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11.妖怪の山
11.ほら、面倒事だよ
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面倒事。
それは遭いたくないものの代表格。それに遭ったら最後、ロクな目に合わない。後から振り返った時、遭っていてよかったなどと言えても、その場では嫌なのだ。
大抵の場合、外部の力により、自分の元までやってくる。ごく稀に自分が引き鉄になることがある。
今回の発端はアシドの持ってきた情報、森にハイウィザードがいるというものだ。
「ガッハハッ! 分かってるなぁ、オマエ!」
豪快に笑う男がアシドの背を叩いている。アシドは引き攣った顔で受け入れている。いや、あれは諦めている。持たされている盃にドプドプと酒が注がれる。
どうしてこうなった。
冷や汗をかきながらアレンはこれまでを振り返る。
「そういえば、さっき、ハイウィザードを見たぞ」
「え?」
森にハイウィザードが出たらしい。ハイウィザードは知能のある魔物だ。言葉を離せなくても理解はできるレベルだ。ハイウィザードは普段、廃村などにいるため、森にいることは少ない。絶対に何かある。その何かが自分たちの邪魔をしなければいいのだが。
そんなことを思いながらいたからだろうか。湖岸の砂場が終わり、森に足を踏み入れることとなった。その森の中からちらりと魔物が見えた。
「伏せろ」
全員が叢に隠れる。すぐに対処しなかったのは、魔物の種類だ。
ガーゴイル。普通は洞窟に住んでいる魔物だ。森の中にいるということは、近くに洞窟があるということか。
ガーゴイルは何かを探しているかのように草をかき分けている。ガーゴイルは何も見つからなかったのか、首を傾げている。頭を長い爪で掻き、キョロキョロと見渡し、移動する。
「何を探しているんでしょうね」
「さぁな。けど、野生じゃなさそうだな。とりあえず避けて通るか」
「そうですね。確実に面倒事ですしね」
「え? あ、たー、助けないんですか? こ、こ、困っているみたいですけど」
「ありゃ、面倒事だ。関わったら命が足りねェぞ」
「そ、そ、その時はわ、わ、私が治します」
小声で会話しているはずなのに、強く鋭い言葉は全員にはっきりと聞こえた。その意思は非常に硬いことを窺わせ、コストイラは言い争うのを諦めた。
「あ」
アストロが短く声を出す。何かと思いアストロの視線の先を見ると、
『ナンダキサマラ』
ガーゴイルが顔を覗かせていた。
「あ、えっと」
アレンがどうしようと脳内を加速させていると、シキが動いた。誰の気にも止まることなく、ガーゴイルの後ろに回り、ガーゴイルの首を捻る。
『グ?』
ガーゴイルは何が起こったのか分からないまま、倒れる。保険として首にナイフを突き立てておく。
「………こいつ喋ったな」
「……そうですね」
以前にも言葉を話すガーゴイルに出会ったことがある。確か、あのガーゴイルは魔王軍だった。もしかしてこのガーゴイルも何かの組織に属しているのだろうか。
『おい、クロッツェ。何か見つけたか?』
別のものの声。よくわからないが、おそらくクロッツェとはこのガーゴイルの名前なのではないだろうか。返事がないのは怪しまれてしまう。どうしよう。
シキが親指を立てた。何か策があるのだろうか。
動向を見守るため、叢に身を隠したままにしておく。シキはガーゴイルの死体を目の付きやすい場所に移動させる。
『クロッツェ? どうした。何かあったのか? おい、クロッツェ?』
ガーゴイルを探していたのはハイウィザードだ。彼はガーゴイルを見つけると、足早に近づいてくる。シキの手際が良く、遠目からでは生きているのか死んでいるのか分からない。
『クロッツェ?』
ハイウィザードが怪訝な顔をしながら近づく。その足取りは明らかに重い。すでに半分以上気付いているのかもしれない。
『うん?』
ハイウィザードガーゴイルの首元に刺し傷を目にする。
その瞬間、後ろから口元を塞がれる。ガーゴイルの腰に括り付けられていた布だ。何のための布か分からない。ハイウィザードは叫ぶことすら許されず、首を掻き切られた。そのまま布が口元に押し込められていき、ミリッと首が取れる。
「上手くいった」
シキが、表情の変わらないがおそらくドヤ顔をしながら、こちらに親指を立てる。
「若干ばれてた気もするんですけど、これは成功なんですか?」
「成功」
「いや、でもなんか」
「成功」
「えっと」
「成功」
「成功だよ」
「………はい」
ズイッとキスのできる位置にまで顔を近づけられ、羞恥と圧力に負け、アレンは成功を認める。
「どうする? まだ引き返せそうだけど」
「僕個人としては引き返したいですね」
「オレは行きてェな。何探してたのかは気になる。めっちゃ気になる」
「確かに気になりますけど」
アレンはちらりと2体の魔物の体を見る。そして仲間を。任せるという目で見られており、アレンは困ってしまう。
「ほら、見ろ。これまた森では珍しいボーンレッドの姿だ。誘っている。誘っているぞ、アレン」
「分かりましたよ。行きましょう。でも危ないと判断したら逃げますよ」
「分かってるって」
アシドは嬉しそうにアレンから離れる。自主的にボーンレッドの尾行を始めるアシドに溜息を漏らす。アレンをはじめ、エンドローゼ達も諦めてついていくことにした。
それは遭いたくないものの代表格。それに遭ったら最後、ロクな目に合わない。後から振り返った時、遭っていてよかったなどと言えても、その場では嫌なのだ。
大抵の場合、外部の力により、自分の元までやってくる。ごく稀に自分が引き鉄になることがある。
今回の発端はアシドの持ってきた情報、森にハイウィザードがいるというものだ。
「ガッハハッ! 分かってるなぁ、オマエ!」
豪快に笑う男がアシドの背を叩いている。アシドは引き攣った顔で受け入れている。いや、あれは諦めている。持たされている盃にドプドプと酒が注がれる。
どうしてこうなった。
冷や汗をかきながらアレンはこれまでを振り返る。
「そういえば、さっき、ハイウィザードを見たぞ」
「え?」
森にハイウィザードが出たらしい。ハイウィザードは知能のある魔物だ。言葉を離せなくても理解はできるレベルだ。ハイウィザードは普段、廃村などにいるため、森にいることは少ない。絶対に何かある。その何かが自分たちの邪魔をしなければいいのだが。
そんなことを思いながらいたからだろうか。湖岸の砂場が終わり、森に足を踏み入れることとなった。その森の中からちらりと魔物が見えた。
「伏せろ」
全員が叢に隠れる。すぐに対処しなかったのは、魔物の種類だ。
ガーゴイル。普通は洞窟に住んでいる魔物だ。森の中にいるということは、近くに洞窟があるということか。
ガーゴイルは何かを探しているかのように草をかき分けている。ガーゴイルは何も見つからなかったのか、首を傾げている。頭を長い爪で掻き、キョロキョロと見渡し、移動する。
「何を探しているんでしょうね」
「さぁな。けど、野生じゃなさそうだな。とりあえず避けて通るか」
「そうですね。確実に面倒事ですしね」
「え? あ、たー、助けないんですか? こ、こ、困っているみたいですけど」
「ありゃ、面倒事だ。関わったら命が足りねェぞ」
「そ、そ、その時はわ、わ、私が治します」
小声で会話しているはずなのに、強く鋭い言葉は全員にはっきりと聞こえた。その意思は非常に硬いことを窺わせ、コストイラは言い争うのを諦めた。
「あ」
アストロが短く声を出す。何かと思いアストロの視線の先を見ると、
『ナンダキサマラ』
ガーゴイルが顔を覗かせていた。
「あ、えっと」
アレンがどうしようと脳内を加速させていると、シキが動いた。誰の気にも止まることなく、ガーゴイルの後ろに回り、ガーゴイルの首を捻る。
『グ?』
ガーゴイルは何が起こったのか分からないまま、倒れる。保険として首にナイフを突き立てておく。
「………こいつ喋ったな」
「……そうですね」
以前にも言葉を話すガーゴイルに出会ったことがある。確か、あのガーゴイルは魔王軍だった。もしかしてこのガーゴイルも何かの組織に属しているのだろうか。
『おい、クロッツェ。何か見つけたか?』
別のものの声。よくわからないが、おそらくクロッツェとはこのガーゴイルの名前なのではないだろうか。返事がないのは怪しまれてしまう。どうしよう。
シキが親指を立てた。何か策があるのだろうか。
動向を見守るため、叢に身を隠したままにしておく。シキはガーゴイルの死体を目の付きやすい場所に移動させる。
『クロッツェ? どうした。何かあったのか? おい、クロッツェ?』
ガーゴイルを探していたのはハイウィザードだ。彼はガーゴイルを見つけると、足早に近づいてくる。シキの手際が良く、遠目からでは生きているのか死んでいるのか分からない。
『クロッツェ?』
ハイウィザードが怪訝な顔をしながら近づく。その足取りは明らかに重い。すでに半分以上気付いているのかもしれない。
『うん?』
ハイウィザードガーゴイルの首元に刺し傷を目にする。
その瞬間、後ろから口元を塞がれる。ガーゴイルの腰に括り付けられていた布だ。何のための布か分からない。ハイウィザードは叫ぶことすら許されず、首を掻き切られた。そのまま布が口元に押し込められていき、ミリッと首が取れる。
「上手くいった」
シキが、表情の変わらないがおそらくドヤ顔をしながら、こちらに親指を立てる。
「若干ばれてた気もするんですけど、これは成功なんですか?」
「成功」
「いや、でもなんか」
「成功」
「えっと」
「成功」
「成功だよ」
「………はい」
ズイッとキスのできる位置にまで顔を近づけられ、羞恥と圧力に負け、アレンは成功を認める。
「どうする? まだ引き返せそうだけど」
「僕個人としては引き返したいですね」
「オレは行きてェな。何探してたのかは気になる。めっちゃ気になる」
「確かに気になりますけど」
アレンはちらりと2体の魔物の体を見る。そして仲間を。任せるという目で見られており、アレンは困ってしまう。
「ほら、見ろ。これまた森では珍しいボーンレッドの姿だ。誘っている。誘っているぞ、アレン」
「分かりましたよ。行きましょう。でも危ないと判断したら逃げますよ」
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