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14.冥界
8.死者ばかりの里
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冥界において、生きている者は少ない。聞くところによると、ずっと行動を供にしているホキトタシタも死者の状態に近いようで、正確には生きていないそうだ。
とはいえ、生きている者もいる。管理者団体に属する者、ぺデストリとアンデッキもここに区分される。2人は魔族であるため、寿命も長いそうだ。
さて、冥界にいるほとんどが死者ということは、洞窟を抜け、真っ先に見えた人間も死者であり、幽霊ということだ。幽霊がおり、死者系統の魔物もいるが、こちらを襲ってくる様子もない。それどころか積極的に掃除をしていたり、魔物の討伐をしていたりしている。
「どうなってんだ、これ?」
コストイラの呟きに声に出さずとも皆が同意した。一人、ホキトタシタだけは溜息を吐いた。
「言っても聞かないんだ。意味ないって何度も言ってんだけどな」
「どういうことだ?」
コストイラが聞くと、ホキトタシタは両手を腰を当て、憐みの眼を幽霊達に向ける。
「ここ冥界には死者が集まり、裁きを受けるまでの時間を過ごす」
「本で読んだことがあります。天国に行くのか地獄に行くのかが決まるって」
ホキトタシタは大きく頷く。
「その裁く基準はどれだけ良いこと、悪いことをしてきたのかだ。これは生前が全てであり、死後、冥界の出来事は含まれない」
「何か凄ェこと聞かされている気がするぜ」
アシドが驚愕に表情を固まるが、ホキトタシタは気にせず続ける。
「死後、この冥界にはある噂が広がった。悪いことをしていると地獄に堕ちるとな」
「噂? 事実じゃないの?」
アストロが首を傾げる。ホキトタシタは肩を竦めた。
「この噂には重要な部分が抜けている」
「重要な部分?」
「そう、生前ってところだ」
「あぁ」
何かを察せたアストロは納得したような声を出し、幽霊達に憐みの目を向けた。察しの悪いアレンとエンドローゼは目が合うと、同時に肩を竦めながら首を傾げた。
「つまり、あの幽霊達は今から善行を積んでも意味ないのに、それを必死にしているってことね」
「そうだとも。それをいくら指摘しても、この噂が消えないのだ。まったく、誰が流したのか」
噂というのは自分の都合のいいものほど浸透しやすい。ここにいる人達は天国に行って救われたいという人が多いが、それが叶わぬ願いであると分かっているのだ。理性で無理だと判断で来ていても、精神が不安であり、少しでも安心できる材料を揃えたいと考えているのだ。
「言いたいこと聞いたぜ。今からでも良いことめっちゃするか」
「ハァ」
アシドが茶化すように言うとホキトタシタは溜息を吐く。とりあえずアシドはホキトタシタを睨みつける。
「何の溜め息だよ」
「君は勇者だろ? やる事成す事が善行でなければいけない存在だ。今更だろ、意識するなんて」
納得してしまったアシドはぐぅの音も出ず、口を噤んだ。
「早速、勇者らしいところを見せてくれよ。ほら、あそこ。困っているようだぞ」
今度はホキトタシタが茶化すように言う。しかし、示す指先にいる魔物は本当に困っているようだ。アレンと同じほどの身長の二足歩行の犀。その逞しい体にはシェンティとネメスしか身に着けられていない。
「そこのダークマージ。ちょっといいか?」
『え?』
呼ばれたダークマージがこちらに顔を向けると、動きを止め、目を丸くした。よく考えたら、今話しかけたホキトタシタは冥界の№2と呼び声の高い存在だ。一般管理者の者が目にする機会など式典ぐらいしかなく、話ができるなど一生の内にない者の方が多いのだ。
いきなり気軽に話しかけられるなど、夢と思っても仕方のないことだ。ダークマージは一度キョロキョロと他にダークマージがいないか探す。自分しかいないと分かると、自分の頬を抓ろうとした。犀の皮膚が硬く、不発に終わり、次の作戦として自分の頬を思い切り叩いた。ダークマージはあまりの痛さに蹲った。
ホキトタシタは眉間に皴を寄せた。
「何しているのか分からないが、話をしても?」
『は、はい! 申し訳ございません! ホキトタシタ様に無用な時間を過ごさせてしまいました』
「それはいいけど、何か今、困ってなかった?」
『え、あ~~。い、いえ。何も、あ、な、ないですよ?』
明らかな嘘だ。誰がどう見ても分かる。ホキトタシタは笑顔のままグイっと顔を近づけた。ダークマージは短く悲鳴を上げ、観念したように力を抜く。
『実は、私や彼女の仕事仲間があの高台のところにある祠に行ったっきり戻って来ないのです。我々は見に行くかどうか悩んでいまして』
ダークマージの視線がホキトタシタからゾンビフェアリー、高台を経てもう一度ホキトタシタに戻ってくる。視線を向けられたゾンビフェアリ―は気付かず、パタパタと飛び回っている。
「祠。冥界にも神頼みがあんだな。一体何が祀られているんだ?」
「シュルメ様とフォン様だよ」
ホキトタシタの答えに新たな疑問が浮かぶ。シュルメは分かる。彼女は冥界の女王だ。問題はフォンの方だ。
「トッテム教がいるんですか?」
『とって? 違う。私達は全員がガラエム教かシラスタ教だ』
ではなぜフォン様の像を? と思ったが、それを聞く前に遮られる。
「よし、祠だな。我々が見て来よう。行くぞ」
打ち切るようにホキトタシタが言い、足早にそのその場を去った。
『おや? グレイちゃんじゃないか。どうしたんだい、こんなところに一人で』
狐の面をした少女が銀髪の少女を見つける。銀髪をした少女は、狐の面をつけた少女を見つめ返す。
『散歩です。ずっと篭りっぱなしですと体に悪いので。貴方の方こそ、どうしてここに?』
『ん? 意味は特にないかな。ただ、ディーノイから逃げてただけだし。うん』
面のせいで表情が見えないが、おそらくしたり顔をしているだろう。その様は容易に想像ができた。
『あまりディーノイさんに迷惑かけてはいけませんよ』
『だってアイツ揶揄うの楽しいんだよね』
本当に楽しそうに袖をパタパタと振っている。銀髪少女は悲しそうな顔をした。
『どったの? そんな顔をして』
『いえ、私達ってよく幼く見えるって言われません?』
『え、言われるけど、どうした?』
『私、それを見た目だけだと思っていたのです』
『え、違うの!?』
銀髪少女が自身の胸に手を当てながら、鈴のような声を紡ぎ出す。要領を得ない面の少女は眉根を寄せながらも丁寧に会話する。
『私達の幼さは仕草からも来ているのではないでしょうか』
『ぬぅわにぃ~~!?』
面の少女が大袈裟に驚く。これは幼いというよりはお調子者だろう。
『で、でも、それでいったらグレイちゃんは大人っぽい喋りじゃないか。何で幼く』
『……体型』
ボソリと呟かれる言葉に、面の少女は何も言い返すことができなかった。
『こういうのを気にしている時点で大人ではないのかもしれません』
銀髪少女が悲しそうに目を伏せる。体型は諦めていて何とも思っていない面の少女は何も言えず、ただ、口をパクパクと動かす。
『こ、これからどうすんの? 散歩の続きかい?』
『そうですね。もう少し歩きます。貴方は?』
『お迎えディーノイが来たから、仕事の続きかな? もしくは、水晶を使って冥界とか奈落とか見てるかも』
強引に話題を変えられたことなど気にせず、自然と会話を続ける。面の少女の視線の先にはハルバードを携えた青年が立っていた。もう会話も終わりのようだ。
『じゃあね。グレイソレアちゃん』
『じゃあね。フォン』
2人は互いの掌を合わせると、そっと離し手を振って別れた。
とはいえ、生きている者もいる。管理者団体に属する者、ぺデストリとアンデッキもここに区分される。2人は魔族であるため、寿命も長いそうだ。
さて、冥界にいるほとんどが死者ということは、洞窟を抜け、真っ先に見えた人間も死者であり、幽霊ということだ。幽霊がおり、死者系統の魔物もいるが、こちらを襲ってくる様子もない。それどころか積極的に掃除をしていたり、魔物の討伐をしていたりしている。
「どうなってんだ、これ?」
コストイラの呟きに声に出さずとも皆が同意した。一人、ホキトタシタだけは溜息を吐いた。
「言っても聞かないんだ。意味ないって何度も言ってんだけどな」
「どういうことだ?」
コストイラが聞くと、ホキトタシタは両手を腰を当て、憐みの眼を幽霊達に向ける。
「ここ冥界には死者が集まり、裁きを受けるまでの時間を過ごす」
「本で読んだことがあります。天国に行くのか地獄に行くのかが決まるって」
ホキトタシタは大きく頷く。
「その裁く基準はどれだけ良いこと、悪いことをしてきたのかだ。これは生前が全てであり、死後、冥界の出来事は含まれない」
「何か凄ェこと聞かされている気がするぜ」
アシドが驚愕に表情を固まるが、ホキトタシタは気にせず続ける。
「死後、この冥界にはある噂が広がった。悪いことをしていると地獄に堕ちるとな」
「噂? 事実じゃないの?」
アストロが首を傾げる。ホキトタシタは肩を竦めた。
「この噂には重要な部分が抜けている」
「重要な部分?」
「そう、生前ってところだ」
「あぁ」
何かを察せたアストロは納得したような声を出し、幽霊達に憐みの目を向けた。察しの悪いアレンとエンドローゼは目が合うと、同時に肩を竦めながら首を傾げた。
「つまり、あの幽霊達は今から善行を積んでも意味ないのに、それを必死にしているってことね」
「そうだとも。それをいくら指摘しても、この噂が消えないのだ。まったく、誰が流したのか」
噂というのは自分の都合のいいものほど浸透しやすい。ここにいる人達は天国に行って救われたいという人が多いが、それが叶わぬ願いであると分かっているのだ。理性で無理だと判断で来ていても、精神が不安であり、少しでも安心できる材料を揃えたいと考えているのだ。
「言いたいこと聞いたぜ。今からでも良いことめっちゃするか」
「ハァ」
アシドが茶化すように言うとホキトタシタは溜息を吐く。とりあえずアシドはホキトタシタを睨みつける。
「何の溜め息だよ」
「君は勇者だろ? やる事成す事が善行でなければいけない存在だ。今更だろ、意識するなんて」
納得してしまったアシドはぐぅの音も出ず、口を噤んだ。
「早速、勇者らしいところを見せてくれよ。ほら、あそこ。困っているようだぞ」
今度はホキトタシタが茶化すように言う。しかし、示す指先にいる魔物は本当に困っているようだ。アレンと同じほどの身長の二足歩行の犀。その逞しい体にはシェンティとネメスしか身に着けられていない。
「そこのダークマージ。ちょっといいか?」
『え?』
呼ばれたダークマージがこちらに顔を向けると、動きを止め、目を丸くした。よく考えたら、今話しかけたホキトタシタは冥界の№2と呼び声の高い存在だ。一般管理者の者が目にする機会など式典ぐらいしかなく、話ができるなど一生の内にない者の方が多いのだ。
いきなり気軽に話しかけられるなど、夢と思っても仕方のないことだ。ダークマージは一度キョロキョロと他にダークマージがいないか探す。自分しかいないと分かると、自分の頬を抓ろうとした。犀の皮膚が硬く、不発に終わり、次の作戦として自分の頬を思い切り叩いた。ダークマージはあまりの痛さに蹲った。
ホキトタシタは眉間に皴を寄せた。
「何しているのか分からないが、話をしても?」
『は、はい! 申し訳ございません! ホキトタシタ様に無用な時間を過ごさせてしまいました』
「それはいいけど、何か今、困ってなかった?」
『え、あ~~。い、いえ。何も、あ、な、ないですよ?』
明らかな嘘だ。誰がどう見ても分かる。ホキトタシタは笑顔のままグイっと顔を近づけた。ダークマージは短く悲鳴を上げ、観念したように力を抜く。
『実は、私や彼女の仕事仲間があの高台のところにある祠に行ったっきり戻って来ないのです。我々は見に行くかどうか悩んでいまして』
ダークマージの視線がホキトタシタからゾンビフェアリー、高台を経てもう一度ホキトタシタに戻ってくる。視線を向けられたゾンビフェアリ―は気付かず、パタパタと飛び回っている。
「祠。冥界にも神頼みがあんだな。一体何が祀られているんだ?」
「シュルメ様とフォン様だよ」
ホキトタシタの答えに新たな疑問が浮かぶ。シュルメは分かる。彼女は冥界の女王だ。問題はフォンの方だ。
「トッテム教がいるんですか?」
『とって? 違う。私達は全員がガラエム教かシラスタ教だ』
ではなぜフォン様の像を? と思ったが、それを聞く前に遮られる。
「よし、祠だな。我々が見て来よう。行くぞ」
打ち切るようにホキトタシタが言い、足早にそのその場を去った。
『おや? グレイちゃんじゃないか。どうしたんだい、こんなところに一人で』
狐の面をした少女が銀髪の少女を見つける。銀髪をした少女は、狐の面をつけた少女を見つめ返す。
『散歩です。ずっと篭りっぱなしですと体に悪いので。貴方の方こそ、どうしてここに?』
『ん? 意味は特にないかな。ただ、ディーノイから逃げてただけだし。うん』
面のせいで表情が見えないが、おそらくしたり顔をしているだろう。その様は容易に想像ができた。
『あまりディーノイさんに迷惑かけてはいけませんよ』
『だってアイツ揶揄うの楽しいんだよね』
本当に楽しそうに袖をパタパタと振っている。銀髪少女は悲しそうな顔をした。
『どったの? そんな顔をして』
『いえ、私達ってよく幼く見えるって言われません?』
『え、言われるけど、どうした?』
『私、それを見た目だけだと思っていたのです』
『え、違うの!?』
銀髪少女が自身の胸に手を当てながら、鈴のような声を紡ぎ出す。要領を得ない面の少女は眉根を寄せながらも丁寧に会話する。
『私達の幼さは仕草からも来ているのではないでしょうか』
『ぬぅわにぃ~~!?』
面の少女が大袈裟に驚く。これは幼いというよりはお調子者だろう。
『で、でも、それでいったらグレイちゃんは大人っぽい喋りじゃないか。何で幼く』
『……体型』
ボソリと呟かれる言葉に、面の少女は何も言い返すことができなかった。
『こういうのを気にしている時点で大人ではないのかもしれません』
銀髪少女が悲しそうに目を伏せる。体型は諦めていて何とも思っていない面の少女は何も言えず、ただ、口をパクパクと動かす。
『こ、これからどうすんの? 散歩の続きかい?』
『そうですね。もう少し歩きます。貴方は?』
『お迎えディーノイが来たから、仕事の続きかな? もしくは、水晶を使って冥界とか奈落とか見てるかも』
強引に話題を変えられたことなど気にせず、自然と会話を続ける。面の少女の視線の先にはハルバードを携えた青年が立っていた。もう会話も終わりのようだ。
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