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10.境目果て
11.蒼い影が潜む巨大湖
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寒い地の湖は凍っているかどうか実際に見てみなければわからない。
アスタットの言葉で、意味は常識は疑えということだ。想像しただけの常識は、疑えどころか、信じるなという意味でも使われる。
さて、今アレン達は森の中にある湖に辿り着いていた。
初めての寒い地域の、初めてのその地の湖を目撃した。凍っていない。意外だ。すべてが凍っていないにしても表面は凍っていると思っていた。氷が割れた個所があったり巨大な氷山があったりを想像していたが違うようだ。少し残念。
湖の近くはただでさえ寒いこの地の気温がさらに下がっている気がする。
アレンは水を飲もうと湖に指先をつけるが、すぐに引っ込める。冷たい。アレンが左指を、右手で包むように掴みながら蹲るのを見ながら、アストロが笑いを我慢した顔でこちらを見ている。いっそのこと笑ってくれ。
アストロはコップを取り出し、水を汲む。その際に指先を水に触れさせてしまったのか、コップを左手に託すと右手を脇に挟んで温めている。
仕返しは今だ。
アレンは手で口元を隠しながら、アストロを見る。もちろん笑いを我慢した笑顔。アストロが小さな炎をアレンの目の前に通過させ、ビビらせてくる。
「なーにやってんだよ」
ドンとアシドがアレンの背を蹴ってくる。
「うわ、うわ、わあわあわわ」
「あっ」
アレンはバランスを崩し、湖に身を投げ出す。アシドは咄嗟にズボンのベルト部分を掴むがもう遅い。アレンは両手と顔を湖に着けることとなった。
アレンはがくがくと震えながら焚火に当たっている。アシドは悪いことをしたなと居心地悪そうに頭を掻きながら謝った。アストロはお前が悪いを貫きそうなので、そこは受け入れておこう。
エンドローゼは心配そうに体を寄せてくる。回復、看護の話になるとほぼ別人に変わる。いつもの自信のなさが嘘のようだ。
コストイラとレイドは心配はしているが特段優しくしてくるわけではない。チラチラとアレンの方を見ては自身の指先をグーパーさせている。
シキは興味なしとばかりに木に寄りかかり休憩している。シキに恋しているアレンにしてみれば、少し、ちょっと、微妙たるものだが、ショックを受ける結果に終わった。
「あったまれたか?」
「はい」
アレンは自身の手を揉みながら立ち上がる。
「もういいんならさっさとこの湖を迂回しよォぜ。結構でけェぞ、この湖」
コストイラが手で傘を作りながら遠くを見ている。しかし、水や雪での日の照り返しのせいで結局目を細めている。確かにコストイラの言う通り、この湖はでかい。対岸は見えるが、5㎞以上の直径はありそうだ。今日のうちに温泉地まで着きたい。早めに出発した方がいいだろう。
「行きましょうか」
「よっしゃ、出発だ」
コストイラが張り切って歩き出す。よほど寒い地から離れたいらしい。
道が整備されていないのだから、湖の畔も整備されているはずがない。先ほど、湖に落ちたばかりのアレンは少し外側を歩いている。どうにかして落としたい衝動に駆られるが、アストロは完璧に制御する。なお、アストロのチラ見は終わらない。
チラ見を目撃したエンドローゼはあらぬ誤解を加速させる。アシド、コストイラだけでなく、アレンまでも、その逆ハーレムの一員にしているのか。
カチャリとコストイラが刀を掴む。
「なんか出るぞ」
一気に警戒が高まる。
出る。もちろん魔物のことだろう。どこから出るのか。右か、上か、それとも後ろか。アレンが瞳に魔力を集める。
敵の位置は水の中か。
名前:ディープドラゴン
属性:水
レベル:58
HP:43848
A:1842
B:361
S:400
このステータスの高さはジャイアントイエティに匹敵する。こいつも巨大な魔物なのか。名前にドラゴンが付いているからには強いのだろう。レベルも58。今のアレンは55。シキは62.パーティとしては適正か。
ザッッパッッッ―――――ンッッッ!!!!! と水面を突き破り、ドラゴンの頭が出てくる。そのままズルズルと長い首が顕わになり、上空5m地点で動きが止まり、頭がこちらを向く。
こちらを睥睨する瞳は非常に静かで澄やかだ。オレンジの瞳は7人を一通り視界に入れていく。
「穏やかだな。どう仕掛ける」
「先手を取りましょう。後手に回ると面倒よ」
「わざわざ敵を作ることはあるまいて。素通れるのなら、素通ろう」
コストイラの問いに両極端な解答が返ってくる。
「平行線かよ」
コストイラは他4人の顔を見る。アレンが口を開こうとしたとき、シキが割り込む。
「来る」
全員が一斉にディープドラゴンの方を見る。ディープドラゴンは上を向き、口に何かを溜めていた。これは誰でもわかる。攻撃だ。アレン達は、とっくに後手に回っていたのだ。
『キシャアアアアアアアアアアアッッッッ――――!!!』
叫びとともに泡状の魔力の塊が吐き出された。レイドは全員の前に立ち、楯を構える。アストロはレイドの楯の横から右手を出し、魔術を放つ。
「ほぅら、面倒事」
「ぐ」
アストロが出した魔術は雷。泡の一つに当たると他の泡に伝わり、伝わり、さらに伝わり、次々と爆発していく。雷はそのまま、ディープドラゴンにもあたる。
『キシャアアアア!!』
口内が爆発してお怒りのようだ。ディープドラゴンは前鰭を思い切り水に叩きつけ、大波を起こす。0度に近い温度の水だ。レイド達はギョッとして全力疾走で逃げる。アレンは先ほど水を浴びたばかりだからか逃げ足が速い。火事場の馬鹿力だ。限界を超えている走りは意図的には出せない。トラウマレベルだったのか、とアシドは反省させられる。
アシドはある一点で引き返す。
波は収まっていた。
アスタットの言葉で、意味は常識は疑えということだ。想像しただけの常識は、疑えどころか、信じるなという意味でも使われる。
さて、今アレン達は森の中にある湖に辿り着いていた。
初めての寒い地域の、初めてのその地の湖を目撃した。凍っていない。意外だ。すべてが凍っていないにしても表面は凍っていると思っていた。氷が割れた個所があったり巨大な氷山があったりを想像していたが違うようだ。少し残念。
湖の近くはただでさえ寒いこの地の気温がさらに下がっている気がする。
アレンは水を飲もうと湖に指先をつけるが、すぐに引っ込める。冷たい。アレンが左指を、右手で包むように掴みながら蹲るのを見ながら、アストロが笑いを我慢した顔でこちらを見ている。いっそのこと笑ってくれ。
アストロはコップを取り出し、水を汲む。その際に指先を水に触れさせてしまったのか、コップを左手に託すと右手を脇に挟んで温めている。
仕返しは今だ。
アレンは手で口元を隠しながら、アストロを見る。もちろん笑いを我慢した笑顔。アストロが小さな炎をアレンの目の前に通過させ、ビビらせてくる。
「なーにやってんだよ」
ドンとアシドがアレンの背を蹴ってくる。
「うわ、うわ、わあわあわわ」
「あっ」
アレンはバランスを崩し、湖に身を投げ出す。アシドは咄嗟にズボンのベルト部分を掴むがもう遅い。アレンは両手と顔を湖に着けることとなった。
アレンはがくがくと震えながら焚火に当たっている。アシドは悪いことをしたなと居心地悪そうに頭を掻きながら謝った。アストロはお前が悪いを貫きそうなので、そこは受け入れておこう。
エンドローゼは心配そうに体を寄せてくる。回復、看護の話になるとほぼ別人に変わる。いつもの自信のなさが嘘のようだ。
コストイラとレイドは心配はしているが特段優しくしてくるわけではない。チラチラとアレンの方を見ては自身の指先をグーパーさせている。
シキは興味なしとばかりに木に寄りかかり休憩している。シキに恋しているアレンにしてみれば、少し、ちょっと、微妙たるものだが、ショックを受ける結果に終わった。
「あったまれたか?」
「はい」
アレンは自身の手を揉みながら立ち上がる。
「もういいんならさっさとこの湖を迂回しよォぜ。結構でけェぞ、この湖」
コストイラが手で傘を作りながら遠くを見ている。しかし、水や雪での日の照り返しのせいで結局目を細めている。確かにコストイラの言う通り、この湖はでかい。対岸は見えるが、5㎞以上の直径はありそうだ。今日のうちに温泉地まで着きたい。早めに出発した方がいいだろう。
「行きましょうか」
「よっしゃ、出発だ」
コストイラが張り切って歩き出す。よほど寒い地から離れたいらしい。
道が整備されていないのだから、湖の畔も整備されているはずがない。先ほど、湖に落ちたばかりのアレンは少し外側を歩いている。どうにかして落としたい衝動に駆られるが、アストロは完璧に制御する。なお、アストロのチラ見は終わらない。
チラ見を目撃したエンドローゼはあらぬ誤解を加速させる。アシド、コストイラだけでなく、アレンまでも、その逆ハーレムの一員にしているのか。
カチャリとコストイラが刀を掴む。
「なんか出るぞ」
一気に警戒が高まる。
出る。もちろん魔物のことだろう。どこから出るのか。右か、上か、それとも後ろか。アレンが瞳に魔力を集める。
敵の位置は水の中か。
名前:ディープドラゴン
属性:水
レベル:58
HP:43848
A:1842
B:361
S:400
このステータスの高さはジャイアントイエティに匹敵する。こいつも巨大な魔物なのか。名前にドラゴンが付いているからには強いのだろう。レベルも58。今のアレンは55。シキは62.パーティとしては適正か。
ザッッパッッッ―――――ンッッッ!!!!! と水面を突き破り、ドラゴンの頭が出てくる。そのままズルズルと長い首が顕わになり、上空5m地点で動きが止まり、頭がこちらを向く。
こちらを睥睨する瞳は非常に静かで澄やかだ。オレンジの瞳は7人を一通り視界に入れていく。
「穏やかだな。どう仕掛ける」
「先手を取りましょう。後手に回ると面倒よ」
「わざわざ敵を作ることはあるまいて。素通れるのなら、素通ろう」
コストイラの問いに両極端な解答が返ってくる。
「平行線かよ」
コストイラは他4人の顔を見る。アレンが口を開こうとしたとき、シキが割り込む。
「来る」
全員が一斉にディープドラゴンの方を見る。ディープドラゴンは上を向き、口に何かを溜めていた。これは誰でもわかる。攻撃だ。アレン達は、とっくに後手に回っていたのだ。
『キシャアアアアアアアアアアアッッッッ――――!!!』
叫びとともに泡状の魔力の塊が吐き出された。レイドは全員の前に立ち、楯を構える。アストロはレイドの楯の横から右手を出し、魔術を放つ。
「ほぅら、面倒事」
「ぐ」
アストロが出した魔術は雷。泡の一つに当たると他の泡に伝わり、伝わり、さらに伝わり、次々と爆発していく。雷はそのまま、ディープドラゴンにもあたる。
『キシャアアアア!!』
口内が爆発してお怒りのようだ。ディープドラゴンは前鰭を思い切り水に叩きつけ、大波を起こす。0度に近い温度の水だ。レイド達はギョッとして全力疾走で逃げる。アレンは先ほど水を浴びたばかりだからか逃げ足が速い。火事場の馬鹿力だ。限界を超えている走りは意図的には出せない。トラウマレベルだったのか、とアシドは反省させられる。
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