メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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8.魔王インサーニアを討て

4.吹き抜ける風

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 グリフォン。



 鷲の翼と上半身。獅子の下半身を待った魔物。名前は昔の言葉で曲がった嘴という意味だったか。前脚に仕込まれた鋭い鉤爪で牛や馬を摑み、飛び去っていくという。



 ときとして、自身より格上に当たるドラゴンとも争う時がある。



 そして性格は狡猾かつ獰猛だ。むやみやたらに飛び込んでくることは滅多にない。攻撃は慎重に行う。そして、攻撃するときは決まってある行動を起こす。















 突風が吹いた。



 アレン達は咄嗟に眼を細める。シキだけはその原因を睨みつける。そこには翼を大きく広げ、突風を生み出したグリフォンがいた。



『クゥアアアッッ!』



 一際大きな風を起こし、怯んだ隙に槍のように突進する。唯一怯まなかったシキはナイフを投擲し、グリフォンの左目を潰す。左目から血を垂れ流しながら首を振る。怯みが解消されたレイドはグリフォンの嘴を楯で殴る。仰け反るグリフォンの左目のナイフを抜き取り、そのまま首を一閃する。



 グリフォンはその残忍さに注目が集まりがちだが、真に注目すべきはその強靭さだろう。攻撃を受けながら反撃をする。むしろ、わざと攻撃を受けることで相手を油断させるスタイルを取る。



 首の傷は浅い。シキはグリフォンからの嘴攻撃を防御するしかない。しかし、シキがいる場所は空中。踏ん張れないため、弾き飛ばされ地面をバウンドする。



 グリフォンは大きな鉤爪で上から楯を抑えつける。そのままレイドを押しつぶそうとする。しかし、レイドのフィジカルはそれを許さない。レイドが必死になって耐えていると、コストイラとアシドが入り込む。グリフォンはコストイラの炎を嫌がり飛び退く。グリフォンが大きく一羽ばたきすると、風はコストイラ達の間を抜けていく。ぱっくりと皮膚が裂けた。アシドとレイドは痛みに顔を歪ませ、動きを鈍らせる。コストイラは歪ませるだけで鈍らせない。



 止まらないコストイラにグリフォンは焦り、上へと退避する。獅子の足に矢が刺さる。



『クゥアッ!』



 意識の外からの攻撃は予想以上に大きなダメージを与えた。アレンから矢を奪い投げつけたシキの姿は、アレンに精神的ダメージを与えていた。空中でよろめくグリフォンに追撃が入る。アレンが肩を叩かれる。



「気をしっかり持ちなさい」



 そして、グリフォンが燃えた。ゴウゴウと音を立てながら炎に包まれるグリフォンはたまらず地上へと降りる。地面をゴロゴロと転がり火を消そうとする。その後にこんな目に遭わせた忌々しい女を引き裂いてやろうと考えた。



 しかし、グリフォンが思うほど、地上は甘くない。シキがつけた傷とは反対側に切り傷を創る。傷口を炎が舐める。激痛。グリフォンは首を離す。



「残念」



 逃げた先にアシド。槍が首を捉え、滑る。つんのめる。



『クゥア』



 残念、と言い返すように短く啼く。ニヤリと笑った気さえした。嘴を思いっきり叩きつけ、アシドを地面に跪かせる。シキはグリフォンの足の矢を押し込む。



『グゥウアッ!?』



 激痛。踏ん張りが利かなくなる。鉤爪を振るい、牽制をするようにシキを追い払う。グリフォンは空に逃げようと翼を動かし、後ろ脚に力を入れる。矢によって創られた傷から血が噴き出す。飛び立つ体勢が崩れた。下からは炎を纏った男が地面を割りながら跳んでくる。



 初めて、初めて恐怖した。これまでも追い詰めてくるものはいた。しかし、恐怖を与えてくるものはいなかった。そんなグリフォンが今、恐怖している。



 刀は首の下半分を斬るとともに、傷口断面を焼き固める。炎は傷口だけでなくグリフォンの毛も焼いていく。重要な血管が焼き固められ脳にまで血が届かない。ズンとグリフォンは墜落した。















 グリフォンは死してなお強靭さを失っていなかった。誇りは命と共には落としていなかった。その態度にはアレンは感服していた。



 つまり、何が言いたいかと言うと、素材が切り出せないのだ。鉤爪を一本切り出すのに時間がかかり、その間にシキは鉤爪三本を切り出し終えていた。ホントごめんなさい。遅くてごめんなさい。残りの二本はシキがやってくれた。牙や爪を採取すると死体を燃やす。採取していて気付いたが、換金できる場所がないのではなかろうか。アレンはグリフォンの素材を懐にしまい、前を見る。現実を見る。目の前に広がるのは、崖だった。
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