63 / 684
4.ナカウへの道
7.囚人の宝物
しおりを挟む
魔物や人間の死体は放置していると、死霊系統の魔物になる。そのため、斃れたものは原形を留めないように処理する。しかし、訓練場や森の中、水中など人が滅多に立ち寄らない所での死体は処理できない。長らく放置された訓練場ほど、死霊系統の魔物が生まれやすい。
では、アレン達はどうしているのか。
答えは簡単。燃やしているのだ。敵を増やすのは面倒だからだ。それに死霊系統は姿が気色悪いから見ていたくないというのもある。そんな一行の前に新たな死霊系統の魔物が出てきた。
ゾンビプリズナー。
爛れ半分落ちた顔はあまり長く見ていられない。特徴的な白と黒の横縞の服、足に嵌められた重り付きの足枷。元々が囚人の者たちが労働奴隷として働かされ、死してなお回収されなかった囚人たちがゾンビプリズナーとなる。
『アアアアアアアアア!!』
ゾンビプリズナーは右足を振り上げ、足枷の重りを武器として振るう。床に衝突した重りは罅を作っていく。
「あんなのに当たったらひとたまりもねェな」
『オアア!!』
再び足枷を振るう。通り過ぎる鉄球の跡から闇色の魔術が出現する。
「あそこから魔術を放てるのか?」
唐突のことで回避が間に合わない。矢がゾンビプリズナーの左肩に刺さる。アレンが弓を引いたのかとアストロはアレンを見るが、矢を刺したのはアレンではなさそうだ。矢を刺したのはシキであった。しっかりしろよ、アレン。怯んだ隙を見てアシドが槍をゾンビプリズナーに叩きこむ。ゾンビプリズナーは足が縺れ、後ろに下がる。
さらに追い打ちをかける。刀がゾンビプリズナーの体を削っていく。しかし、倒れない。
『ゴォアッ!』
ゾンビプリズナーは反撃に出る。
全力で握られた拳を刀で防ぐ。拳が斬れていくのを気にしない。傷口からボタボタと肉が落ち、オレンジと黒が混じった煙が出てくる。
『グゥオオオオ!!』
ゾンビプリズナーが爛れた口内の肉を飛ばしながら歯を剥く。シキは気付かれないまま足の肉を削ぎ落し、バランスを崩させる。ゾンビプリズナーはつんのめり、狙いが逸れる。口の中に刀が入っていく。
頭が飛ぶ。ゾンビプリズナーの視界には自分の体が燃えているのが見えた。
あぁ俺は死ぬのか。
ついに死ねるのか。
「あんなにいろんな奴が守っていてんだ。相当なモンが眠ってんだろうな」
コストイラの足取りが軽そうに見える。鞭ばっかりだったから飴が欲しいのだろう。
「そうね。長らく放置されてたみたいだから鉱石も育ってそうよね」
そんなことを話していると明らかに何かありそうな部屋を見つけた。
「絶対ここだろ」
「あからさますぎて逆に何もなさそう」
中を覗くと、一つの箱が置いてある。
「……宝箱、だよな」
「……ミミックでは、ないですね」
コストイラはアレンに確認を取る。同じ轍は踏まない。それがコストイラ。コストイラが箱を開けると、石が1個入っていた。
「は?石1個?」
「あ、あ、紅くて綺麗ですね」
「それって…………」
「ま、魔紅石じゃないですか!!?」
価値の知らないコストイラは落胆し、同じく知らないエンドローゼは率直な感想を述べる。価値を知っているアストロとアレンは色めき立つ。コストイラは紅く光を反射する半透明の石を上に翳す。
「なんだ、魔紅石って?」
「魔紅石とは紅く輝く妖艶な光を放つ、とっても貴重な霊石なんです。その用途は多岐に渡り、特に多いのは建材、そして魔術道具です。建材でいえば、その半透明なことを利用してガラス細工のようなものを施すんです。貴族の御屋敷ではその細工された魔紅石の多さで権力者同士が無言の争いをするそうです。まぁ僕は見たことはないんですけどね。実態は分からないです。そして、魔紅石が魔術道具として使われる理由は、その魔力伝導率にあるんです。他の石に比べ、約94%も高いのです。この石を使った武器であれば、コストイラさんの刀に纏わせる炎の威力も格段に上がります。その刀の材料は確か白瓏石ですよね。暗算ですけど2,3倍は威力が変わりますよ」
「…………結局、どれくらいのモンなのか、ド素人にも分かるように頼むわ」
軽々しく聞いてしまったことを後悔した。アレンの言っていることが半分も分からない。まさか、アレンがここまで喋るやつだったとは。
「えっと。分かりやすくですか。そうですね、この前採った風魔鉄と比べて約35倍の価値があります」
「さ、さ、さ、さ35倍!?」
「ひぇ~~」
具体的な比較がなされ、価値の知らなかった者たちは驚きを隠せない。無表情がデフォルトのシキでさえ目を張った。
「ぜってー持ち帰ろうな」
コストイラは滅茶苦茶丁寧にカバンの中にしまった。
では、アレン達はどうしているのか。
答えは簡単。燃やしているのだ。敵を増やすのは面倒だからだ。それに死霊系統は姿が気色悪いから見ていたくないというのもある。そんな一行の前に新たな死霊系統の魔物が出てきた。
ゾンビプリズナー。
爛れ半分落ちた顔はあまり長く見ていられない。特徴的な白と黒の横縞の服、足に嵌められた重り付きの足枷。元々が囚人の者たちが労働奴隷として働かされ、死してなお回収されなかった囚人たちがゾンビプリズナーとなる。
『アアアアアアアアア!!』
ゾンビプリズナーは右足を振り上げ、足枷の重りを武器として振るう。床に衝突した重りは罅を作っていく。
「あんなのに当たったらひとたまりもねェな」
『オアア!!』
再び足枷を振るう。通り過ぎる鉄球の跡から闇色の魔術が出現する。
「あそこから魔術を放てるのか?」
唐突のことで回避が間に合わない。矢がゾンビプリズナーの左肩に刺さる。アレンが弓を引いたのかとアストロはアレンを見るが、矢を刺したのはアレンではなさそうだ。矢を刺したのはシキであった。しっかりしろよ、アレン。怯んだ隙を見てアシドが槍をゾンビプリズナーに叩きこむ。ゾンビプリズナーは足が縺れ、後ろに下がる。
さらに追い打ちをかける。刀がゾンビプリズナーの体を削っていく。しかし、倒れない。
『ゴォアッ!』
ゾンビプリズナーは反撃に出る。
全力で握られた拳を刀で防ぐ。拳が斬れていくのを気にしない。傷口からボタボタと肉が落ち、オレンジと黒が混じった煙が出てくる。
『グゥオオオオ!!』
ゾンビプリズナーが爛れた口内の肉を飛ばしながら歯を剥く。シキは気付かれないまま足の肉を削ぎ落し、バランスを崩させる。ゾンビプリズナーはつんのめり、狙いが逸れる。口の中に刀が入っていく。
頭が飛ぶ。ゾンビプリズナーの視界には自分の体が燃えているのが見えた。
あぁ俺は死ぬのか。
ついに死ねるのか。
「あんなにいろんな奴が守っていてんだ。相当なモンが眠ってんだろうな」
コストイラの足取りが軽そうに見える。鞭ばっかりだったから飴が欲しいのだろう。
「そうね。長らく放置されてたみたいだから鉱石も育ってそうよね」
そんなことを話していると明らかに何かありそうな部屋を見つけた。
「絶対ここだろ」
「あからさますぎて逆に何もなさそう」
中を覗くと、一つの箱が置いてある。
「……宝箱、だよな」
「……ミミックでは、ないですね」
コストイラはアレンに確認を取る。同じ轍は踏まない。それがコストイラ。コストイラが箱を開けると、石が1個入っていた。
「は?石1個?」
「あ、あ、紅くて綺麗ですね」
「それって…………」
「ま、魔紅石じゃないですか!!?」
価値の知らないコストイラは落胆し、同じく知らないエンドローゼは率直な感想を述べる。価値を知っているアストロとアレンは色めき立つ。コストイラは紅く光を反射する半透明の石を上に翳す。
「なんだ、魔紅石って?」
「魔紅石とは紅く輝く妖艶な光を放つ、とっても貴重な霊石なんです。その用途は多岐に渡り、特に多いのは建材、そして魔術道具です。建材でいえば、その半透明なことを利用してガラス細工のようなものを施すんです。貴族の御屋敷ではその細工された魔紅石の多さで権力者同士が無言の争いをするそうです。まぁ僕は見たことはないんですけどね。実態は分からないです。そして、魔紅石が魔術道具として使われる理由は、その魔力伝導率にあるんです。他の石に比べ、約94%も高いのです。この石を使った武器であれば、コストイラさんの刀に纏わせる炎の威力も格段に上がります。その刀の材料は確か白瓏石ですよね。暗算ですけど2,3倍は威力が変わりますよ」
「…………結局、どれくらいのモンなのか、ド素人にも分かるように頼むわ」
軽々しく聞いてしまったことを後悔した。アレンの言っていることが半分も分からない。まさか、アレンがここまで喋るやつだったとは。
「えっと。分かりやすくですか。そうですね、この前採った風魔鉄と比べて約35倍の価値があります」
「さ、さ、さ、さ35倍!?」
「ひぇ~~」
具体的な比較がなされ、価値の知らなかった者たちは驚きを隠せない。無表情がデフォルトのシキでさえ目を張った。
「ぜってー持ち帰ろうな」
コストイラは滅茶苦茶丁寧にカバンの中にしまった。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
エレンディア王国記
火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、
「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。
導かれるように辿り着いたのは、
魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。
王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り――
だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。
「なんとかなるさ。生きてればな」
手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。
教師として、王子として、そして何者かとして。
これは、“教える者”が世界を変えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる