129 / 253
8.魔王インサーニアを討て
3.吹き抜ける風は死を運ぶ
しおりを挟む
アレン達は山道、上から2段目の森の中にいた。森と呼ぶには少し小さい気もするが、人工とは明らかに違う自然な状態ではあった。森と林の中間ぐらいだろうか。アレンには判定は難しかった。
森と林の違いは大きさしかない。鬱蒼としていれば森、ある程度大きさの揃っている木々が生えているのが林。樵の家系として森林をいっぱい見てきたが、この微妙なものは区別がつかない。すでに森の出口は見えていて、いつもに比べたら気が楽だ。
その時、風が吹いた。
爽やかで気持ちの良い風が肌を撫でる。あまりの気持ちよさに目を細める。
「あ、アレンさん」
何か大事なことに気付いたような声がした。この声はエンドローゼだろうか。
「アレン」
今度はアストロか。
「何d」
「動かないで」
アストロはアレンの声を遮り、制止させる。睨むアストロが怖くて、アレンは声に従う。温かいものが頬を包む。この温かみはエンドローゼの回復魔法だろう。アレンは、どこか怪我をしたのかと気になり、頬に触れる。ぬるりと指が嫌な感触を覚えた。痛みも走る。指を見ると血に濡れていた。
「な、な、治している最中なので、さ、さ、触らないでください!」
「は、はい」
睨まれてしまった。シキたちは武器を抜き、警戒心を剥き出しにしていた。
アストロはこの現象を知っている。昔、学舎で学んだことがある。確かこの現象の名前は。
「鎌鼬」
「え、何ですか?」
アレンが聞き返す。
「この現象は鎌鼬よ。風が吹いた時にスパッと皮膚が切られているというもので、今回と一緒ね」
「決まりですね。それで、原因と対処法は」
「尾が刃になったイタチよ。名前は現象名と同じカマイタチ」
「…………」
「ふざけているわよね」
アレンが微妙な顔をすると、心の中で思っていたことを鋭い眼力と共に暴露する。冷や汗が傷に染みた。痛い。
アストロの長い髪が風に揺れる。鎌鼬か。アレンもアストロも気付くのは早かった。しかし、反応が速いだけの2人と違いアシドは動いてもいた。アストロの白く陶磁器のような肌が傷つくほんの一瞬を槍が捕らえる。
風が止まる。丸くなっている茶色い毛皮のイタチだ。普通と違うのは尾が刃になっており、体は宙に浮き、その眼光はオレンジに輝いていることだろう。まさか止められるとは思っていなかったであろうカマイタチは、その場から離れようとバックスピンをかけようとするが、何かが閃いた。カマイタチの動きが止まり、ズルリと首が胴から離れる。
シキはナイフについて血を拭い取り、イタチの頭を摘まみ上げる。ごくりと唾を呑む音が聞こえた。え?食べる気ですか?
そんな考えを吹き飛ばすように突風が吹いた。
森と林の違いは大きさしかない。鬱蒼としていれば森、ある程度大きさの揃っている木々が生えているのが林。樵の家系として森林をいっぱい見てきたが、この微妙なものは区別がつかない。すでに森の出口は見えていて、いつもに比べたら気が楽だ。
その時、風が吹いた。
爽やかで気持ちの良い風が肌を撫でる。あまりの気持ちよさに目を細める。
「あ、アレンさん」
何か大事なことに気付いたような声がした。この声はエンドローゼだろうか。
「アレン」
今度はアストロか。
「何d」
「動かないで」
アストロはアレンの声を遮り、制止させる。睨むアストロが怖くて、アレンは声に従う。温かいものが頬を包む。この温かみはエンドローゼの回復魔法だろう。アレンは、どこか怪我をしたのかと気になり、頬に触れる。ぬるりと指が嫌な感触を覚えた。痛みも走る。指を見ると血に濡れていた。
「な、な、治している最中なので、さ、さ、触らないでください!」
「は、はい」
睨まれてしまった。シキたちは武器を抜き、警戒心を剥き出しにしていた。
アストロはこの現象を知っている。昔、学舎で学んだことがある。確かこの現象の名前は。
「鎌鼬」
「え、何ですか?」
アレンが聞き返す。
「この現象は鎌鼬よ。風が吹いた時にスパッと皮膚が切られているというもので、今回と一緒ね」
「決まりですね。それで、原因と対処法は」
「尾が刃になったイタチよ。名前は現象名と同じカマイタチ」
「…………」
「ふざけているわよね」
アレンが微妙な顔をすると、心の中で思っていたことを鋭い眼力と共に暴露する。冷や汗が傷に染みた。痛い。
アストロの長い髪が風に揺れる。鎌鼬か。アレンもアストロも気付くのは早かった。しかし、反応が速いだけの2人と違いアシドは動いてもいた。アストロの白く陶磁器のような肌が傷つくほんの一瞬を槍が捕らえる。
風が止まる。丸くなっている茶色い毛皮のイタチだ。普通と違うのは尾が刃になっており、体は宙に浮き、その眼光はオレンジに輝いていることだろう。まさか止められるとは思っていなかったであろうカマイタチは、その場から離れようとバックスピンをかけようとするが、何かが閃いた。カマイタチの動きが止まり、ズルリと首が胴から離れる。
シキはナイフについて血を拭い取り、イタチの頭を摘まみ上げる。ごくりと唾を呑む音が聞こえた。え?食べる気ですか?
そんな考えを吹き飛ばすように突風が吹いた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる