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8.魔王インサーニアを討て

1.恐怖を終わらせる道

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 見下ろす魔王領にはよく見る西方式の城が鎮座していた。その周りには7本の塔が建っていた。真ん中の城は魔王城なのだろう。



 魔王城は丸っこい外観で全体的にどっしりしており、且つしっかりしている。上に伸びるようにして尖った塔は、頂上が隔離部屋のようにも見えた。塔の途中に窓がないのが原因だろう。外壁は分厚そうで半円アーチを描いた窓がたくさん取り付けられている。遠くからだとこれくらいが限界だ。



 7本の塔は小さな差異があれど大まかには同じデザインだった。シンプルな円柱に円錐が頂上にくっついているタイプの塔。7本はそれぞれ属性を想像しやすい色をしていた。



 コストイラが一本の塔を指す。



「一番近い紅い塔に最初向かおう」



 提案に誰も反対しない。アレン達は山を下りていく。















『インサーニア様』



 甲冑を身につけたパンタレストが一人の男を呼び止めた。男はローブの端を揺らしながら半身をこちらに向ける。



『パンタレストか。どうした』



 三白眼が細まりさらに鋭くなっている。インサーニアと親交のあまりないものが見れば呼吸すらも忘れしまうだろう。



 しかし、パンタレストは50年以上、下手すればインサーニアの妻――イライザよりもともにいるだろう。インサーニアはただ本当に疑問に思っているだけだと看破する。



『勇者たちがついに、この領地内に侵入しました。いかがしますか?』



『今は2人しかいないのだ、敬語でなくても。いや、もう何回言っているんだ。それで、幹部たちは何している』



『はい。現在は各々の塔で好き勝手やっております。集めますか?』



 パンタレストの提案にインサーニアは嫌そうな顔をしながら顎を撫でる。



『アイツらはな。集めたところで協力して何かができるわけでもない。止めておけ』



 インサーニアは窓の外を見る。正確には何の飾りもされていない石の塔を見る。



『奴等の強大な力は協力には向いていない。我が強すぎる』



『確かに、まぁ、そのように思いますね』



 パンタレストの目線が逸れる。



『何を話しているの?』



 2人の間に新しい声が割り込む。インサーニアはパンタレストから視線を切り、顔を向ける。



『これからの話だ、ショカン』



 ショカンと呼ばれた者は仮面の少年だった。少年といってもすでに身長が3メートルもあるので少年かどうかは微妙だ。少年は仮面の縁を触りながら考える。心当たりはある。前にロッドから無理矢理聞き出したことがある。



『僕には話せないの?』



 悲しげな声だ。自分一人仲間外れにされた気分のショカンは仮面越しにインサーニアを睨む。



『ショカン様これはですね』



『よせ』



 パンタレストが窘めようとして、インサーニアに止められる。



『ショカン。お前は弱い。だから話さん。お前が幹部に勝つ実力を持った時にでも話してやろう』



 インサーニアが去る。ショカンは父の姿が見えなくなるまで睨み続け、見えなくなると反対方向に歩く。



 幹部に勝つ実力。ショカンは魔王城から出て行き、塔の一つを落とすため、仲間の元へ向かった。
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