メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

文字の大きさ
139 / 684
8.魔王インサーニアを討て

13.氷晶の檻

しおりを挟む
 バリと音がした。



 ブルードラゴンの動きが止まった。表情は分からないが、どこか怯えているようにも見える。



 バリバキと再び音が鳴った。



 音源は塀の向こうか。何の音だろうか。アレン達は少しだけ塀から距離を置く。コストイラはすでに柄を摑んでおり、戦闘態勢に入っている。アレンの目でも魔力を込めようが、壁を貫通して見ることは出来ない。



 冷気で脆くなったのかボロリと塀の一部が零れ、冷気が噴き出す。そこからボロボロと塀が崩れていく。ドガリと塀を壊し、魔物が現れた。体から冷気を放つ、白い印象を受ける魔物だ。魔物の視線が、コストイラ達からブルードラゴンに移る。



 この光景はフレアドラゴンの時と同じだ。デジャヴを感じる。確かあの時はこの後。



 魔物が左手を振るうと冷気が溢れ、ブルードラゴンを包み凍らせる。続いて、右手を振るいアレン達にも冷気を送る。アレン達は凍ることはなかった。アストロの炎の魔術がそれを防いでいた。両者は拮抗していた。



 常識と反するかもしれないが、炎と氷の関係は魔術的観点から見ると氷の方が強いのだ。氷は水属性魔術に分類され、それは炎魔術に強いことを示している。だというのに拮抗しているということは威力自体はアストロの方が上なのだろう。



『ラ―――――――』



 玲瓏な歌声が響く。目に見えるほどの白い霧が押し寄せる。魔術の熱に触れ、水滴となり地面や塀を濡らす。冷気の中に人影が突っ込んでいく。コストイラとアシドとシキの3人だ。一列になっており、戦闘のコストイラが炎を纏い、霧を溶かし後ろ2人分の道を切り開いていく。炎はとぐろを巻き、水平に進んでいく。今のコストイラを止めるものは何もなかった。















 氷の女王と呼ばれる魔物は気付いた時、いつの間にかカレトワに仕えていた。まるでそうするのが普通のように振る舞っていた。当たり前のようにカレトワは受け入れ、氷の女王は教えてもいないのに物の場所が分かっていた。



 受け入れはしたもののやはり疑問はある。カレトワも最初は首を傾げていた。何だこいつは、とも思ったが何も言わなかった。身の回りの世話を焼いてくれるので、便利だったので放置していた。



 氷の女王の身長は3メートルもある。2メートルと少ししかない塔の内部では女王は常に腰を折って生活しており、つらそうに見えた。だからカレトワは塔の改装をした。



 氷の女王はそれを感謝し、より一層、心より仕えるようになった。目の前に炎を纏う刀が出現した。



 あ、死ぬかも。



 そんなことを思った時には自然と体が動いていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!

ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

処理中です...