メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

文字の大きさ
70 / 684
5.無縁塚

3.霊が宿る花畑

しおりを挟む
「どうすんの?すぐに五重塔に行くの?」



 装備を整え、宿屋に戻ってきたところでアストロが確認してきた。アレンは荷物を置きながら首を振る。



「いえ、先に新しく買った装備を慣らしておきたいです。なので店の方に教えていただいた洞窟に行きます」



 洞窟という単語を聞き、アストロは嫌そうな顔をする。アシドとコストイラがアレンの肩を叩く。任せろと言わんばかりの顔をしている。アレンにはもうどうすることも出来ないので任せよう。一晩でどうにかしてほしい。



 翌日、満足そうな顔をしたコストイラとアシドが出てきた。これは期待できるか?アストロの機嫌はより一層悪化していた。あれ?何か違くない?アレンがアシドとコストイラを見ると満足そうな顔は変わらない。しかし、その上で肩を竦めた。



「……え、ええ。それでは、人魚の洞窟と呼ばれるところに行きましょう」















 人魚の洞窟はナカウの出店通りから真西へ進み続ければ辿り着ける。その道中、アレン達は花畑に来ていた。百花繚乱、豪奢な花畑が目の前に広がっていた。アシドは手で傘を作り遠くまで見渡す。



「陽光に照らされている花畑。映えるな」



「まだ昼時ですがあまりもたもたしていると夜も更けてしまいます。急ぎましょう」



「待て。何か浮いているぞ」



 アシドは進行方向を見ながら報告する。アレンも目を凝らしてみる。



「あれは、ホロゴーストですね」



 前回アストロが雑に燃やしてしまった魔物だ。あまり時間がかかっていないのであまり情報を持ち合わせていない。



「そういえば前にガレットからもらった書には何か載っていないのか?」



 コストイラに言われ、アレンはガレットの書を取り出し、中をぱらぱらとめくる。



 ホロゴースト。三つ子の魂のような魔物。闇属性。知性はおそらく2,3歳時ほど。悪戯好きな臆病者。美味しくない。



「お、美味しくない?」



「食べたの?」



 アシドとコストイラが声に出して驚愕する。読んでいたアレンも引き気味である。



「ま、まぁ。倒しましょう」



 アレンは弓を引き絞る。影から射られた矢は見事にホロゴーストの中心を通り過ぎる。口の端が引くつく。アストロの溜め息が聞こえた。申し訳ない。



 アレンのミスを帳消しにするように魔術が発動する。三つ子のうち一匹を仕留める。残り二つの魂が狼狽える。



 花弁が舞う。視界が遮られ、ホロゴーストを混乱へと導く。そして、花弁に紛れてシキが一閃。人魂を断ち切る。



 花弁が舞い上がる。



 シキによるものではない。シキはその風に巻き込まれ、天高く舞い上げられる。



 半透明な緑色の肌。地から浮いた体。周りを飛ぶ蝶や人魂。



 霊がまだ、存在していた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!

ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

処理中です...