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6.紅い館
11.過去の遺物
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姉妹と戦った後にその館に何食わぬ顔をして泊れるほど神経が図太くないアレン達は、満場一致で野宿を決めた。霧の森の魔物は好戦的なものが多いとナカウで説明された。連戦につぐ連戦によって眠れないことを覚悟していたが、意外にも長時間眠れた。どうやら近くに吸血鬼姉妹が住んでおり、その強さを恐れて魔物が近付いてこないらしい。
アレンは野宿に使った薪を崩していく。レイドとシキは荷物をまとめていく。コストイラとアシドは敵が来ないか警戒する。
アストロは両手を頭の上にあげ体を伸ばす。一瞬だけ強調された胸にエンドローゼが嫉妬で下唇を噛む。
「それでは行きましょう」
アレン達の歩く道はすでに霧が晴れており、見通しが良くなっていた。だからといって決して歩きやすい道ではない。湖沿いに歩いているが、人工の道のはずなのに凸凹している。エンドローゼは数分も歩くとすでに疲れ始めていた。数十分経っても文句も言わずついてきていた。体力があるのかないのか分からない。数時間も歩くと石造りの建物を発見した。
明らかに使われなくなって長い景観だ。蔦が伸び放題で、石壁は欠けていた。正式な使われ方をされていないだろうが、人が使っている形跡がある。誰か確実にいる。しかし、それが今も使っているのかも分からない。
その時、後ろからがさりと音がした。
天之五閃。
世界に5人しかいない、剣の頂に至った者に与えられる称号。発足した詳しい年月も5人の個人的な名前や戦歴も、もし調べることが出来たら歴史的な大発見となるとさえ言われている。しかし、それも過去の称号である。
白髪の男は、天之五閃のうち4人と出会ったことがある。そのうちの1人は神速の刃と呼ばれる女性剣士である。力の強さではなく技の速さを求め天剣へ至りし者。レイピアを構え相対した彼女はこちらの弁明を許さず仕掛けてきた。原因が何だったのかは今となっては忘れてしまったが、様々な場面で白髪の男の後ろについてきた。
「なぜそんなに私に突っかかってくるのだ。そんなに怒っていて疲れないか?」
白髪の男は次々と繰り出される剣戟を捌きながら質問する。この時すでに両者のレベルはトップクラスであり、一般的な冒険者であれば、その攻防は捉えることさえも不可能であろう。
神速の名を冠しながら、彼女より白髪の男の方が速い。これが許せなかった。
網の目のような剣戟に白髪の男は刀をうまく使い往なし続ける。圧倒的なスピードに対して絶対的な技術差で彼女を往なしていく。レイピアを振るうたびに速度が上がっていく。上がっていくたびにレイピアの精度が下がっていく。そこを狙い白髪の男は刀でレイピアを突き、そのまま本人ごと押し込んだ。斬り、斬られを繰り返し、それなりの時間が経った時、彼女は倒れ、白髪の男はその頭に刀の切っ先を向けていた。
「これで満足か?私はこれにて行かせてもらおう」
「待って!」
白髪の男が刀を収め背を向けたことに怒り、呼び止める。
「命を賭した戦いに、情けをかけるつもり!?」
「……ふむ」
怒れる女に白髪の男は向き直り、自らの顎に触れる。
「殺せ、と?」
「そうだ」
「おかしくないか?」
「何が?」
女は本当に何を言われているのか分からず白髪の男を睨みつける。
「なぜ敗者が勝者にものを要求する」
納得してしまった女は黙り込むしかない。
「私は刀を振るうのが好きだ。強き者と出会えた時の高揚も捨てがたい。私は君と出会えた時もっとそれを感じた。だからこそ君を生かしたい。強くなり、また出会えるに来い。命を狩るのも情けをかけるのも勝者の特権だ」
「殺しに来い、と」
「構うまい。好きにすると良い」
白髪の男は笑顔で返した。
アレンは野宿に使った薪を崩していく。レイドとシキは荷物をまとめていく。コストイラとアシドは敵が来ないか警戒する。
アストロは両手を頭の上にあげ体を伸ばす。一瞬だけ強調された胸にエンドローゼが嫉妬で下唇を噛む。
「それでは行きましょう」
アレン達の歩く道はすでに霧が晴れており、見通しが良くなっていた。だからといって決して歩きやすい道ではない。湖沿いに歩いているが、人工の道のはずなのに凸凹している。エンドローゼは数分も歩くとすでに疲れ始めていた。数十分経っても文句も言わずついてきていた。体力があるのかないのか分からない。数時間も歩くと石造りの建物を発見した。
明らかに使われなくなって長い景観だ。蔦が伸び放題で、石壁は欠けていた。正式な使われ方をされていないだろうが、人が使っている形跡がある。誰か確実にいる。しかし、それが今も使っているのかも分からない。
その時、後ろからがさりと音がした。
天之五閃。
世界に5人しかいない、剣の頂に至った者に与えられる称号。発足した詳しい年月も5人の個人的な名前や戦歴も、もし調べることが出来たら歴史的な大発見となるとさえ言われている。しかし、それも過去の称号である。
白髪の男は、天之五閃のうち4人と出会ったことがある。そのうちの1人は神速の刃と呼ばれる女性剣士である。力の強さではなく技の速さを求め天剣へ至りし者。レイピアを構え相対した彼女はこちらの弁明を許さず仕掛けてきた。原因が何だったのかは今となっては忘れてしまったが、様々な場面で白髪の男の後ろについてきた。
「なぜそんなに私に突っかかってくるのだ。そんなに怒っていて疲れないか?」
白髪の男は次々と繰り出される剣戟を捌きながら質問する。この時すでに両者のレベルはトップクラスであり、一般的な冒険者であれば、その攻防は捉えることさえも不可能であろう。
神速の名を冠しながら、彼女より白髪の男の方が速い。これが許せなかった。
網の目のような剣戟に白髪の男は刀をうまく使い往なし続ける。圧倒的なスピードに対して絶対的な技術差で彼女を往なしていく。レイピアを振るうたびに速度が上がっていく。上がっていくたびにレイピアの精度が下がっていく。そこを狙い白髪の男は刀でレイピアを突き、そのまま本人ごと押し込んだ。斬り、斬られを繰り返し、それなりの時間が経った時、彼女は倒れ、白髪の男はその頭に刀の切っ先を向けていた。
「これで満足か?私はこれにて行かせてもらおう」
「待って!」
白髪の男が刀を収め背を向けたことに怒り、呼び止める。
「命を賭した戦いに、情けをかけるつもり!?」
「……ふむ」
怒れる女に白髪の男は向き直り、自らの顎に触れる。
「殺せ、と?」
「そうだ」
「おかしくないか?」
「何が?」
女は本当に何を言われているのか分からず白髪の男を睨みつける。
「なぜ敗者が勝者にものを要求する」
納得してしまった女は黙り込むしかない。
「私は刀を振るうのが好きだ。強き者と出会えた時の高揚も捨てがたい。私は君と出会えた時もっとそれを感じた。だからこそ君を生かしたい。強くなり、また出会えるに来い。命を狩るのも情けをかけるのも勝者の特権だ」
「殺しに来い、と」
「構うまい。好きにすると良い」
白髪の男は笑顔で返した。
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