メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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11.妖怪の山

15.湖の悪魔

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 レイベルスに教えられた河童の里に行くには、岸沿いに歩けとのことだったので、湖まで戻ることにした。レイベルスの話によると、あの湖にはかつて、あの神社で祀られていた神様が住んでいたらしい。その時は神様になる前の状態だったのだとか。神様って成れるものなのか。その後、その龍神様がどうなったのかは知られていない。一説では魔大陸に飛んだと言われているが、それはないだろう。魔大陸ができたのは350~500、もしくは~600年前だと言われている。龍神様が飛び去ったのは600~700年前だからだ。

「あの時の黄龍は龍神じゃないんだよな」
「そうですね。龍を呼ぶ何かがあったのか、龍を生む何かがあったのかは分かりませんが、ここは龍神様の聖地。龍が集まってもおかしくないですからね」
「龍神の聖地ってことは、クロゴロ教の聖地ってことでしょ?何で人が少ないのかしら。クロゴロ教ってそういう宗教だったっけ?」

 アレンの説明を聞き、不思議に思ったことを質問する。アレンは歩きながら顎に手を当て、考える。

 クロゴロ教は龍信仰の宗教だ。龍の暴力的な強さが神がかっており、それこそが真理するとする集団。力こそが正義。その力、暴力の化身こそが龍。龍こそが支配者であり、民の選定も行う。龍神が主神であり、他の竜やドラゴンも信仰対象。そして、龍種全体の殺傷も禁じている。10年に1回は聖地巡礼も行っている。そのため、聖地の周りに栄えた都市があってもおかしくない。

「そんな宗教じゃないはずですよ。確かにおかしいですね。東方の暮らしが肌に合わなかったんですかね」
「そりゃねェだろ。多少その理由の奴がいても全員ってことはねェだろうぜ。もっと他にも理由があるはずだろ」

 その通りだ。熱心な信者であれば、多少の我慢をする者がいるはずだ。凶悪な魔物でもいるのか、建物が作れない土壌なのか。とにかく何かがあるはずなのだ。

「見えてきたぞ」

 アシドの報告により、意識が前に向く。陽光に照らされ、きらきらと光を反射する湖は、先ほどまで殺し合いをしていたとは思えないほど爽やかだ。

『アァー』

 空をアックスビークが飛んでいる。本来ならすぐに倒しにかからなければならないのだが、その光景にマッチしており、反応が遅れる。アックスビークは空中でドリルのように回転し始める。アレン達は慌てて、対処しようと武器を抜く。アックスビークの体が横に飛んだ。アレン達の元には、パラパラと小石が落ちてくる。何者かが岩をぶつけたのだ。

 岩が飛んで来た方向を見て、アレンはあらん限りに見開く。あるのは湖。そして、その向こうには深紫の肌の巨大な悪魔がいた。

「ぴっ」

 エンドローゼから小鳥のような声が出た。え?エンドローゼ、ここから見えんの?

『ォォォ………』
『アァーー』

 向こう岸からでも声が聞こえた。明確には分からないが、あの傷からして、バルログの右肩は2,3日で治るとは思えない。左腕1本では攻撃の間隔はそんなに短くないだろう。攻撃を当てられたアックスビークはバルログに向かって威嚇する。その大きく開いた口に岩が入りこみ、嘴の付け根が裂け、血の泡を吹く。アックスビークは羽ばたかなくなり、落ちてくる。ビクンビクンと痙攣して、やがて動かなくなる。

「これは、ここからとっとと離れて隠れるべきのやつだな」

 コストイラがポツリと呟くと、全員が心の中で全力で肯定する。そして、湖の方から岩が飛んでくる。

「走れェ!!」

 コストイラの号令に、全員が森の中に避難する。その後も岩が2,3個飛んでくる。

「止んだ?」
「止みましたね」
「あの巨人の様子は?」
「こちらを見ていますね。我々を探しているようです。ただ、見失っていますね。静かに見つからないように移動しましょう」
「よし、行こう。方向はあっちだな」

 コストイラはレイベルスに言われた河童の隠れ里の方へ歩き出す。

「ねぇ、待って」
「ん?」
「エンドローゼだけいないんだけど」
「は?」

 キョロキョロと見渡すが、視線の通る範囲にはいない。

「マジで? もう夕方で日が沈みそうって時にアイツ探すの? 今日は徹夜か?」
「仕方ないでしょ。ほら、探すわよ」
「あ、待ってください」

 すぐに探しに行こうとする面々に、アレンは制止をかける。アストロはアレンを鋭い目で睨む。もし相手を殺せる目というものがあるのだとするなら、こういう目なのだろう。

「エンドローゼを見捨てる気?」
「い、いえ。そういうことではなく、僕の使える魔術の中に、味方の位置を探るものがあります」
「それを早く言いなさい」

 より一層鋭く睨まれてしまった。アレンは魔力操作に集中する。ぽつぽつと赤い点が表示される。これはコストイラ達だ。探知の円を徐々に広げていく。パラパラと青い点が表示される。エンドローゼと思われる赤い点は。

「え?」
「どうした?」
「見つけたの?」
「おそらく見つけたのですが」
「おそらく?」
「確実です。はい。絶対これはエンドローゼさんです。すごい勢いというか、えっと、スピードで動いていますね」
「すごいスピード?」

 そう、凄いスピードだ。この速度は足の速さではない。あり得るのは、

「エンドローゼさんは河に流されているのかもしれません」
「え!?」
「行くぞ! 案内しろ!」
「はい」

 アレン達は走り出す。エンドローゼを助けるために。アレンが気がかりなのは、エンドローゼと思しき赤い点が白い点に向かって流れていることだ。

 影が伸び、日が半分になる中、ただ、この光景を月は見ていた。
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