メグルユメ

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12.世界樹

7.大地を食らう怪物

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 夕方。砂地でも過ごしやすくなる時間帯。アシド達は自身の荷物を持ち、砂地の横断を目指す。リミットは日が沈むまでの2時間ほど。

 目視できる範囲に砂地でない部分があり、目下そこを目指す。一番注意をしなければいけないのはサンドウォームだ。あの巨体だ。ロックドラゴン1匹、しかも下半身のみで腹が満ちるとは思えない。捕捉されるまでが勝負。

 この手のタイプの魔物は縄張りから出ると追ってこない。

「行きましょう」
「よし」

 アレンの号令にレイドが荷物を背負う。穴に近づかぬよう、振動を発生させぬよう、慎重に歩く。異様な緊迫感に息が詰まる。エンドローゼは過呼吸気味だ。アストロが背でも擦ってやろうとするが荷物で阻まれる。
 アレンは自身の胸の位置にある服を掴む。この早鐘のように打たれる鼓動が向こうにも聞かれてしまうのではないかと思うと呼吸がさらに浅くなる。さくっさくっと音をならす砂が憎い。どれだけ心臓に負担をかけさせるつもりなのだ。

 アレンが後ろを振り返る。
 夕日に照らされる砂地。どこまでも続く砂丘。オレンジに照らされる砂漠の月。肌色の世界が広がっている。ところどころに空いた穴。落ちたら死の穴。

 夕日と星の明かりを頼りに歩く。目算で出した時間よりも多くかかっている。しかし、ここで早まってはいけない。砂の怪物にばれてしまう。

「あ………」

 エンドローゼの声が短く響く。皆の視線がエンドローゼの方に向く。エンドローゼの手元からハンカチが落ちている。アシドが稲妻のような速さでキャッチする。

 ドバっと汗が噴き出す。バレた? セーフ?
 全員の鼓動が大きくなる。地面が震動した。アシドの足元から牙が出現する。アシドの足元が爆発した。1秒前にアシドがいた場所はすでに砂の怪物の口の中。

「逃げろ!」

 気づいたらアシドが50mほど遠くにいる。足、速っ!エンドローゼも速い。普通に速い。

 おそらくアシドがハンカチをキャッチする際に踏み込んだ音が伝わってしまったのだろう。
 ドザンと砂の怪物がアストロ達の前に出る。速い。こちらも速い。砂に足がとられているのでこちらは遅くなっている。その分、砂の怪物の速度が速い。

 ザクリと怪物の眼にナイフが刺さる。シキが予測打ちしたようだ。






 砂の怪物。本来の名前はサンドウォームだ。サンドウォームは普段砂の中に住んでおり、滅多に地上に出ない。地上に出るのはエサを捉える時だ。

 この手の生き物にある特徴として、視力が弱いというのがある。視界がなくても暮らしていけるということは、衰えていくということだ。

 事実、蚯蚓も土竜も視力が弱い。
 目見えずが名の由来でもある蚯蚓は体表で光の方向を感知する。

 土竜は触覚や嗅覚で視覚を補う。ちなみに土竜は盲目の象徴であり、神の光が見えないことから、自分とは違う宗教のもののことをさす隠喩表現にも使われる。

 では、サンドウォームはどうか。
 サンドウォームは触覚が発達している。微妙な震動も感じ取ることができる。つまり、目を潰されても問題ないのだ。
 震動をもとに攻撃しようとした時、巨大な震動が生じた。

 サンドウォームはそちらに向かった。






 遠くで爆発が起こった。

 しかし、アレン達は驚かない。動きもない。動いたのはサンドウォームだけだ。サンドウォームが爆発の元まで向かったのを確認すると、一気に走り出す。この爆発は意図的に起こしたものだ。シキがアレンに白瓏石を括り付けた矢を遠くにはなってもらったのだ。

「アレン。次」

 シキが白瓏石をつけた矢を渡す。アレンは止まり、なるべく遠くを狙い放つ。
 着弾し爆発する。
 サンドウォームは次の爆発地点に移動する。

「よし、この隙に抜けるぞ」

 アシドが踏み出した瞬間、地面が抜けた。
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