈夫なわけないでしょ。あんなにやって」



 エンドローゼを心配するが、アストロはキレている。



「あんなこと?」



「魔法をあんなに撃って大丈夫なわけないでしょ」



 レイドは爆発の寸前にエンドローゼを庇ったようなので、爆発のダメージはそんなにないようだ。



「す、す、すす、すみません。ま、まま、も、守ってもいただいて」



「いや、気にするな。私は楯だ。楯として役割を全うしたに過ぎない。礼を言われる筋合いはない」



 レイドの表情に少し影が差した。



 安全な場所を求めて、アレン達は奥へと歩かされる。















「ふっ!」



 コストイラは斧を躱し、ステンノ―の腕を斬り飛ばす。そして、刀を振り下ろすが、丸楯で受けられる。その隙にステンノ―の尾が脇腹を叩く。



「ガっ!」



 脇腹を押さえながら、ゴロゴロと転がり距離を取る。さっきまでコストイラのいたところには斧が振り下ろされていく。斧を避けながら立ち上がり、ステンノ―を一匹殺す。二振り目は楯で防がれてしまう。



 コストイラは小さく舌打ちする。



 コストイラは考えた。ガードされても攻撃を通したい。脳筋気味なコストイラらしい考えだが、もし出来たらなんと強いだろうか。



 そしてコストイラは一つの答えに辿り着いた。



 そう単純な力任せである。



 再び振り下ろす。ステンノ―は丸楯で防ごうとするが、コストイラは力に物を言わせ楯下の左腕を折る。そのまま、木でできた丸楯を割る。



『アアアアアッッッ!!!』



 痛みに半狂乱し、頭を狙い斧を振る。身を屈めて避けるが、右腕のないステンノ―がタックルを仕掛けてくる。僅かに痛みの残る脇腹にタックルされ、思わず小さく声が出てしまう。



 刀の柄で半人半蛇の魔物の頭を殴り、身を剥がす。折れた腕をぶらぶらとさせ、ステンノ―が突進してくる。



『アアア!!』



「ありがとう。オレはまだ死なねェ」



 刀身が輝いた。















 アレン達は明らかにボスがいそうな空間の前にいた。というか、空間の外から中を覗くとボスが見える。



「行きますか?待ちますか?」



「行きましょう」



 アレンの問いにアストロは即答する。



「あいつはきっと勝ってくる。だったら、私達はあいつの信用を裏切るべきではないわ。あいつは自分抜きでも安全が確保されているって信用しているんだから。それにあいつに自分抜きじゃ何も出来ないって思われるのが嫌!」



 最後が一番気持ちが篭っていた。これを押さえるのはコストイラを待つより長くなるだろう。



「行きましょう」



 アレン達はボスのいる空間に足を踏み入れた。
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