メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

文字の大きさ
51 / 684
3.魔法の森

15.迷宮の紅い主

しおりを挟む
 マイトゴーレムが2体は造れる量の粘土で造られたような紅い巨人がいる。いつ、どこで、誰が造ったのか、その何もかもが不明だ。気付いた時にはそこにいて、本能で知っているかのように来る者を襲った。



 ある剣士が言った。



「何だこいつ!」



 —―――知らない。



 ある魔術師が言った。



「どうしてこんなところに!」



 ――――こっちこそ教えてほしい。



 ある斥候が言った。



「こっちに来るな!!」



 ――――それは無理だ。本能には逆らえない。



 振るう腕は骨を折り、当たりどころが悪ければ体を破裂させた。時間がたつと自我が薄れていった。本能が強まっていった。



『—―――ォォオオオッ!!』



 気が付くと吠えていた。腕は赤く染まっており、足元には罅割れた地面が広がっている。罅の中心には潰れた冒険者達が埋まっている。



 あぁ、また今日も。いつまでこんな日が続くのだろうか。



 今日もレッドジャイアントは吠えた。















『オオオオオッッ!!』



「レイドッ!」



「ふんッ!」



 アシドに名前を言われ、自身の役割を察したレイドはレッドジャイアントの拳を楯で受け止める。動きの止まったところを槍で突き刺そうとするが、レッドジャイアントの繰り出したブレイズナックルは2回攻撃である。レイドに止められた右手とは別に、左拳が残っている。



 炎を纏う左拳は槍を叩き、相殺する。



『オオオオオッ!!』



 シキのナイフも拳で相殺し、アストロの炎魔術を半減で受け止める。アレンの矢などかすりもしない。絶対特訓させてやるとアストロは誓った。



『オオオオオッ』



 エンドローゼはその雄叫びに体が固まってしまう。



 そこそこある速度となかなかの攻撃力で5人の猛攻を相手取っていく。



 体力と時間だけが消耗していく。















 コストイラは走っていた。



 そして、道に迷っていた。



 迷宮はここにきて威力を発揮していた。コストイラは全然みんなと合流できていない。ときどき聞こえてくる雄叫びは反響しているため、雄叫びの主の方向が狂ってしまっている。



「くそっ!全方向から聞こえてくるような気がしてくるぞ!オレァそこまで耳が優れてるわけじゃねェんだよな」



 コストイラは走りながら文句を溢す。全速力で走っているが、その方向も間違っている。















『オオオオオッ!!』



 レッドジャイアントは固めた拳を地面に叩きつける。



 地面は罅割れ、6人はバランスを崩す。



『オオオッ』



 片膝をついたレイドに拳を放つ。レイドの横を炎の魔術が通り過ぎる。レッドジャイアントに炎は効きづらい。しかし、一瞬のスタンは取れる。よろめいたレッドジャイアントに力一杯の拳を叩きつける。



 立ち上がるレイドの右目は赤く染まっていた。



 自分よりはるかに格上が相手でも相手しなければならない。足がすくむ。しかし、レイドは楯である。対峙しなければならない。



 レイドは早鐘のように打つ心臓を無視し、真っ直ぐにレッドジャイアントを見つめる。



『オオオオオッ!!』



 レッドジャイアントは吠える。ただ吠える。



 レイドは楯を構える。



 レッドジャイアントが右手を振り上げると、胸から刃が生える。



 レッドジャイアントの体が崩れていく。何かが斬られた。大事な何かだ。崩れる砂の上に加工された石が鎮座していた。



「ようやく、見つけ、たぜ」



 コストイラが息を切らしながら、刀に付いた砂を払いながら呟く。



「不意打ちが成功してよかったな」



「そんな、切迫、してたのか?」



「膠着してたのよ」



 アレンは砂の上に落ちた石を拾い上げる。



「何だそれ?」



 コストイラの息が整ったところで、アレンに質問する。



「風魔鉄という鉱石です。特殊な霊力を放つ、魔道具製作や魔鉱人形作成にも使われるものです。これが欲しかったんですよ」



 アレンは嬉しそうにカバンにしまう。



「やっぱりあいつはこういうのが好きなのか?」



「ノーコメントで」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!

ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

処理中です...