208 / 684
12.世界樹
1.端の森
しおりを挟む
河童の里を出発する際、世界樹のある方角を教えてもらった。東にまっすぐ進めばいいらしい。途中には古代の遺跡があるらしい。なんか面倒事の臭いがするが、遺跡と聞いてコストイラとアシドが目を輝かせていた。きっと寄ることになるだろう。
「世界樹か」
コストイラが少し上を向き、考えるような姿勢を見せる。何か心当たりがあるのだろうか。
「知らんなァ」
知らないんかいとアレンが心の中でツッコミを入れる。
「誰か知っている人いるか?」
「えっと、え、せ、せ、世界樹は天を、そ、そ、空を支えている巨大なじゅ―樹木です。そ、そ、その根はめ、めい、め、冥界に通じているとき、聞いたことがあります」
回答がアストロから来ると思っていたコストイラは、エンドローゼから来たことに驚いた。
「あら、エンドローゼも知っているのね」
「こ、こ、子供の頃に、よ、読んだことがあったんです」
そういえば、皆が15年以上生きているのに、誰の過去も知らない。8年の付き合いのあるコストイラ、アシド、アストロも互いのことを出会う前は一切知らない。誰も触れようともしていない。繊細なものでもかかわるかのように、扱わない。
「天を支えるってこったぁ、天まで届いてるってことだろ? こっから見えてもおかしくないんじゃね?」
コストイラの疑問ももっともだ。それについてはどう説明されているのだろう。皆の視線がエンドローゼに向く。
「え、あ、え、えっと、えっと」
急に視線が集まり、慣れないエンドローゼは慌ててしまう。
「何も書いてないわ。遠くから見た描写は載ってないわよ」
「じゃ、オマエでも分かんねェんだな」
「お前って言うな。まぁ、案外魔力か何かで光が屈折して、見えないようになっているのかもしれないわね」
「もっと見てみたくなったわ」
コストイラがわくわくした足取りで歩く。
「つか、無視しちゃったけど、根っこは冥界につながってんの?」
コストイラは想像できず、首を傾げてしまう。アレンも分かっていない。根がトンネルのようになっているのだろうか。それとも、数千mの幹に対応して数百mの根っこがあるのだろうか。
「見えてきたぞ、森だ」
東方の地域、妖怪の山の端の森に辿り着く。山にあった森の様子とは少し違うものとなっていた。山の森は生い茂る紅葉の樹木の森だったが、ここは緑々した森だ。木漏れ日の溢れている様子は幻想的に見えた。
「どんな魔物が出ると思う?」
すでに魔物が出ることが前提になっているが、誰も突っ込まない。当たり前になっているからだ。
「明るめな森だからな、植物系、アルラウネだな」
「鳥系もね。シーグルかアックスビークかな」
「妖精も住んでいそうだな。フェアリーアーチャー」
アシド、アストロ、レイドが思い思いに予想する。正直全部ありそうだ。
「答え合わせといこう。行くぜ」
結論から言おう。
魔物が出てこなかった。滅茶苦茶に身構え、意気揚々と臨んだにもかかわらず、出てこなかった。
最初は、オルトロスのようにどこからか観察しているのだと思っていた。警戒を解かず、慎重に歩み、奥へと進んでいった。すると、どういうことだろう。森の奥の洞窟に辿り着いてしまったではないか。洞窟に入ったら後ろから奇襲のパターンへの警戒にシフトした。後ろからへの警戒を絶やさず、洞窟を見る。
でかい。万年氷洞よりもでかい。高さは8mはあるのではないだろうか。人工的な洞窟ではないが、ここまで大きな洞窟ができるものなのか。
「どうする。また予想するか?」
「やめとこう。悲惨な結末が見える」
コストイラが、そろーっと後ろを見る。魔物の気配はない。がっくりと肩を落とし、洞窟内に入っていく。
結局、この森には魔物はいなかった。
「世界樹か」
コストイラが少し上を向き、考えるような姿勢を見せる。何か心当たりがあるのだろうか。
「知らんなァ」
知らないんかいとアレンが心の中でツッコミを入れる。
「誰か知っている人いるか?」
「えっと、え、せ、せ、世界樹は天を、そ、そ、空を支えている巨大なじゅ―樹木です。そ、そ、その根はめ、めい、め、冥界に通じているとき、聞いたことがあります」
回答がアストロから来ると思っていたコストイラは、エンドローゼから来たことに驚いた。
「あら、エンドローゼも知っているのね」
「こ、こ、子供の頃に、よ、読んだことがあったんです」
そういえば、皆が15年以上生きているのに、誰の過去も知らない。8年の付き合いのあるコストイラ、アシド、アストロも互いのことを出会う前は一切知らない。誰も触れようともしていない。繊細なものでもかかわるかのように、扱わない。
「天を支えるってこったぁ、天まで届いてるってことだろ? こっから見えてもおかしくないんじゃね?」
コストイラの疑問ももっともだ。それについてはどう説明されているのだろう。皆の視線がエンドローゼに向く。
「え、あ、え、えっと、えっと」
急に視線が集まり、慣れないエンドローゼは慌ててしまう。
「何も書いてないわ。遠くから見た描写は載ってないわよ」
「じゃ、オマエでも分かんねェんだな」
「お前って言うな。まぁ、案外魔力か何かで光が屈折して、見えないようになっているのかもしれないわね」
「もっと見てみたくなったわ」
コストイラがわくわくした足取りで歩く。
「つか、無視しちゃったけど、根っこは冥界につながってんの?」
コストイラは想像できず、首を傾げてしまう。アレンも分かっていない。根がトンネルのようになっているのだろうか。それとも、数千mの幹に対応して数百mの根っこがあるのだろうか。
「見えてきたぞ、森だ」
東方の地域、妖怪の山の端の森に辿り着く。山にあった森の様子とは少し違うものとなっていた。山の森は生い茂る紅葉の樹木の森だったが、ここは緑々した森だ。木漏れ日の溢れている様子は幻想的に見えた。
「どんな魔物が出ると思う?」
すでに魔物が出ることが前提になっているが、誰も突っ込まない。当たり前になっているからだ。
「明るめな森だからな、植物系、アルラウネだな」
「鳥系もね。シーグルかアックスビークかな」
「妖精も住んでいそうだな。フェアリーアーチャー」
アシド、アストロ、レイドが思い思いに予想する。正直全部ありそうだ。
「答え合わせといこう。行くぜ」
結論から言おう。
魔物が出てこなかった。滅茶苦茶に身構え、意気揚々と臨んだにもかかわらず、出てこなかった。
最初は、オルトロスのようにどこからか観察しているのだと思っていた。警戒を解かず、慎重に歩み、奥へと進んでいった。すると、どういうことだろう。森の奥の洞窟に辿り着いてしまったではないか。洞窟に入ったら後ろから奇襲のパターンへの警戒にシフトした。後ろからへの警戒を絶やさず、洞窟を見る。
でかい。万年氷洞よりもでかい。高さは8mはあるのではないだろうか。人工的な洞窟ではないが、ここまで大きな洞窟ができるものなのか。
「どうする。また予想するか?」
「やめとこう。悲惨な結末が見える」
コストイラが、そろーっと後ろを見る。魔物の気配はない。がっくりと肩を落とし、洞窟内に入っていく。
結局、この森には魔物はいなかった。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
エレンディア王国記
火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、
「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。
導かれるように辿り着いたのは、
魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。
王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り――
だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。
「なんとかなるさ。生きてればな」
手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。
教師として、王子として、そして何者かとして。
これは、“教える者”が世界を変えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる